死に損ないの春吹荘 

ちあ

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五章 夏休みっ!

夏休み予定計画

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 宵衣先輩が入院してから数ヶ月。
 宵衣先輩は……病室から何度も禁止されているのに脱走し、その度に怪我を悪化させ、結局一ヶ月程度の入院となった。
 いやいやいや!なにやってんの、宵衣先輩!?
 それに対して灰咲先生が一言。
『学期末テストに出て、ミスなくこなせるならいーよ』
 だってよ!
 ひどくない?!そして私がなんか、悲しくなるんだけど!
 満点とかひどくね?!
 それは、赤点ギリギリな私に対しての当て付けですか?!
 ……茶番長いな。






 さてさてさぁーて!!
 やってまいりましたぁ、夏やすみぃ!
 私、陽崎紅羽はむっちゃくちゃテンション高くなっております!
「夏休みだ~♪」
「遊ぶぞー!」
 私とソラはそうやってはしゃぐ。
 こんな夏休みを楽しいと思うの久々だよ!
 夏休みなんて、周りに会わなくて済む停のいい休み時間だったし。まぁありがたかったけども。
「こら!」
 その声と同時に、私とソラの頭にゲンコツが落ちてくる。
 え、誰のか?もうわかるでしょ……ユウですよ。
「はしゃぐのはいいがいい加減にしろ。夏休みの宿題、忘れたわけじゃねぇよなぁ?」
 ゴゴゴゴォ……という効果音がつきそうな感じでユウは話す。
 え、どした?
 な、なんかあった?雰囲気ヤバイよ?
「うるさい」
 ソファのところから瞬先輩がこちらをギロリと睨む。
 はい、すいませんでした。
「まぁ遊びたいよねー♪」
 なんだかんだ今のいままで約一ヶ月遊びに遊びまくった人に言われたくないっすね。
 念のためって一週間入院にしたら、余計に歩いたりして悪化させる人がどこにいるんですかって思ったよ、さすがに!
 いや、ここにいたけどね!
 宵衣先輩が完全回復して、一緒に帰ってきたときさ、雪芽さんがなんかげっそりしてたのを覚えてますね。
「さぁて、予定立てるか」
 そう言ってそこそこ大きな紙と、マーカーペンを持ち出し、宵衣先輩はそれを机の上に広げる。
 ん?なにそれ。
「なにするんです?」
「あぁ~……」
 ため息とも、なんともつかない声でユウは呟く?
「夏休み計画表だね!」
 なに楽しそうにしてるんです、ソラ。
 かくいう私も、その言葉に結構食い気味になってますが。

「(……ここに犬が二匹いる……)」
 紅羽とソラのことを見て、そうユウが思ったことは誰も知らない。

「なんですそれは!」
「夏休みになにをするのか、予定を書くんだ!」
 なんともまぁ、名前通り!
「ここの凄いとこはそこじゃねぇんだ……」
「計画がしっかりしてて、夏を満喫できるんだよ♪」
 すご、え、凄くない?それ!
 宵衣先輩、あの時も思ったけど、あんた、自分のためっていうより楽しかったりそーゆーことのためにすごいその力活用してますよね?
 これっていわゆる能力の無駄遣いってやつでは……?
「帝、一大イベント後、一週間は休ませろよれ」 
 マジでそうしないと俺死ぬから……そう言って、灰咲先生が麦茶を煽る。
 ……たしかに。
 体の問題とかありそう、灰咲先生は特に。結構若そうに見えるけど行動がなんというか、ジジくさいんだよなぁ。
「それと、どこ行くかは、私たちが決めるから、森か海かだけ決めてね」
 と、雪芽さんがウィンク。
 うん、さすがです。
 あのげっそりした疲れ切った感じからさっさと立ち直っていつものなんとも言えない大人の余裕と茶目っ気を持つ雪芽さんに戻ったところすごいです。
 いや、もちろん、泊まりがけの泊まり先を用意できることもすごいけどさ、もう、あのゴールデンウィークのせいでさ、雪芽さんって言えばなんでもできる、みたいなイメージがあるんだよなぁ。
 うん、すっごい感覚がおかしくなってるのは気がついてるから安心してね!(安心できないww)
「どこ行きたいー?」
 宵衣先輩がペン回しをしながらそう尋ねる。
 素直に質問です、ペン回しってどーやんの?!
 私できないんだよなぁ、ってそんな話じゃないよね。ごめんごめん。
 私は気を取り直し、手をあげる。
 夏に大人数?でやることといえばこれでしょっ。
「なんだい、クーちゃん」
 宵衣先輩が私を指す。
「どっかに泊まって合宿もどきしたいです!」
「合宿、」
「もどき……」
 ソラとユウが、そんなこと言う?と言いたげにため息をつく。
 いや、だってそーじゃん。
 合宿ってさ、なんかの強化するやつじゃん?あの、体育系漫画とかである、バスケ部とかがやるやつ。
 でもさー、うちらそーゆーんじゃないじゃん?
 合宿と言えるかどうか……ね?
「それはわかるぞ♪」
 宵衣先輩は、こっちをみてにっこり微笑んでくれる。
 宵衣先輩、嘘でもなんでもうなずいてくれてありがとう!そして多分、本心だね、宵衣先輩だし!
「海と山、どっちがいー?」
 宵衣先輩が聞いてくる。
 うぅん、どっちだろ?
 夏といえば海だけど定番すぎるしなぁ……。
 山だって、そこそこいいとこはあると思うし。
 うぅん……でもやっぱ、
「「海!!」」
「え?」
「わぁ」
 私とソラは、ハモってしまい、互いに顔を見合わせる。
 ここでハモるとは思ってなかったわ。
「定番だな」
「ありきたり」
 ユウと瞬先輩はそう言う。
 うぅ、そんなこと言わないでもいーじゃんか!
 ひどいよぉっ。
 まぁ言われるってわかっててそう言ったのはあるけどさ。
「じゃ、海辺の宿だね♪」
 紙にキュッキュッ、とマーカーで描いていく。
「ゆっきー、頼んだよ」
「まかせなさい、大人で決めておくわ」
「頼もしーな♪」
 二人のそんなやりとりを見て、宿が楽しみになる。
「八月の中旬あたりが妥当だと思うから……それまでの予定も決めておかないとね♪」
 たしかに、そうですね。
 この流れは、何度経験するんだろう?
「山にも行きたいなぁ~?」
 宵衣先輩が机に倒れ込みつつ、上目遣いに雪芽さんを見上げる。
「それは困るわねー?」
 わざとらしく雪芽さんも言う。
 ん?なにやってんの、この人たち。
「ねぇ~」
 猫撫で声で宵衣先輩はせがむ。
 うっ……。
 な、なんか不覚にも同じ女子なのに可愛いと思っちゃったよ!怖いな!
「どーしようかしら~」
 雪芽さんも美しい悩み姿を見せます。
 えなに?なにやってんのこの人たち。
 え、美しい立ち姿選手権ですか?!(宵衣先輩は、立っていない)
「ミカちゃん、妥協しない?」
「具体的には?」
 二人は悪い顔をして微笑み合う。
 え、怖。
「牧場に行きましょう。 自然に触れ合えるわ」
「山は?」
「丘って感じね。でもほとんど一緒よ」
「……その代わり、もう一つ何処かに行こうかなぁ♪」
「いーわよ」
「よしっ、決まり!」
「交渉成立、ね」
 二人はニコニコ笑い合う。
 ここの女性陣怖すぎません?!


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