ヒロインの娘

めい

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小さな鑑定士

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話し合いは無事?に終わった。

商業ギルド、冒険者ギルド、教会が全面協力を取り付けた。
『船乗り病』は、どこの機関にも関わる案件であったらしく、
本部に報告を何時するか?
もし、特効薬、予防薬、治療方法が見つかった時の利権はどうなるのか??

年単位で経過を診ないといけないし、そもそも『船乗り病』でないかもしれない。
私の知っている『船乗り病』と一緒だとも限らない。

今は、出来ることをして、
結果が出たら考えよう!!
と会議終盤、疲れきった顔で
全員一致で問題を棚上げにする事にした。

ギルドに入ったのが、お昼過ぎなのに
もう夕食の時間は過ぎている。
みんなを待ってる間に職員さんに頼んで、
「遅くなるかも」と屋敷に伝言を頼んだら、
「予想してた」と、言いながら叔父本人がやってきて会議に途中から参加した。

領内の外出に護衛も馬車も使わないので、二人で飲み屋や食堂の賑やかな声を聞きながら歩いて帰宅する。

「ごめんなさい。大騒ぎになってしまいました。」

叔父に謝る。

「さっきも言ったけど、予想していたよ。と言うか、まだ序の口だと思う。
私たち内陸のものにとっては物語でしか聞かない病気だけど、海に関わる人たちには文字通り死活問題だからね。
治療が終わったら、ギルドや教会に丸投げしても良いんじゃないか?
利権が大きすぎるし、あとは大貴族たちにお願いしちゃいなさい。 

……で、これは別の世界の知識かい?留吉さんの日記も書いてあったみたいだけど、気付かなかったな」

利権なんて、取らぬ狸の皮算用。

もし完治したら、利権はいらないけど
治療報酬は、ちゃんと貰います。
無料は、よくない!!

私が記憶が戻った時に書きなぐった文字を見て、日記と同じ文字だと気付いたらしく、私が落ち着いてきた時に日記を読ませてくれた。
男爵の直径男子はご先祖である『留吉さん』の書いた日記が読めるように教育されているのだそうだ。
留吉さんも転生者だったのか?
それとも転移かな?
その辺の日記は見つかってない。
隠してあるのかもしれないな。
記録魔だった留吉さんが書いてないはずないし。
日記には『別の世界』って記載がある。



「日記には、治療方法とは書いてなかったけど、冬の栄養補給のために色々とやってくれていたみたいです。漬け物を作ったり。雪の中に野菜を埋めたり。
乾燥させた薬草を食事に使ったり。
あれって留吉さんが病気予防の為に始めたみたいですよ。」

日記は、叔父たちも全部読んでいる。
今でも使える知識が多く、男爵家男子の義務みたいなものだ。

「はぁ!スゴいな日本人。
生活全てに意味があるのか?」

昔の人の知恵はスゴいです。
日本、日本人って言葉は私が叔父に伝えた。
留吉さん、色々と改革をしてくれ、
後世に残してくれている。
『船乗り病』の存在を知ってしまうと、男爵領主は実に健康的で衛生的な生活習慣を実感する。
この地に産まれてなければ、チート改革を進めていたかもしれないな。

「全部に意味があるかはわかりませんが、生活の知恵。ってやつですね。」

二人で顔を合わせて笑う。

「ちがいない。生活の知恵かぁ。
上手いこと言うな」

叔父が来てくれて良かった。
大人で領主の権限をもつ叔父の指示があった方が信用できるし、動きやすいだろう。
何より、冷静に判断をする人が現れたからだ。

私は明日から薬の調薬、簡単な診察方針を作成する事に集中。

診察出来るかどうかわからないのに、私がミンテアへ行くよりも、少しでも薬を作ったり、病気について書き記したりする方が良い。
病気の進行が心配なら、初期治療に必要な事を教えた者を先行させろ。と
叔父に決められた。

「何を焦ってるんだ!
目の前の出来ることから始めなさい。」

最低限の物資を用意できしだい、ミンテアへ向かう。と伝えると、皆の前で怒られた。
『船乗り病』の治療を許可したのは、
こんなに暴走するとは思ってなかったらしい。

「バーバラが子供だと言うのを忘れてた。
私のせいだ。皆さんに迷惑を掛けてすまない。」

会議中に皆の前で謝った。

私以上に暴走していた大人たちも
口々に叔父と私に謝ってくる。

「内陸の生まれ育ちの私たちが問題の重大さに気付かなかった。」

少し悔しそうにしている。
きっと留吉さんの日記から、もっと早くに治療方法を広められたのでは?
と、思っているにちがいない。

でも、気づかないよ
漬け物作ろう!!ってだけしか書いてないんだから。

貴族なのに、領地の民に頭を下げられる叔父さんを誇らしく思い、
今でもあまり繋がなくなった手を繋いで、
帰り道を二人で歩く。

父がいなかったり、
母と毎日会えなくても、優しい家族に囲まれて私は幸せだよ。

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