24 / 66
山中研究所
しおりを挟む
山中研究所会議室
俺達は担当者と打ち合わせをしていた。
話を聞くと、新型の疫病の特効薬を生産する為の施設を建設するらしい。
予算は潤沢にあるが、工場と生産ラインの設計、資材の購入とやることは多岐に渡り、新人の俺だと手に余る案件だった。
「では、社に持ち帰り検討させていただきます。」
アミのお陰で何とか形にはなっていたが、相手の担当者は不満そうだった。
「出来ましたら次回からはもう少し上の方にきてもらえませんか?新人さんと女性だと此方としては不安がありますので。」
「はい?私だと何か問題が?」
「若い女性は急に辞めたりしますので、其方の方は新人すぎて仕事を任せるのには不安があります。」
「しかし、其方から私を指名して来られたのでは?」
「はい、所長の意向でしたが、まさか新人とは思いませんでした。」
「そうですか、そういうことでしたら、次回から別の者が担当させてもらいます。ではこれで失礼さしてもらいます。」
「ちょっとリョウくん。」
「行こう、アミさん。ではこれで。」
俺は渋るアミさんを連れて部屋を出ようとした。
「いや~遅くなって申し訳ない。」
奥から研究者らしき人が入ってきた。
「おや、もう帰るとこだったか、間に合ってよかった。君が桐谷くんだね。会えてよかったよ。」
「所長?お知り合いですか?」
「いや、ボクは直接は知らないけど、娘の恩人なんだ、失礼が無いようにな。」
担当者の岩屋さんの顔色は悪かった。
「すいません、所長さんですか?娘の恩人と言われましたがどなたの事でしょう?」
「先日世話になったマイの父で山中トオルといいます。そして、もう一人の娘のユミの父でもあります。二人ともお世話になりました。」
「あー、マイちゃんのお父さんですか。いえ、たいしたことはしておりませんのでお気になさらず。ただミウを紹介しただけです。」
「いえいえ、励ましの手紙をもらってからユミの喜びようと手術に前向きになってくれたお陰で、手術も成功したし、ホントに感謝しかありません。
「それはミウのしたことです。感謝なら今後もミウを応援してあげてください。」
「何を言うんです。もちろんミウさんにも感謝しておりますが、見ず知らずの娘の為に紹介してくれた桐谷さんにも感謝しておりますよ。」
「はい、そう言われるなら・・・」
「さて、今晩お時間はありますか?」
「えっ、まあこの仕事が終われば、会社に報告して終りかと、その後なら時間はありますが・・・」
「どうですか、お食事でも?接待も仕事の内ですよ。」
「いやいや、自分は接待を受ける地位にいませんので。」
「えっ?桐谷さんが今回のプロジェクトリーダーになる予定では?」
「いえ、先程そちらの担当者から新人である自分は担当を降りるよう言われましたので、これから社に戻って担当を選ぶ所です。なので接待は其方の方にお願いします。」
「えっ?どういうことだね、岩屋くん!」
「所長、このプロジェクトを新人に任せる方が間違ってます!」
「岩屋くん、いつから君はそんな権限を持てるようになったのかね?しかも、ワザワザ来てもらったのに、どれだけ失礼なんだ!」
「しかし、自分は間違ってません!」
「あの~そろそろ帰っていいですか?社に報告もありますので。」
「あー、リョウくん感謝といいながら、この仕打ち、誠に申し訳ない」
トオルさんは深く頭を下げた。
「頭を上げてください、新人の人が携わるには確かに荷が重い話です。」
「しかし、この仕事のリーダーをやれば今後の仕事をやっていく上で箔がつくから、これをお礼にしたかったのだが。」
「お礼は結構です。では、失礼します。」
俺はこれ以上話しても堂々巡りになるから、早めに打ち切り、帰路についた。
「リョウくん、よかったの?たぶんあのまま話してたらリョウくんがリーダーでプロジェクトが進んだよ。」
「アミさん、そこまでしなくていいよ。縁もプライベートなものだし、俺には荷が重い話だったしね。」
「もったいないなぁ~あの人ノーベル賞貰ってる人だよ。その人が作る国際的な疫病の薬・・・あーもったいない!」
「まあまあ、アミさんはプロジェクトに入れたらいいね。」
俺は何故か自分の事のように怒ってるアミを宥めながら、会社に戻った。
石戸係長に話をし、後は任せる事にした。
俺達は担当者と打ち合わせをしていた。
話を聞くと、新型の疫病の特効薬を生産する為の施設を建設するらしい。
予算は潤沢にあるが、工場と生産ラインの設計、資材の購入とやることは多岐に渡り、新人の俺だと手に余る案件だった。
「では、社に持ち帰り検討させていただきます。」
アミのお陰で何とか形にはなっていたが、相手の担当者は不満そうだった。
「出来ましたら次回からはもう少し上の方にきてもらえませんか?新人さんと女性だと此方としては不安がありますので。」
「はい?私だと何か問題が?」
「若い女性は急に辞めたりしますので、其方の方は新人すぎて仕事を任せるのには不安があります。」
「しかし、其方から私を指名して来られたのでは?」
「はい、所長の意向でしたが、まさか新人とは思いませんでした。」
「そうですか、そういうことでしたら、次回から別の者が担当させてもらいます。ではこれで失礼さしてもらいます。」
「ちょっとリョウくん。」
「行こう、アミさん。ではこれで。」
俺は渋るアミさんを連れて部屋を出ようとした。
「いや~遅くなって申し訳ない。」
奥から研究者らしき人が入ってきた。
「おや、もう帰るとこだったか、間に合ってよかった。君が桐谷くんだね。会えてよかったよ。」
「所長?お知り合いですか?」
「いや、ボクは直接は知らないけど、娘の恩人なんだ、失礼が無いようにな。」
担当者の岩屋さんの顔色は悪かった。
「すいません、所長さんですか?娘の恩人と言われましたがどなたの事でしょう?」
「先日世話になったマイの父で山中トオルといいます。そして、もう一人の娘のユミの父でもあります。二人ともお世話になりました。」
「あー、マイちゃんのお父さんですか。いえ、たいしたことはしておりませんのでお気になさらず。ただミウを紹介しただけです。」
「いえいえ、励ましの手紙をもらってからユミの喜びようと手術に前向きになってくれたお陰で、手術も成功したし、ホントに感謝しかありません。
「それはミウのしたことです。感謝なら今後もミウを応援してあげてください。」
「何を言うんです。もちろんミウさんにも感謝しておりますが、見ず知らずの娘の為に紹介してくれた桐谷さんにも感謝しておりますよ。」
「はい、そう言われるなら・・・」
「さて、今晩お時間はありますか?」
「えっ、まあこの仕事が終われば、会社に報告して終りかと、その後なら時間はありますが・・・」
「どうですか、お食事でも?接待も仕事の内ですよ。」
「いやいや、自分は接待を受ける地位にいませんので。」
「えっ?桐谷さんが今回のプロジェクトリーダーになる予定では?」
「いえ、先程そちらの担当者から新人である自分は担当を降りるよう言われましたので、これから社に戻って担当を選ぶ所です。なので接待は其方の方にお願いします。」
「えっ?どういうことだね、岩屋くん!」
「所長、このプロジェクトを新人に任せる方が間違ってます!」
「岩屋くん、いつから君はそんな権限を持てるようになったのかね?しかも、ワザワザ来てもらったのに、どれだけ失礼なんだ!」
「しかし、自分は間違ってません!」
「あの~そろそろ帰っていいですか?社に報告もありますので。」
「あー、リョウくん感謝といいながら、この仕打ち、誠に申し訳ない」
トオルさんは深く頭を下げた。
「頭を上げてください、新人の人が携わるには確かに荷が重い話です。」
「しかし、この仕事のリーダーをやれば今後の仕事をやっていく上で箔がつくから、これをお礼にしたかったのだが。」
「お礼は結構です。では、失礼します。」
俺はこれ以上話しても堂々巡りになるから、早めに打ち切り、帰路についた。
「リョウくん、よかったの?たぶんあのまま話してたらリョウくんがリーダーでプロジェクトが進んだよ。」
「アミさん、そこまでしなくていいよ。縁もプライベートなものだし、俺には荷が重い話だったしね。」
「もったいないなぁ~あの人ノーベル賞貰ってる人だよ。その人が作る国際的な疫病の薬・・・あーもったいない!」
「まあまあ、アミさんはプロジェクトに入れたらいいね。」
俺は何故か自分の事のように怒ってるアミを宥めながら、会社に戻った。
石戸係長に話をし、後は任せる事にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる