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チーズイン【恋愛・幼なじみ・ワンナイト】
しおりを挟む【チーズイン】
目が覚めた。
見慣れている幼なじみの久明が暮らしているワンルーム。
でも、いつもと違うのは、自分が裸でベッドの中にいること。
ベッドの縁に座っているヒサも裸だった。
そして、溜め息をついたヒサが小さな声で「しくった」と呟いたのを聞いた。
待て待て、ゆっくり思い出せ、私!
彼氏にフラれて、落ち込んでいたところにヒサから「千珠、今から飲みに行かない?」って電話きたから…
飲むじゃん?ココまでは良い。
外で飲む気分じゃないから、しこたま酒を買い込んでヒサの部屋で二人で飲むかってなった。
大学生になって成人してから二人して酒好きになった私達にはよくある出来事。
だからココまでも良い。
いつもの二人なら、他愛もない話で盛り上がって終わるはずだったのに、なぜか昨夜は飲みすぎてしまった。そして、気付いたら…。
あああああああ。
散々お母さんに「久明くんが良い子なのはわかってるけど、やっぱり年頃の二十歳の男の子の部屋に二人っきりは…」って心配されてたのに!
その時には何言ってんの?ありえないって言ってたのに!
ん?てか、さっきヒサのやつ、”しくった”って言った!?
心臓がギュッと締め付けられた。
ヒサは後悔しているのだ。
そりゃそうだ。
今まで兄弟同然だった幼なじみの関係から男女の関係になるのは、気まず過ぎる!
そう思った私は急いでベッドから起き上がった。
全裸の私の起床にヒサも裸のくせに「うおっ!」と驚き、慌てて毛布を私にかけた。
「おはよ、てか起きてたんか?」
そう気まずそうに言ったヒサの顔を見て決意した。
「ヒサ!昨夜のことだけど!」
「お…おう」
「無かったことにしよう!」
「…」
「だって、私達…」
「ちず、まぁ落ち着け。とりあえず温かいお茶を飲め」
「はい」
ヒサからマグカップを受け取って、二人でお茶を飲んだ。
あれ?いつもの二人のまったり空気が流れてるんですけど。
「で、昨夜の事を無かったことにしたいってことだけど」
「うん」
「それは凡人の発言」
「…私達はいつから天才に?」
「逆転の発想しようぜ」
「話続けるじゃん」
「幼なじみで、これ以上ないくらい気を許した関係に、更にセックスも出来る…2倍お得!」
「そうかな?」
「…千珠、ピザ好きだろ?チーズめっちゃ乗ってるやつ」
「うん、好き~」
「その上、そのピザの耳にもチーズが入ってたら?」
「え、ソレめっちゃ好きなやつ」
「だろ」
「待って、セックスってチーズなの?」
「食いついてほしいのはそこじゃないけど、まぁそういうこと」
「チーズはそんな卑猥な存在じゃないから!」
「そう?意外と卑猥にも見え…」
「チーズに謝って」
「ごめんなさい」
「てか、今回の事はそうはならないでしょ」
「ならないか」
ヒサは軽く笑いながらお茶を啜った。
「…『しくった』って言ってたじゃん?」
私がポツリと聞いた言葉にヒサは「え…」とビックリした顔をした。
「だから…一夜の過ちってことで…無かった事にしよ」
あー…
なんで、すっごく貴重で大事で居心地の良かった居場所を…お酒の勢いでこんなことしちゃったんだろう。
なんでヒサに『しくった』って言わせてしまったんだろう。
貸してくれた毛布をまとった自身の体を抱きしめて膝に顔を埋めて、洩れそうな何かを堪えた。
…
ん?
てか、ヒサの奴…ノーリアクション?
不思議に思って顔を上げたら、ヒサはベッドの上で無言で土下座をしていた。
「は!?ヒサ?…全裸で何して、」
「あれは…」
ゆっくりと顔を上げたヒサの顔は何故か真っ赤だった。
「その…セックスする前に告白すれば良かったって意味」
「え…?」
「『しくった』ってのは千珠を抱いたのを後悔してるわけじゃなくて」
ヒサは赤い顔のまま、まっすぐ私を見つめてきた。
「まさか盛大な一人言を聞かれていたとは思わず、ごちゃごちゃピザとか言ってゴメン。ずっと一緒にいたのに、それでもまだ知らない可愛い千珠を知って、つまり…千珠をもっと好きになって、その…」
まさかの言葉と見た事無い幼馴染の表情に、言葉に詰まって、私も顔が熱くなるのを自覚した。
セックスし終わったのに、今はもうセックスしてないのに、素面のせいか昨夜以上にドキドキしている。
「だから…幼なじみの中に、恋人も入れませんか?」
気付けば私は赤い顔のまま、ぎこちなく頷いていて、久明は目を輝かせた。
「やった!」
笑顔の久明は私を抱きしめた。
チーズが乗っているピザの中のチーズは…確かに最高…。
幼なじみの中に恋人を入れても、最高…かもしれない。
-fin-
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