死に損ないの春吹荘 

ちあ

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七章 春吹荘崩壊

記憶か、思い出か①

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 部屋の整理って名目だけど、多分……ゆっきーの世話焼きだな。
 ボクはにも言わず部屋に戻った。


















 ほっとくつもりのくせに、ジィッと心配そうに見てくるなよ、雪芽、理人。
 馬鹿だね、ほんと。
 同情も、なにもかも……一方的に無意味に傷つくのはアンタラだよ。
 言っても無駄か。
 そんなことを思いながら、三階へ。
 自分の部屋を軽く片付ければ、センセーにもらったテディベアが出てくる。
 優しく笑うようなその顔が少しうざかった。

 ……笑うな。
 笑わないでくれ。

 出てくる感情の意味がわからず、部屋を出て、シーの部屋も片付ける。
 シーは綺麗付きだから、片付けるとこがなくて、なんとなく他のガキの部屋を開けた。
 汚れてたら困るから。
 壊れてたら困るから。
 無くなったら困るから。
 ボクの居場所だから。
 開けた先は、少し布団や枕が転げ落ちた、普通の一室。
 中には、誰かが暮らしているかのような、学生らしき勉強道具やノート、アルバム、写真立て、ベッド、洋服……たくさんあった。
 たくさん、たくさん。
 まだ、あった。
 それらを覚えている限り定位置に直す。
 主人のいない部屋を、主人のいる部屋へ。
 なにも感じなくていい。 
 ここが壊れなければいい。
 悲しくなるな、寂しくなるな。
 そんなことを考える。
 振動からか、少し、棚も開いていて。
 それぞれの棚を一つ、一つ確認して、確かめた。
 一番下の棚。
 いつも、隠し事を、好きなものを、入れていた棚。
 開けると、ノートや、写真、ペンダントや、本…………手紙と、ビデオが入っていた。



 やだ。





 なんだか、嫌な、予感がする……。









 ビデオ、手紙?
 誰の?
 誰への?
 わかるよ、わかる。 
 信じたくないけど。
 信じれないけど。
 あいつなら、やりそうだ……。
 手紙を、壊さぬように、破らぬように優しく開ける。

『 宵衣へ
 お久しぶりで通るかな?
 まぁ、久しぶりに変わりはないね。
 僕はとりあえず、ビデオテープを作りました。
 君宛です。
 あの三人には悪いんだけど、僕、一番は宵衣だから。
 他の人よりたくさん記録して、他の人よりたくさん泣いた。
 ごめんね。
 まぁ、聞く順としては、
 振ってある番号でやってね。
 30~40は、誕生日ようです。
 忘れないでね?




 大好きだよ、宵衣。
 また、会えたら会おう。
 さようなら、またね。  』

 ……手紙。テープ。
 なんで、残したの……。
 いらないよ?
 だってボクのせいじゃないか。
 だってボクが悪いじゃないか。
 君は意地悪だね。
 ボクは、いらないけど。



「クゥ」
 扉を少しだけ開けて、テディベアをくわえたシキがやってくる。
 ボクのそばにテディベアを置いて、この部屋のテレビに向かって吠える。
「ワゥ、ワゥッ」
 やれって?
 ……見る気がないよ?
「いいよ、シキ、いらなーーー」
「ガァウッ」
 ボクの袖を引っ張って、ワウワウ吠える。
 なんでそんな必死なの、君は。
 ボクはさ、もう嫌なんだよ。
 ここが壊れた時、本当に死のうかと思った。
 ここがなくなってたら?
 壊されていたら?
 思い出記録がなくなったら?
 怖くて怖くしてしかたなかったよ。
 それと同時にさ、もう見たくなかった。
 救われたけど呪われた。
 大好きだけど大嫌い。
 ここは、ボクの呪縛だよ。
 自分で呪って、キミに救われる。
 キミを見るたび、思い出すたび死にたくなる。
 死にたい時に苦しい時にキミを思い出すと、生きてたいってなる。
 ねぇ、ボクらってなんだろね?
 ほんっとにさ……見たくないんだ。
「やだよ、嫌だ」
 声に出して、シキに言う。
「思い出したくないよ……キミとの記憶は、楽しいこともあるけど、悲しいから……」
 嫌なんだよ。
 もう、キミを殺してしまうのは。
 ボクがキミを失うのは。
 ボクがみんなからキミを取り上げるのは。
 嫌なんだよ……。
「キミのことを一つ思い出すたびさ……いっつも見えるんだ」
 最後の時が。
 思い出すんだ、悲しいんだ。
 嫌だ。
「ガウガウ」
 それじゃダメと叱るように。
 見てよ、と悲しそうにするように。
「なんでそんなに言うの?」
「ガウゥ……」
 なんだか、センセーやゆっきーたちよりも、シキが悲しそうにする方が耐えられなかった。
 なんでかな……。
 センセーたちとの方が、付き合いは長いのに。
 キミは、アイツと入れ違いに入った新入りなのに。
 …………無理って言えない。
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