死に損ないの春吹荘 

ちあ

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五章 夏休みっ!

七月の誕生日(準備編)

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 夏休みの宿題真っ只中。
 やることなすこと億劫過ぎて、疲れ切った私が思い出した楽しいことは、七月にあった出来事。いや、夏休み中のことですけどもね!




七月 八日。
「あっちぃ~」
 私は絶賛リビングで寝転んでおりました。
 いや、窓全開にしてるリビングってさ、結構涼しいんだよね。
「ぎぃ~も~ぢぃ~」
 ソラは、扇風機に向かって話してる。
 あぁ、ワーレーワーレーハーってやつ、昔私もやった!
 声が変になってそこそこ楽しいんだよなぁー。
「あら、なにしてるの~」
 笑いながら、雪芽さんが、冷蔵庫にいつになく豪華な食材をしまう。
「雪芽さん、それ」
「あ、内緒よ♪」
 えー、なんかずっちぃことしそう。
 いや、これは偏見が過ぎるか。
「それなーに?」
 ソラくんも興味を示してますよ?
 今、ユウは部屋で絶賛自分の宿題中(後半は、全て私たちに費やすつもりらしい)。
 瞬先輩も右に同じくで、宵衣先輩は、なんでも「さすがに授業なしに限界あるって言ってるから~」と、神坂先輩の部屋で宿題しながら、教えてるらしい。
 ……宵衣先輩の説明についていけるなんて、神坂先輩、尊敬です。
 あ、あのね、うちの学校ね、夏休みの二週間前には宿題渡しちゃうの。その代わり、難問があるから、早めに目を通して、先生に聞きなさい的なめんどくさいやつ。
 なんでフツーみたいにしないんだろーね?
 って、センセーといえば、灰咲先生のこと言ってなかった!
 灰咲先生に関しては、いつの間にかいなくなってたよね。うん。
 特に気にして無かったから、気がつかなかったわ。
「誰にも言わない?」
 雪芽さんが問う。
 ここでうなずけば教えてもらえそうだし、知りたいし、おもしろそうなんで頷こう!
 私とソラはほぼ同時にうなずいた。
「ふふっ、あのね、十六日に、イベントがあるの」
「「へ?」」
 イベント……?
 そんな話、存じ上げませんが?
 ていうか、イベントなら内緒の意味なくない?
「実はね、ミカちゃんの誕生日なの♪」
 なぁーるーほぉーどぉー!
 要するに、サプライズバースデーにしたいと。そーゆーことですね?!
 ならば協力しますっ!
 何故か?それはお世話になっt((殴。
 ……正直に言いますと、サプライズって言葉が好きで、楽しそうだからです。はい。
「手伝いますっ!」
「楽しそーだねっ」
「あら、乗り気ね~」
 そうして私たちのサプライズ計画は進んでいった。
 
 まず、私とソラが事情を説明し、ユウを勧誘(半ば無理やり)。
 ユウを入れたのは、私たちのことお見通しだろうし、宵衣先輩の前で問われたりしたら、一巻の終わりだからです!

 次に、宵衣先輩がセンセーとお買い物に行く(食材調達当番の)とき、いなくなるため、その間に筆談で、扉越しに神坂先輩を勧誘。
 ここは、『宵衣ちゃんには、お世話になっていますので』ということで、難なくOK。
 
 そして今!
 まさに、最大の敵が目の前に立ち塞がっております!
 誰か?それはーーー瞬先輩!
「あの、話が!」
「断る」
 私たちが何度話しかけようが、ドアを開けてもらうことすら許されず、すぐに否定される。もう、コンマ数秒の差もないというか、言ってる間に否定してない?って位の速さで。
 もう何度やってんの、この押し問答!そろそろ先輩帰ってきちゃうよ!
 それに本題すら話せてない!
「……司佐先輩」
「! ……真水か」
 ユウの声に対して、瞬先輩はかすかに驚いた雰囲気を表して、そのあと呟くように言った。
 え?え?!?
 なんで!
 私とソラが駄目で!
 ユウがOKなんですか!
 理由は薄々わかるけれども!認めたくないよっ!
「……忙しいんだが」
「手短に済ませるので、聞いてもらえませんか?このまま押し問答しても、こいつら引きませんし、時間を無駄にするだけです」
 ユウがスラスラそんなことを言って、瞬先輩をどうにか説得(?)しようとする。
 え、なに?なんで、説得モードになってんの?!
 私たちそんなこと言えないよ、自慢じゃないけど!
「何用だ?」
 そして、瞬先輩もそれに反応してますし!
 なんなん、この人たち!いや、ほんっとになんなの?!
 私たち赤点組が駄目で、一位がありなの?!いや、わかるけど!
 わかりやすいね、うん。私たち頭悪いし、話し方が合理的じゃないから嫌なんでしょ、わかってるよ!
 最初からユウに頼むべきでしたね、はい!(なにに切れてるのか、私、自分でもわかってないよ)
「明後日、帝先生の誕生日会を行うのですが、それに参加していただきたいのと、また、それを漏らすことなくサプライズにしたい。 プレゼントはなくても構わないそうです」
 ユウが少し早口で告げる。
 うぅ。どうなるかな?
 やっぱ、ダメかな?
「…………参加に必要なことは?」
「サプライズを隠し通すこと、明後日丸々一日を帝先輩に捧げてもいいと思うこと。ちゃんと誕生日を祝うこと……それだけです」
 一日を無駄にするっていうのがなんだかんだ一番大変なんだよねー、この条件下では。
 まぁ、別に私たち的には痛くも痒くもないけどね。まだ初日の方だし。
 いやっ、八月の最後の週とかなら、死に物狂いで宿題に追われてると思うから無理だけどね?!
「……わかった。 何時だ?」
「明日の昼から、始めるそうです」
「……予定を調節する」
「ありがとうございます」
 ユウは瞬先輩の返事を聞き遂げると、そう言って、「ほら、いくぞ」と歩き出す。
 えーと、次は一応灰咲先生か。

コンコン

「留守でーす」
 後ろから声がして振り返ると、そこには、屋上へ行く階段から降りてくる灰咲先生の姿があった。
「あっ」
 私たちが振り向くと、首を傾げて彼は聞く。
「俺になんのようで?」
「あのっ、明後日の話を」
「あさってぇ? あ、帝?」
 知ってるだ、この人。
 意外だなぁ。そーゆーの覚えてなくて怒られるのが目に見えてるのに。
「昨日の夜、雪芽に言われた。いや、覚えてねーつったら、殺されかけたわ」
 そう言って彼は、脇腹をさする。
 あ!通りで今日の朝ごはんの時、少し体勢を変な形にして、脇腹をさする動作をしてたのね!謎が解けたわ!
「ってことは?」
「わかってるから。 ついでにプレゼント用意済み」
 うわ、すごーい!
「俺ばかりは、用意しないと殺されるしな」
 ん、まぁ、確かにね。
 いつもアイスとかなんだかんだ奢らされてますから。プレゼントもせめてあなただけは用意しなきゃ、というか、絶対なにがあろうとも用意するべきですね、センセーは!

 私は部屋に戻ると、宿題の山から無理やり目を背け、机の引き出しにしまっていた、宵衣先輩の誕生日プレゼントの箱にリボンを当てる。
「うぅん、何色かなぁ」
 箱は白だから、何色でも合うんだけど……迷うな。
 私、リボンとかそーゆー系集めるの使わないくせに好きだから、その分数も多くて余計に困るんだよなぁ!
 宵衣先輩、宵衣先輩といえば何色?
 銀髪のイメージから箱は白にしちゃったんだよなぁ。
 やっぱり、黄色?琥珀の目を持ってますし。
 でも、明るいしオレンジ?
 いやいや、最年長だし、高等部のネクタイの色でもある落ち着いた青?
 優しさとかそーゆー意味合いのあるピンクもいいよね?
 あぁ、でもそうなるといつもの暑苦しは的に情熱とかを表す赤?!
 あぁぁっ、悩む!
 もうここは、これにしよう……。
 多分これが一番無難なんだよね。うん。
 もう無理矢理納得してやる。
 私はそう思って、一つのリボンを手に取った。
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