俺とアーサー王

しゅん

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3日目「騎士王と同級生」

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「──ッ!」
毛布を翻し、体を起こす。
既に隣にもうひとつあるはずの布団が無く、ちゃぶ台の上にはラップによって覆われているご飯がある。そしてその横にはひとつのメモが
「「レンジで温めて食べて」···レンジの使い方はどこに書いてあるのだ?」
私の、騎士王の朝である。

「これか?」
とりあえず、ボタンをポチポチ押してみる。ピッと押す度に音が鳴る。
「うむ、分からん」
結局、カチカチの白米を食べて寝た。
騎士王の朝は早い、そのせいで睡眠時間が足りないのだ。

「ただいまー」
「主ッ!」
アーサーがガバッと立ち上がり、玄関に向かう。
「あー、アーサー今日俺の友達が来るからお前飾りの真似しろ」
アーサーが首を傾げる。
「飾り?一体どういうことですか?」
「飾りというか鎧騎士の置物としてただただ直立不動をしてほしいんだ、頭の鎧もつけて」

友達の滞在時間は1時間、その間にコイツを固定する。
「違う!もっとこう騎士っぽく!」
「くっ···この状態を1時間ですか···」
「お前騎士王だろ、それくらい我慢しろ」
ピンポーン
来た!
「頼んだからな!これ終わったらステーキ食わせてやるから」
アーサーが急にやる気になった。
よしっ!

「いらっしゃーい」
玄関の扉を開けて友達を迎える。
「この前さ──」
「まじー?」
リビングへと向かいながら談笑する。
「ってか、この鎧何?」
やっぱり気になりますよね!
「あっ!?コレ!?置物!カッコイイっしょ!」
なんか焦ってきた、手汗がすごい。
「へぇー、この剣すごいな」
友達が剣を引き抜こうとする。
ガチッ

「サワルナ」

鎧が、喋った。
「ねぇ!この鎧今喋ったよ!聞こえたよね!ねぇ!」
「えっ!?なんの事!聞こえなかったけど!」
コイツ!少し動くどころか喋りやがった!
友達が恐る恐るそぉーっと頭の鎧を取ろうとする。
「あっ、ちょまっ!」

「フレルナ」

また、喋った。
「ねぇ!聞いたでしょ!喋ったよ!」
「知らない!聞こえねぇよ!聞こえねぇっつってんだろ!」
何だかキレ気味になってしまった。
その後、鎧に恐怖した友達は早足で帰って行った。その背中を見て思った。
アーサーの今日のご飯は白湯だ。

「主、この汁は何ですか」
アーサーがぽつりと置かれている1つの茶碗を見ながら言った。
「お前の罰だよ、何であの時喋ったんだよ」
「主は動くなとは言いましたが喋るなとは言ってませんでした」
コイツ本当に頭良くなってないか?
「とりあえず、お前の今日の飯はそれだ、っておい!俺のオカズ奪ろうとするな!」

ある革命的なことがあった、それは就寝前の事だった。
「主、仕事が見つかりました」
「本当か!」
これでアーサーには自給自足の精神を育んで欲しい。
「確か、家に滞在して泥棒や金の回収に来る輩を撤退させるアットホームな仕事、と」
え、それって···
「一応、その仕事の名前聞いていいか?」
「にーと、と言うやつです」
「俺稼げる仕事って言った気がするんだが、まずそれって仕事じゃないからな」
アーサーがびっくりした表示で俺を見てきた。
「ですが、親分から食料費などの賃金がタダで手に入るって···」
「お前、俺から何むしり取ろうとしてんだ」
やっぱり、こいつに仕事は無理か···なら義務教育でも受けさせるか、家庭教師でも雇って。
「いや無理だ、うん無理だ」
明日こいつに算数のドリルでもかってきてやろう。
騎士王、初めての学力検査である。







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