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5. 私は素直になれないセミスイート
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◇◇◇◇
「藤子、しっかりね!!受験票ちゃんと持った?消しゴムとかも忘れてない?学校までお母さん一緒に行こうか?」
「いいよ。前に学校でも友達と一緒に行って確認した時もあるし、今日も友達と一緒だし……大丈夫だから」
「落ち着いて、いつも通りの気持ちで一問一問解けばいいんだからね」
「うん」
「夏月くんにも勉強見てもらったんだから、きっと大丈夫だから」
「……うん」
「じゃあ、いってらっしゃい!!」
受験当日。
ついにこの日が来た。
加藤さんにあんなこと言ったのに、まだカー君と話せてない。
『家に行かない』って言ってても学校で話すのはアリ?……なんて未練タラタラな発想もしつつカー君の姿を探したりもしたけど……。
学校でカー君の後ろ姿を見つけただけで逃げてしまったりしている。
こんなテンションのまま受験しても私は果たして、ちゃんと問題を解けるのかな……。
友達と待ち合わせをしてから、受験会場となる学校に着いてからも私は不安な気持ちのままだった。
私……専願なのに、これ失敗したら……どうしよう。
だけど、不思議と……試験用紙を開けば……
『トーコ、説明すんぞ』
自然と落ち着いた気持ちで、問題を読めた。
そしてカー君の解説が頭の中で聞こえてきて、鉛筆を握る力も程よく抜けて、書く文字も軽かった。
◇◇◇◇
試験が終わった頃にはすっかり辺りは暗くなっていて、だけどスッキリした気分だった。
まだ合格したかどうかはわからないけど、もし合格したら……きっとカー君のおかげだ。
カー君はもう家……かな?
……もう行かないって言ったけど。
お礼!
お礼を言わないと。
お家に行っても、お礼言って、パッと帰れば……大丈夫!!
お礼で……、
……
やっぱり都合良すぎかな?
落ち込んだときは……チョコレートだ。
私は駅から家の途中のコンビニに寄った。
『チョコ中毒は欲求不満の証拠なんだぜ』
……
う……チョコじゃなくてたまにはポテトチップスとかにしようかな?
あー……でもポテチは太る……って結局カー君のイジワルな言葉が頭によぎる。
コンビニのガラスドアを一枚越えただけで冷たい空気から温かいものに変わった。
「あれ、菊池さんじゃん。やっほー」
入り口すぐに名前を呼ばれてビックリした。
「や……矢上くん?」
「え!!俺の名前覚えてた?良かった~」
そこにいたのはカー君の友達グループの一人で、バスケ部も一緒だった人。
話したことはあまりないけど、名前ぐらいは知っている。
黒くて短くツンツンにセットされている髪の下にはタレ目でワンコのような笑顔だった。
「カトー。ほら、菊池さ~ん」
矢上くんが私を指差しながら後ろを見ると、その視線の先にはレジにいる加藤さんだった。
おつりを受け取りながらこっちを見た加藤さん「げっ、またかよ」ってやっぱり嫌そうな顔をした。
二人とも私服だったから、学校から帰ってからコンビニまで来たのかな。
「あ……その……二人は一体……」
「んー、カトーが振られたから慰め会開いてやってんの」
「バカ!!言いふらすな!!てめぇ殺すぞ!!」
「……振られた?」
私が首を傾げると加藤さんはベーと舌を出して、プイッとコンビニから出ていってしまった。
そんな加藤さんに矢上くんは慌てて追いかけるわけでもなく、加藤さんを見たあと私の方を見た。
「ところで夏月の様子はどう?やっぱアイツでも受験前でイライラしてるわけ?」
「え?」
「だってここ最近、夏月のヤツがひでーの。イライラしっぱなしで。俺が一番の被害者。菊池さん、もう今日で試験終わったんでしょ?結果発表まで落ち着かねぇかもしんねぇけど、アイツのフォローしてやってよ」
「でも……その、私なんかじゃ余計にイライラさせちゃうかも。それにクラスも違うし、そういうのは矢上くんがしてあげた方が……」
「いや、俺はアッチのフォローで忙しいから」
ケラケラと何故か楽しそうに笑う矢上くんは外にいる加藤さんを親指で差した。
逆に加藤さんはイライラした様子でコッチを見て矢上くんを待っている。
「……矢上くん」
「なに?」
「えっと……もしかして加藤さんのことが好きなんですか?」
あ……すっごく無神経に立ち入ったこと聞いちゃってる……かも。
こんなんだからカー君に『お前はバカだ』って言われちゃうんだ。
だけど矢上くんはイヤな顔もせず、意味ありげにニターッと笑うだけだった。
そして私の質問に対して答えも返さず、「バイバ~イ」とドアを開けて加藤さんの元へ行ってしまった。
カー君が……イライラ?
勉強……大変だから?
イライラする時は……
チョコだ!!
「藤子、しっかりね!!受験票ちゃんと持った?消しゴムとかも忘れてない?学校までお母さん一緒に行こうか?」
「いいよ。前に学校でも友達と一緒に行って確認した時もあるし、今日も友達と一緒だし……大丈夫だから」
「落ち着いて、いつも通りの気持ちで一問一問解けばいいんだからね」
「うん」
「夏月くんにも勉強見てもらったんだから、きっと大丈夫だから」
「……うん」
「じゃあ、いってらっしゃい!!」
受験当日。
ついにこの日が来た。
加藤さんにあんなこと言ったのに、まだカー君と話せてない。
『家に行かない』って言ってても学校で話すのはアリ?……なんて未練タラタラな発想もしつつカー君の姿を探したりもしたけど……。
学校でカー君の後ろ姿を見つけただけで逃げてしまったりしている。
こんなテンションのまま受験しても私は果たして、ちゃんと問題を解けるのかな……。
友達と待ち合わせをしてから、受験会場となる学校に着いてからも私は不安な気持ちのままだった。
私……専願なのに、これ失敗したら……どうしよう。
だけど、不思議と……試験用紙を開けば……
『トーコ、説明すんぞ』
自然と落ち着いた気持ちで、問題を読めた。
そしてカー君の解説が頭の中で聞こえてきて、鉛筆を握る力も程よく抜けて、書く文字も軽かった。
◇◇◇◇
試験が終わった頃にはすっかり辺りは暗くなっていて、だけどスッキリした気分だった。
まだ合格したかどうかはわからないけど、もし合格したら……きっとカー君のおかげだ。
カー君はもう家……かな?
……もう行かないって言ったけど。
お礼!
お礼を言わないと。
お家に行っても、お礼言って、パッと帰れば……大丈夫!!
お礼で……、
……
やっぱり都合良すぎかな?
落ち込んだときは……チョコレートだ。
私は駅から家の途中のコンビニに寄った。
『チョコ中毒は欲求不満の証拠なんだぜ』
……
う……チョコじゃなくてたまにはポテトチップスとかにしようかな?
あー……でもポテチは太る……って結局カー君のイジワルな言葉が頭によぎる。
コンビニのガラスドアを一枚越えただけで冷たい空気から温かいものに変わった。
「あれ、菊池さんじゃん。やっほー」
入り口すぐに名前を呼ばれてビックリした。
「や……矢上くん?」
「え!!俺の名前覚えてた?良かった~」
そこにいたのはカー君の友達グループの一人で、バスケ部も一緒だった人。
話したことはあまりないけど、名前ぐらいは知っている。
黒くて短くツンツンにセットされている髪の下にはタレ目でワンコのような笑顔だった。
「カトー。ほら、菊池さ~ん」
矢上くんが私を指差しながら後ろを見ると、その視線の先にはレジにいる加藤さんだった。
おつりを受け取りながらこっちを見た加藤さん「げっ、またかよ」ってやっぱり嫌そうな顔をした。
二人とも私服だったから、学校から帰ってからコンビニまで来たのかな。
「あ……その……二人は一体……」
「んー、カトーが振られたから慰め会開いてやってんの」
「バカ!!言いふらすな!!てめぇ殺すぞ!!」
「……振られた?」
私が首を傾げると加藤さんはベーと舌を出して、プイッとコンビニから出ていってしまった。
そんな加藤さんに矢上くんは慌てて追いかけるわけでもなく、加藤さんを見たあと私の方を見た。
「ところで夏月の様子はどう?やっぱアイツでも受験前でイライラしてるわけ?」
「え?」
「だってここ最近、夏月のヤツがひでーの。イライラしっぱなしで。俺が一番の被害者。菊池さん、もう今日で試験終わったんでしょ?結果発表まで落ち着かねぇかもしんねぇけど、アイツのフォローしてやってよ」
「でも……その、私なんかじゃ余計にイライラさせちゃうかも。それにクラスも違うし、そういうのは矢上くんがしてあげた方が……」
「いや、俺はアッチのフォローで忙しいから」
ケラケラと何故か楽しそうに笑う矢上くんは外にいる加藤さんを親指で差した。
逆に加藤さんはイライラした様子でコッチを見て矢上くんを待っている。
「……矢上くん」
「なに?」
「えっと……もしかして加藤さんのことが好きなんですか?」
あ……すっごく無神経に立ち入ったこと聞いちゃってる……かも。
こんなんだからカー君に『お前はバカだ』って言われちゃうんだ。
だけど矢上くんはイヤな顔もせず、意味ありげにニターッと笑うだけだった。
そして私の質問に対して答えも返さず、「バイバ~イ」とドアを開けて加藤さんの元へ行ってしまった。
カー君が……イライラ?
勉強……大変だから?
イライラする時は……
チョコだ!!
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