俺とアーサー王

しゅん

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2日目「騎士王と契約者」

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「DIYでもするか」
そう、あのDIYである。作ったり、修繕したりするあれである。
「主、それは楽しいものですか」
相変わらず正座しながらネットサーフィン中の俺をマジマジ見てくる騎士王がいる。
「楽しいんじゃない?自分で何か作ったりするんだし」
丁度よく古い本棚があるし、解体して作り直そう。

新聞紙を轢いて木の粉が落ちても大丈夫なようにする。その新聞紙の上にはバラバラの木材がある。
「さて、始めるか、はい」
俺はアーサーに貸してと言うように手を差し出した。
「何ですか?主」
「え、いやそのエクスカリバー貸してよ、俺がノコギリなんて持ってるわけないんだからさ」
当たり前だろとアーサーに問いかける。
「嫌です」
「お前マジで何のために腰にそれ携えてんの」
俺は少し悩むと
「はぁー、仕方ねぇな安いノコギリでも買ってくるか、留守番しててくれ」
俺は玄関に向かって扉を開けて、外に出た。
そしてアイツが寝てる間にエクスカリバーで素振りでもしてやろうと決意した。

「···主が行ってしまった」
正座しながらバラバラの木材を見る。
この木材を今私が斬れば主に褒められて本物のステーキを食べさせてくれるかもしれない。
「いや、これは民のために···」
葛藤していると、
ピンポーン
インターホンが鳴った。こういう時の対処法は主に聞いたことがある。
「奥義、居留守の使い所、という訳か」
扉の前で静かに仁王立ちする。これで1つのワザとは主は中々頭が良いのかもしれない。
すると扉の向こうから声が聞こえてきた。
「あの···扉のガラス越しに影の輪郭がくっきり見えてるんですが、いるのなら開けてください」
やってしまった。

「何でしょう」
私の前にいる、高齢の人がうおっとビックリした。
鎧を着ていて、高身長、金髪、イケメン
、この国には私のような容姿をした人がいないからビックリしたのだろう。
まず、外は見たことしかないのだが。
「あの···ワタクシ、放送局の者でしてウチの放送局と契約すると今ならなんとぬいぐるみのプレゼントなどが付いてくるのです、いかがです?」
男は手を合わせスリスリしながら言ってきた。
「ほう、契約すると民が幸せになるのか?」
「そうです、そうです!我々が幸せに、あなたも幸せになれる素晴らしい契約です」
「──!」
このパターンは主に聞いたことがある。質問に激しく同意してくる輩は敵!
「貴様ッ!まさかモードレッドの刺客か!」
エクスカリバーを抜いて構える。
「えっ!?違います!ちが──」
「問答無用ッ!」

「さっきオッサンが泣きながら走ってったけど何かあった?」
片手にビニール袋を持ちながら聞いた。
「いえ」
「って、おーい!」
木材が粉々になっている。それはもう粒子レベルに。
「お前、エクスカリバー使っただろ」
アーサーに指を指しながら言った。
「使ってません」
「今日のご飯、お前抜きな」
アーサーが土下座してきた。

「主、最近私への当たりが強いと思うのですが、仮にも私は騎士王です。たまにはステーキが食べたいです」
今日の夜ご飯である冷凍食品の餃子を食べながら言ってきた。
「美味しそうに食いながら何言ってんだ、もうお前も働けよ、なんでもいいからさ」
「騎士王たる私が雑用とは、民が落胆してしまいます」
誰もお前のことに対して落胆しねぇよ。
「明日から俺また学校だから、もう林業でいいじゃん」
「エクスカリバーが泣いています」
「お前、そのエクスカリバーマリアナ海溝に捨ててくるぞ」
アーサーが大事そうにエクスカリバーを抱える。
「お前が稼いだ金でステーキでも何でも好きなやつ買えよ、それでいいだろ」
アーサーも納得したようだ。てかどんだけステーキ食いたいんだ。
明日にはコイツも社会の一員かと思うと何だか誇らしい、これが親の感情か···親じゃないけど。
「主、さっきネットで飲むだけで筋肉がムキムキになる、というものを買ったので私はまた1つ強くなれそうです」
「な···何で勝手に俺のクレカ使ってんだよ!」
しかも詐欺商品だし!
クレカの暗証番号変えておこう。
そう思った。




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