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アベルがいるユグドラシル王国は三方を敵国と面していた。南はギレン公国、西はレーン帝国、北にサクソン王国、いずれも豊かなユグドラシル王国を狙い、長年敵対関係にあった。
唯一、敵がいないのは東の海に面している部分だけという状態であった。
その為、王都は海に面した所となっており、残りの三方には各1万からなる方面軍を送り込み、防衛させていた。
そんな中、軍部の要請により北にランスロットを派遣することとなる。
「ランスロットよ、そなたに北方のノースの町に行ってもらう。
北方騎士団に合流後、周辺を鎮撫いたせ。」
「ハッ!国の為に尽くして参ります。」
国王の命令をランスロットは跪き、拝命する。
ランスロットが謁見室を去った後、国王とアーサーは話し合っていた。
「父上、ランスロットを前線に送って良かったのですか?」
「うむ、しかしな、軍部から王族の派遣を強く要請されてな、どうしても前線の士気を上げるためと言われると仕方ない所もある、まあ、今回の一件の罰にもなるだろ。」
「軍部がですか?まあランスロットの武勇は軍部が好んでいることは知ってますが・・・」
「うむ、出来ればお前の支持を上げたい所だが王太子を前線に送るわけもいかんしな。」
「何もなければいいんですが・・・」
アーサーは不安を感じていた。
そんな中、俺は港に来ていた。
「おー船だぁ~でっかいなぁ~」
「ふふ、アベルさま、子供みたいですよ。」
船を見てはしゃいでる姿をユミナに見られ、笑われていた。
「仕方ないだろ、船なんて初めてみたんだから。なぁリリーさん。」
同じく海のないシーマの町から来たリリーに同意を求める。
「私は見たことありますよ。王都に来るのも初めてではないですし。」
「・・・裏切りものー!」
「な、なんですか!」
「リリーさんは仲間だと思ったのに。」
「はいはい、アベルさん、どうです少し乗せてもらいますか?」
「乗れるの?」
「うちの家と懇意にしている商会がありますから其処に頼めば船に上がらしてもらうぐらいは出来ると思いますよ。」
「乗りたい♪」
「そうですか、なら商会に向かいましょう。」
ユミナの案内で大きな商会の前にきた。
「ユミナ、此処は?」
「サカイ商会と言って、うちの御用商会です。」
建物の大きさに少しビビりながらユミナの先導で中に入る。
「これはユミナ様、本日はどのような御用件にございましょう?」
ユミナに気付くとすぐに人がやってきた。
「今日は買い物じゃないの、少し船に上がらせてもらえないかと。」
「船にですか?」
「はい、私の大事なお客様に見てもらおうかと思いまして。」
「かしこまりました。しかし、現在直属の船は出払っておりまして、当方と取引している相手の船になりますがよろしいですか?」
「ええ、乗せてどっかに行ってもらいたいわけでもないですし。少し見せていただけたら。」
「かしこまりました。すぐに案内致します。」
商人の案内で船につく。
「この船は海の向こうの国、オウカから来ている船にございます。」
「番頭さん、どうしたんだい?」
船から男が商人に声をかけてくる。
「クキさん、ちょっと私の客人に船を見せてもらえないだろうか?」
「あー動かせないがそれでいいなら乗りな。」
「ささ、此方に。」
俺達は船の上に・・・
「おーこれが船か!」
俺が感動していると。
「あんた、船は初めてかい?」
「あっ、えーとクキさんでしたっけ?そうなんですよ、まあ海自体も初めてなんですけどね。」
「なるほど、内地の奴かい・・・うん?あんた、その首飾りは?」
クキは俺が首からかけている飾りに興味を示す。
「これかい?捨てられた時から持ってた物みたいだ。」
「捨てられた?あんた孤児かい?」
「そうだよ、親も顔も知らね、持ってた物はこれだけだよ。」
俺は首飾りを指差した。
そして、クキはじっくり見ていた。
「あれ、やっぱり、いや・・・」
何やら困惑しているようだった。
「何か知ってるのかい?」
「まだ確証はないのだが、この首飾りは我が国の物とよく似ているんだ。どうだろう、模様を写させてもらえないか?」
「買い取るとかじゃないのか?」
「そんなこと出来ませんよ!」
クキは慌てて否定する。ただその態度に。
「何か知ってるな?」
俺は疑いの眼を向ける。
「ま、待ってください、俺も自信はないんです。ただ、王族の方がこれと似たような紋章を使ってた気がしましたので。」
「王族?ははは、それはないな。」
「でしょ?でも、それを考えるぐらいには似てるんです。」
「へぇーそうなんだ、でも、何かわかったら教えてくれるかな?」
「ええ、国に帰ったら調べてみますよ、連絡先はサカイ商会でいいですか?」
「ローエン公爵家にお願いします。」
ユミナが口を挟んできた。
「ユミナ?」
「アベル様の出生の秘密なら1商会に伝えるのもどうかと、直接知らせてくれたら謝礼は多めに支払いますよ。」
「わかりました。必ずお知らせしますが、わかるかどうかはわかりませんよ。」
「ええ、それでもかまいません。もちろんその時も謝礼はしますから、安心なさってください。」
「わかりました。出来るだけの事はしたいと思います。」
クキさんと約束をして俺は船から降りた。
唯一、敵がいないのは東の海に面している部分だけという状態であった。
その為、王都は海に面した所となっており、残りの三方には各1万からなる方面軍を送り込み、防衛させていた。
そんな中、軍部の要請により北にランスロットを派遣することとなる。
「ランスロットよ、そなたに北方のノースの町に行ってもらう。
北方騎士団に合流後、周辺を鎮撫いたせ。」
「ハッ!国の為に尽くして参ります。」
国王の命令をランスロットは跪き、拝命する。
ランスロットが謁見室を去った後、国王とアーサーは話し合っていた。
「父上、ランスロットを前線に送って良かったのですか?」
「うむ、しかしな、軍部から王族の派遣を強く要請されてな、どうしても前線の士気を上げるためと言われると仕方ない所もある、まあ、今回の一件の罰にもなるだろ。」
「軍部がですか?まあランスロットの武勇は軍部が好んでいることは知ってますが・・・」
「うむ、出来ればお前の支持を上げたい所だが王太子を前線に送るわけもいかんしな。」
「何もなければいいんですが・・・」
アーサーは不安を感じていた。
そんな中、俺は港に来ていた。
「おー船だぁ~でっかいなぁ~」
「ふふ、アベルさま、子供みたいですよ。」
船を見てはしゃいでる姿をユミナに見られ、笑われていた。
「仕方ないだろ、船なんて初めてみたんだから。なぁリリーさん。」
同じく海のないシーマの町から来たリリーに同意を求める。
「私は見たことありますよ。王都に来るのも初めてではないですし。」
「・・・裏切りものー!」
「な、なんですか!」
「リリーさんは仲間だと思ったのに。」
「はいはい、アベルさん、どうです少し乗せてもらいますか?」
「乗れるの?」
「うちの家と懇意にしている商会がありますから其処に頼めば船に上がらしてもらうぐらいは出来ると思いますよ。」
「乗りたい♪」
「そうですか、なら商会に向かいましょう。」
ユミナの案内で大きな商会の前にきた。
「ユミナ、此処は?」
「サカイ商会と言って、うちの御用商会です。」
建物の大きさに少しビビりながらユミナの先導で中に入る。
「これはユミナ様、本日はどのような御用件にございましょう?」
ユミナに気付くとすぐに人がやってきた。
「今日は買い物じゃないの、少し船に上がらせてもらえないかと。」
「船にですか?」
「はい、私の大事なお客様に見てもらおうかと思いまして。」
「かしこまりました。しかし、現在直属の船は出払っておりまして、当方と取引している相手の船になりますがよろしいですか?」
「ええ、乗せてどっかに行ってもらいたいわけでもないですし。少し見せていただけたら。」
「かしこまりました。すぐに案内致します。」
商人の案内で船につく。
「この船は海の向こうの国、オウカから来ている船にございます。」
「番頭さん、どうしたんだい?」
船から男が商人に声をかけてくる。
「クキさん、ちょっと私の客人に船を見せてもらえないだろうか?」
「あー動かせないがそれでいいなら乗りな。」
「ささ、此方に。」
俺達は船の上に・・・
「おーこれが船か!」
俺が感動していると。
「あんた、船は初めてかい?」
「あっ、えーとクキさんでしたっけ?そうなんですよ、まあ海自体も初めてなんですけどね。」
「なるほど、内地の奴かい・・・うん?あんた、その首飾りは?」
クキは俺が首からかけている飾りに興味を示す。
「これかい?捨てられた時から持ってた物みたいだ。」
「捨てられた?あんた孤児かい?」
「そうだよ、親も顔も知らね、持ってた物はこれだけだよ。」
俺は首飾りを指差した。
そして、クキはじっくり見ていた。
「あれ、やっぱり、いや・・・」
何やら困惑しているようだった。
「何か知ってるのかい?」
「まだ確証はないのだが、この首飾りは我が国の物とよく似ているんだ。どうだろう、模様を写させてもらえないか?」
「買い取るとかじゃないのか?」
「そんなこと出来ませんよ!」
クキは慌てて否定する。ただその態度に。
「何か知ってるな?」
俺は疑いの眼を向ける。
「ま、待ってください、俺も自信はないんです。ただ、王族の方がこれと似たような紋章を使ってた気がしましたので。」
「王族?ははは、それはないな。」
「でしょ?でも、それを考えるぐらいには似てるんです。」
「へぇーそうなんだ、でも、何かわかったら教えてくれるかな?」
「ええ、国に帰ったら調べてみますよ、連絡先はサカイ商会でいいですか?」
「ローエン公爵家にお願いします。」
ユミナが口を挟んできた。
「ユミナ?」
「アベル様の出生の秘密なら1商会に伝えるのもどうかと、直接知らせてくれたら謝礼は多めに支払いますよ。」
「わかりました。必ずお知らせしますが、わかるかどうかはわかりませんよ。」
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