マッチングアプリで出会ったのがホストでした

駿心

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1章

第2話 本命なの?営業なの?どっちが本音よ?

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ホストと付き合う。

人生で考えもしなかった展開に、私は軽いパニックに陥っていた。
恋愛経験ほぼゼロの自分にとって、ホストの世界は未知すぎる。
今からでもやっぱり荷が重いですってお別れのメッセージ送る!?
そう悩んでいるタイミングでレオくんからメッセージが来た。

『カモちゃんが彼女になってくれて嬉しい!こんな俺を彼氏にしてくれてありがとう!これからよろしくね」』

可愛いメッセージに思わず胸がキュン。
あと、『彼氏』『彼女』というワードに謎の高揚感が生まれた。
人生初めての彼氏。
年齢=彼氏なしという薄っすらとしたコンプレックスが消えるのがわかる。

深呼吸をした。

ここはひとつ、前向きに情報収集だとばかりに、ネットで「ホスト 彼女 心得」的なキーワードで検索してみた。根は真面目なのだ。

(なんだろ…お客さんに見られないように外では手を繋いじゃダメとか?夜の電話は絶対ムリ!とかかな?)

検索結果に表示されたのは、想像を遥かに超えるホスト業界の奥深さだった。「ホンカノ」「本営」「色営」「趣味カノ」「育て」……。

(なんだこれ!?彼女の種類とか初めて聞きましたけど!?しかも多いな!)

それぞれの意味を読み解くうちに、頭の中はますます混乱していく。本命の彼女がいる一方で、営業用の彼女が何種類も存在するらしい。そして、どの『彼女』にも、『なお、本命では無い』という注釈が添えられているのが、なんとも物悲しい。

そんな知識を得た数日後、レオくんとのデートの帰り道でのこと。

「そういやカモちゃんってどこに住んでるの?」
「え!?」

唐突な質問に、心臓が跳ね上がった。

「家まで送るよ。最寄り駅は?」

(宿カノだ!万が一の宿カノ狙いでどんな場所に住んでいるのか、リサーチされているんじゃ?)

※宿カノ……住む場所を確保するための同棲専用の彼女。なお、本命では無(略)。

ネットで見た「宿カノ」というワードが頭をよぎる。レオくんの何気ない質問が、下心丸出しのリサーチにしか聞こえなくなっていた。

「カモちゃん?おーい?」

レオくんの声も上の空で、脳内は「私は一体何カノ…?」という疑問符で埋め尽くされていた。

しばらくの間、レオくんの言葉一つ一つに疑心暗鬼になった。

「可愛いね」と言われれば「これは色営か?」
「一緒にいると落ち着く」と言われれば「趣味カノ的なキープか?」と、被害妄想が止まらない。

そんなある日、カフェで向かい合って座っていると、レオくんがキラキラした瞳で尋ねてきた。

「ところでカモちゃんは俺のどこが好き?」

「え!?」

すぐに思い付いたのは見た目!…だけど言っちゃダメか!さすがに!

「えーっと…一緒にいて疲れなくて、なんだか心地良いから…かな?レオくんは?」

少し照れながら答えると、レオくんは即答した。

「見た目かな!」
「え、嘘じゃん!さすがに!」

思わず声を上げたらレオくんもビックリしていた。

「え!?いやいや!本当だよ!」
「んなわけあるか!こちとらぽっちゃり地味オタクやぞ」

自虐気味に言うと、レオは真剣な顔で頷いた。

「本当だよ!服とかカバンとか、そういうのに全然お金かけてない感じで、インドアそうな雰囲気で無駄遣いもしなさそうだから、貯金がたっぷりありそうな清楚な人が好みなんだ!実家住まいならさらにオッケー!」
「レオ子…それは清楚やない。質素や」

盛大にツッコミを入れた。

「俺達もそろそろお付き合いしてから1ヶ月経つね。早いね」
「話そらすんかい」

呆れていたら、レオくんは急に真剣な表情になり、私の手を握った。

「実は今月の俺の売り上げがピンチでさ…一生に一回のお願い!今夜、俺が勤めてるホストクラブに一緒に来て助けてほしい!ホント、今回だけだから!」
「……は…」

自分の口から間の抜けた声が漏れた。

「え?」

レオが不思議そうな顔をする。

「早いよおぉ!!」

思わず叫んだ。

「カモちゃん!?な…何が!?」
「『育て』は三ヶ月から半年ぐらいってネットに書いてたのに、1ヶ月で営業かけるのは早いよおぉぉー!」

※『育て』とは……時間をかけてお金を使うお客へ育ててホストにハマらせる営業スタイル。

「マッチングアプリのやり取りから数えると三ヶ月ぐらいだから、むしろ頃合いだよ」

レオくんは涼しい顔で言った。

「つまり付き合う前からカモにする気マンマンだったんかい。ひでぇ」
「あ、もちろんカモコちゃんは『育て』じゃないよ。ちゃんと本命彼女だから」
「取ってつけたかのように言うじゃん」

目の前のイケメンホストに、改めて深い溜息をついた。果たして、この先どうなることやら。
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