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ローエン家の思惑
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俺は部屋に案内されたがユミナは着いてきたままだった。
「あのユミナさま?お部屋に戻られたほうが?」
「いやです。せめて、父さまが帰って来るまででも傍にいてください」
ユミナの手を握る力が増す。
「わかりました。お話でもして待ちましょうか。」
「はい。」
それから暫くは2人でお茶をしながら時間を潰していたのだが・・・
「ユミナさま、近くないですか?」
ユミナは椅子を俺の真横に持ってきてピッタリとくっついていた。
「大丈夫ですよ。この距離がいいんです。」
「いや、普通正面とかじゃないですか?」
「それだと遠いじゃないですか。アベルさまの傍にいさせてください。」
「ま、まあ、いいんだけど、作法的にあとで怒られたりしない?」
「・・・今日は仕方ないんです。」
「あー、怒られるんだね。」
「はしたないとか言われそうです。」
「なら、やっぱり正面に座るよ。」
「ダメです!私の横はおいやですか?」
泣きそうなユミナの顔を見て、俺は折れる。
「そんな事はないです。むしろ光栄ですが、ユミナさまが後で怒られるなら、止めた方がいいと思いましたので。」
「かまいません。それに私の事はユミナとお呼びください。」
「いやいや、それは不敬ですよ。」
「いいんです。さあ、呼んでください。」
「無理ですって。」
「アベルさま・・・呼んでくださらないのですか?」
また、泣きそうな顔をされ、仕方なく、
「ユミナ。」
「はい♪アベルさま。」
満面の笑顔で答えてくれた。
俺がユミナ相手に話をしている時、
「父上、報告したいことが・・・」
「マルクスの事だな、簡単には聞いておるが。」
「はい、マルクスは私の制止を無視してアベルさんに斬りかかりました、その際騎士の多くが私の言葉よりマルクスの命令を重視しました。」
「由々しき問題だな、しかし、よくアベル殿は無事だったな、性格はともかくマルクスは剣術スキルがⅥはあった筈だが。」
「アベルさんは眼にも止まらぬ早さで全ての騎士の腕を切り落としました。殺さなかったのは唯一の情けか、公爵家に配慮したかのどちらかでしょう。」
「うむ、しかし、多くの騎士に欠員が出ることになるな・・・」
ハインリッヒは頭を抱える、多くの騎士が役に立たなくなった。
その中には腕利きも多数いた。
ローエン家の戦力低下を考えると頭が痛くなる。
「いえ、私の命令に背くような騎士など必要ありません、これを機に粛清しようかと。」
「とは言っても皆長年仕えてくれておる家の者だぞ。」
「長年仕えれば命令を聞かなくていいなど、あしき前例になります。ここは厳しくするべきかと。」
「わかった、この件はユリウスに任せる。して、アベル殿はいかにしておられる。」
「最大限にもてなしております、それとユミナがアベルさんを気に入ったようでずっと傍にいるようです。」
「なんと、男嫌いのユミナがなぁ、珍しい事もあるものだ、しかし、公爵家の令嬢としてはあまり宜しく無いな。」
ハインリッヒは苦笑いをする。
余り成人男性に近づき過ぎると、あらぬ疑いをかけられるのが貴族というものだ。
まだ幼いとはいえ、既に10歳、疑いをかけられるには充分な歳だった。
「その事ですが、私としましてはユミナをアベルさんに嫁がせても良いと考えます。」
「なに?それはまた突拍子も無いことを。」
ユリウスの提案に驚きを隠せない。
「悪い話では無いと思うのです。潰れてた私の足を治療出来る力、マルクスをモノともしない強さ、これだけでも縁を持ちたいところです。」
「しかしだな、ユミナをくれてやる事もないだろう。」
「そもそもユミナは他に嫁に行けるのですか?あの子の男嫌いは治る気がしないのですが。」
「それはだな、徐々に慣れていけば・・・」
「せっかくユミナが自分で近づいているのです。私としては応援してあげたいし、その相手が有益な人なら尚更です。」
「うぬぬ、いかにしたものか、」
「父上、アベルさんは平民とはいえ、一角の人物です。必ずや我がローエン家に欠かせぬ方になるでしょう。」
「わかった!お前がそこまで言うなら好きにするが良い、ただし、ユミナが嫌がらなかったらの話だからな。」
「勿論です。私もユミナの幸せが1番ですから。」
ハインリッヒは娘をとられる事に不機嫌になりつつも、ユリウスが此処まで入れ込むアベルに興味が尽きなかった。
「あのユミナさま?お部屋に戻られたほうが?」
「いやです。せめて、父さまが帰って来るまででも傍にいてください」
ユミナの手を握る力が増す。
「わかりました。お話でもして待ちましょうか。」
「はい。」
それから暫くは2人でお茶をしながら時間を潰していたのだが・・・
「ユミナさま、近くないですか?」
ユミナは椅子を俺の真横に持ってきてピッタリとくっついていた。
「大丈夫ですよ。この距離がいいんです。」
「いや、普通正面とかじゃないですか?」
「それだと遠いじゃないですか。アベルさまの傍にいさせてください。」
「ま、まあ、いいんだけど、作法的にあとで怒られたりしない?」
「・・・今日は仕方ないんです。」
「あー、怒られるんだね。」
「はしたないとか言われそうです。」
「なら、やっぱり正面に座るよ。」
「ダメです!私の横はおいやですか?」
泣きそうなユミナの顔を見て、俺は折れる。
「そんな事はないです。むしろ光栄ですが、ユミナさまが後で怒られるなら、止めた方がいいと思いましたので。」
「かまいません。それに私の事はユミナとお呼びください。」
「いやいや、それは不敬ですよ。」
「いいんです。さあ、呼んでください。」
「無理ですって。」
「アベルさま・・・呼んでくださらないのですか?」
また、泣きそうな顔をされ、仕方なく、
「ユミナ。」
「はい♪アベルさま。」
満面の笑顔で答えてくれた。
俺がユミナ相手に話をしている時、
「父上、報告したいことが・・・」
「マルクスの事だな、簡単には聞いておるが。」
「はい、マルクスは私の制止を無視してアベルさんに斬りかかりました、その際騎士の多くが私の言葉よりマルクスの命令を重視しました。」
「由々しき問題だな、しかし、よくアベル殿は無事だったな、性格はともかくマルクスは剣術スキルがⅥはあった筈だが。」
「アベルさんは眼にも止まらぬ早さで全ての騎士の腕を切り落としました。殺さなかったのは唯一の情けか、公爵家に配慮したかのどちらかでしょう。」
「うむ、しかし、多くの騎士に欠員が出ることになるな・・・」
ハインリッヒは頭を抱える、多くの騎士が役に立たなくなった。
その中には腕利きも多数いた。
ローエン家の戦力低下を考えると頭が痛くなる。
「いえ、私の命令に背くような騎士など必要ありません、これを機に粛清しようかと。」
「とは言っても皆長年仕えてくれておる家の者だぞ。」
「長年仕えれば命令を聞かなくていいなど、あしき前例になります。ここは厳しくするべきかと。」
「わかった、この件はユリウスに任せる。して、アベル殿はいかにしておられる。」
「最大限にもてなしております、それとユミナがアベルさんを気に入ったようでずっと傍にいるようです。」
「なんと、男嫌いのユミナがなぁ、珍しい事もあるものだ、しかし、公爵家の令嬢としてはあまり宜しく無いな。」
ハインリッヒは苦笑いをする。
余り成人男性に近づき過ぎると、あらぬ疑いをかけられるのが貴族というものだ。
まだ幼いとはいえ、既に10歳、疑いをかけられるには充分な歳だった。
「その事ですが、私としましてはユミナをアベルさんに嫁がせても良いと考えます。」
「なに?それはまた突拍子も無いことを。」
ユリウスの提案に驚きを隠せない。
「悪い話では無いと思うのです。潰れてた私の足を治療出来る力、マルクスをモノともしない強さ、これだけでも縁を持ちたいところです。」
「しかしだな、ユミナをくれてやる事もないだろう。」
「そもそもユミナは他に嫁に行けるのですか?あの子の男嫌いは治る気がしないのですが。」
「それはだな、徐々に慣れていけば・・・」
「せっかくユミナが自分で近づいているのです。私としては応援してあげたいし、その相手が有益な人なら尚更です。」
「うぬぬ、いかにしたものか、」
「父上、アベルさんは平民とはいえ、一角の人物です。必ずや我がローエン家に欠かせぬ方になるでしょう。」
「わかった!お前がそこまで言うなら好きにするが良い、ただし、ユミナが嫌がらなかったらの話だからな。」
「勿論です。私もユミナの幸せが1番ですから。」
ハインリッヒは娘をとられる事に不機嫌になりつつも、ユリウスが此処まで入れ込むアベルに興味が尽きなかった。
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