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六章 おでかけ
海
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クーちゃんたちと、離れたところで海に浮かびながら、ユーキんに聞く。
「君、楽しくなさそうだね?」
「え?」
「つまらないって顔してる」
つまらない、それを顔に表していた。
いつもの、ユーキんなら、一切そーゆーの見せないのに、今回はおかしい。
ここに何かがあるのは間違えないみたいだ。まぁ、僕には関係ないけど、内部分裂は避けたいからね。
「話聞くぞ?」
「いいです」
頑なに彼は断る。
それほど大切なことなのかねぇ?
まぁ。それなら無理に聞きだして敵を増やすよりは、引き下がるけどさ。
「ユーキん、そらっちとは、どう?」
「え?」
「何か言われなかった?」
「あぁ……嗅ぎつけて、ちょっかいかけてきてますよ」
……!
話してくれる、とはね。
いやぁ、ユーキん。
君の警戒心って思ったより軽いものなのだね。ボクなんかに心を許しちゃってさ♪
この中で一番心を許しちゃいけないのは、ボクなのにね。あははっ。
なーんて、心で嘲笑ってることは悟らせない。
お面をかぶることには慣れている。
伊達に何年も、偽ってきてないからね。
「ちょっかいって?」
「濁しながらこっちに聞いてきたりですよ」
あぁ、いわば、
Aさん 恋人いるでしょ?
Bさん えっ、なんでc先輩と付き合ってるってーー
Aさん 付き合ってるの、c先輩なんだ?
みたいにカマをかけてくるやつだな!(例えがひどい!)
「ふぅん、ひっかかるの?」
「何年友人してると思ってるんですか?」
ふっ、といつもとも、最近とも違う悪戯っ子のような顔で笑いかけられた。
ユーキんはこんな顔もできるのか。少し拍子抜けだった。
~ ユウside ~
今夜はバーベキューをするらしく、買い出しと準備に分かれる。
その中で俺は、渡された地図の場所にある倉庫に向かった。
いろいろなことを、忘れて。
着いた場所と、地図を何度か見比べる。そこの倉庫は、小さな戸建ての家のような外観だった。
鍵も、普通の家の鍵みたいで、誰か住んでそうな雰囲気だ。
扉を開けると少し埃が舞う。
けれど、かなり頻繁に掃除されているのか、整頓されており、埃もあまり気にならなかった。
中に入ると明かりは見当たらない。
唯一の光は、窓から差し込む厳しい太陽光。
暗がりに目が慣れ、辺りを見回してみると、その倉庫の中は、なにやら見覚えのあるものの配置の仕方がされていた。
チェストは、壁にピッタリ着いて、ソファとテレビはそれぞれが向かい合うように壁につく。
入ると、窓が一番に目に入り、右にテレビ、左にソファがある配置。
手前には、小さなダイニングもあって、椅子が四個ーーーなかった。
「……三、つ?」
悪寒がした。嫌な考えが頭を横切る。
慌てて辺りを見回すと、階段があって、そこへの道を塞ぐように、椅子が転がっている。
5、6歳の子供までなら、到底乗り越えられないだろう。
嫌な考えがだんだんと現実味を帯びてゆく。
体が震え、うまく息が吸えない。
窓をよくみると、破られた後があった。
扉を振り返っても、低い位置がとても傷つけられている。
あぁ、あぁ、そうか。そうだ。
なんで忘れていたんだ俺は。
なんで忘れていいなんて思ったんだ俺は。
忘れてたわけないだろ、忘れていいはずないだろ。
目を逸らしていた。見たくなかった。気が付きたくなかった。
すでに道中で気がついていたんだ、本当は。
でも信じたくなくて、疑っていた。
もしかしたら違う場所かも、もしかしたら似ているだけかも、もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら……。
あるはずない可能性を求めていた。
俯くけれど、どうしても確認してしまう。
ソファの下にあるのは、木炭。
ガムテープ。
扉には、ガムテープを剥がした後。
辺りに転がるのは、古びていてすぐにでも壊れそうな縄。
木の床の中に白ずんで目立つ、水か何かをこぼしたような後。
仕方ないのよ
だってこうするしかないんだ
恨まないでね
あんたのせいだ
お前なんていなければ
みんな一緒よ
足りないんだから仕方ないじゃない
一人で先に逝ってくれ
後で私たちも
眠れ
『嫌だ』
愛してるわ
『嘘だ』
海と共にいられることを誇りに
『海は嫌い』
おまえの幸せを願って
『ならこのてはなに?』
もう嫌なんだよ
『なんで僕まで?』
こうするしかないの
許してね
『他にもあるでしょ!』
許してくれるよな?な?
許す許さないの選択はないわ
許すしかあんたにはないの
『許さなきゃダメなの……?』
バイバイ
じゃあな
可愛い俺のーーー
可愛い私のーーー
『二人なんて大嫌いだ!』
臭い匂いと、息苦しさと、絶望と、喪失と、転がる人間。
そうだ、そうだよ。
ここは、俺のーーー
「君、楽しくなさそうだね?」
「え?」
「つまらないって顔してる」
つまらない、それを顔に表していた。
いつもの、ユーキんなら、一切そーゆーの見せないのに、今回はおかしい。
ここに何かがあるのは間違えないみたいだ。まぁ、僕には関係ないけど、内部分裂は避けたいからね。
「話聞くぞ?」
「いいです」
頑なに彼は断る。
それほど大切なことなのかねぇ?
まぁ。それなら無理に聞きだして敵を増やすよりは、引き下がるけどさ。
「ユーキん、そらっちとは、どう?」
「え?」
「何か言われなかった?」
「あぁ……嗅ぎつけて、ちょっかいかけてきてますよ」
……!
話してくれる、とはね。
いやぁ、ユーキん。
君の警戒心って思ったより軽いものなのだね。ボクなんかに心を許しちゃってさ♪
この中で一番心を許しちゃいけないのは、ボクなのにね。あははっ。
なーんて、心で嘲笑ってることは悟らせない。
お面をかぶることには慣れている。
伊達に何年も、偽ってきてないからね。
「ちょっかいって?」
「濁しながらこっちに聞いてきたりですよ」
あぁ、いわば、
Aさん 恋人いるでしょ?
Bさん えっ、なんでc先輩と付き合ってるってーー
Aさん 付き合ってるの、c先輩なんだ?
みたいにカマをかけてくるやつだな!(例えがひどい!)
「ふぅん、ひっかかるの?」
「何年友人してると思ってるんですか?」
ふっ、といつもとも、最近とも違う悪戯っ子のような顔で笑いかけられた。
ユーキんはこんな顔もできるのか。少し拍子抜けだった。
~ ユウside ~
今夜はバーベキューをするらしく、買い出しと準備に分かれる。
その中で俺は、渡された地図の場所にある倉庫に向かった。
いろいろなことを、忘れて。
着いた場所と、地図を何度か見比べる。そこの倉庫は、小さな戸建ての家のような外観だった。
鍵も、普通の家の鍵みたいで、誰か住んでそうな雰囲気だ。
扉を開けると少し埃が舞う。
けれど、かなり頻繁に掃除されているのか、整頓されており、埃もあまり気にならなかった。
中に入ると明かりは見当たらない。
唯一の光は、窓から差し込む厳しい太陽光。
暗がりに目が慣れ、辺りを見回してみると、その倉庫の中は、なにやら見覚えのあるものの配置の仕方がされていた。
チェストは、壁にピッタリ着いて、ソファとテレビはそれぞれが向かい合うように壁につく。
入ると、窓が一番に目に入り、右にテレビ、左にソファがある配置。
手前には、小さなダイニングもあって、椅子が四個ーーーなかった。
「……三、つ?」
悪寒がした。嫌な考えが頭を横切る。
慌てて辺りを見回すと、階段があって、そこへの道を塞ぐように、椅子が転がっている。
5、6歳の子供までなら、到底乗り越えられないだろう。
嫌な考えがだんだんと現実味を帯びてゆく。
体が震え、うまく息が吸えない。
窓をよくみると、破られた後があった。
扉を振り返っても、低い位置がとても傷つけられている。
あぁ、あぁ、そうか。そうだ。
なんで忘れていたんだ俺は。
なんで忘れていいなんて思ったんだ俺は。
忘れてたわけないだろ、忘れていいはずないだろ。
目を逸らしていた。見たくなかった。気が付きたくなかった。
すでに道中で気がついていたんだ、本当は。
でも信じたくなくて、疑っていた。
もしかしたら違う場所かも、もしかしたら似ているだけかも、もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら……。
あるはずない可能性を求めていた。
俯くけれど、どうしても確認してしまう。
ソファの下にあるのは、木炭。
ガムテープ。
扉には、ガムテープを剥がした後。
辺りに転がるのは、古びていてすぐにでも壊れそうな縄。
木の床の中に白ずんで目立つ、水か何かをこぼしたような後。
仕方ないのよ
だってこうするしかないんだ
恨まないでね
あんたのせいだ
お前なんていなければ
みんな一緒よ
足りないんだから仕方ないじゃない
一人で先に逝ってくれ
後で私たちも
眠れ
『嫌だ』
愛してるわ
『嘘だ』
海と共にいられることを誇りに
『海は嫌い』
おまえの幸せを願って
『ならこのてはなに?』
もう嫌なんだよ
『なんで僕まで?』
こうするしかないの
許してね
『他にもあるでしょ!』
許してくれるよな?な?
許す許さないの選択はないわ
許すしかあんたにはないの
『許さなきゃダメなの……?』
バイバイ
じゃあな
可愛い俺のーーー
可愛い私のーーー
『二人なんて大嫌いだ!』
臭い匂いと、息苦しさと、絶望と、喪失と、転がる人間。
そうだ、そうだよ。
ここは、俺のーーー
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