俺とアーサー王

しゅん

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9日目「騎士王と三者面談 その1」

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テストが終わって、しばらくたった日。遂にこの日が来てしまった。
「さ···三者面談···」
俺は案内の紙をプルプルさせながら握りしめていた。
「なんだそれ、楽しいのか?」
呑気にランスロットちゃんが聞いてくる。
三者面談はただの話し合いではない、親が含まれる話し合いである。もちろん案内の紙に『お子様の保護者は父と母両方の参加を絶対とします』と書かれている。
中学生までは親がちゃんと来てたり、何も危惧するべきことは無かったのだが、高校生になって親とは家出以降1度も連絡をとっていない。今更来てなんて虫が良すぎる。
「無視するな!人間!」
ランスロットちゃんに叩かれて俺はハッとする。
家の中を見渡す。そこには正座しながらテレビを見てるアーサー、そして俺の方に乗っかっておんぶみたいな形になっているランスロットちゃん。
コイツらを父と母に見立てて、何とかならないかな?
「これはいわゆる地獄への片道切符ってやつだ、しかも必ず乗らなきゃ行けないヤバいやつなんだ」
とりあえず何か策を──
「おおっ!楽しそうだなそれ!」
えっ、
「おい人間、それ私も着ついてく!」
俺は引いていた、確かに妹的な役目としてなら多分大丈夫かもだが、こいつを連れていったらいつボロが出るかわからん。
「はぁ、先生に無理ですって言って何とかならないかなー」
俺が寝転んで家の屋根を見上げる。
「主、お困りですか」
「うおっ!」
結構な至近距離で聞いてきたアーサーに驚く。
「あ、あぁ、親と同伴で話し合うやつがあるんだが俺の親は今いなくてな」
グスングスン、と何か音が聞こえる。まさか···
アーサーが目を指で抑えながら涙を抑えてる。
「アーサー···」
こいつにも人の心があったなんて、そこに感動する。
「え?何ですか主?急に虫が目に飛んできて···」
くそーっ!

1通りアーサーに説明すると、
「ふむ、なるほど···私に任せてください!」
そう言うとアーサーはいそいそと家を出ていった。
「おい、大丈夫かアイツ」
俺とランスロットちゃんはアーサーにバレないようについて行った。

俺とランスロットちゃんは声の届く範囲の電信柱からあたかもストーカーの如くアーサーを監視していた。通り過ぎる人の視線が痛いが仕方ない。
「おいアイツあんなおばさんと知り合ってたか?」
『おの、急ですいませんが主のお母さんになってくれませんか?』
パチンと俺はアーサーの頭をぶっ叩いた。

「主ッ、何故ここに?」
「来て正解だった、お前急になんてこと言ってくれてんだ」
こいつが言ったことは普通に頭おかしい事を言うヤツみたいだ。
もう仕方ないと言うようにアーサーを連れて帰ろうとしたら、
「おーう、ワタルか?んで···あっ、高校の教師をやっております田辺といいます、お父さん」
まさかの先生が登場。
何この都合の良すぎるジャンプ漫画みたいな展開!
あ、俺の名前は一応ワタル、これからの話で出るかは不明。
しかも、この人、アーサーが俺の父に見えたようだ。
まずい、本当にまずい、これじゃあ三者面談にアーサーが来ないと何か言われそうだ。
「はい、うちの主がお世話になっております」
あれっ、こいつ中々礼儀作法がなってるじゃないか。ワンチャンこいつに任せれば──。
「あるじ?まぁワタル、お前早く三者面談の予定の紙出せよ」
そのまま先生は去っていった。
と、思った。
「あれっ、誰この子?ワタルの妹か何かか?」
しれっとランスロットちゃんが先生の後ろにいた。
「おい、地獄の案内人か?私も連れてけ」
あっ、コイツ!
その後ランスロットちゃんと一緒に頭を下げまくった。

「主が困っているというのにどうしたものか···」
家に帰ってアーサーが試行錯誤しているが俺の中では既に答えが出ている。
今日のアーサーの対応を見る限り練習さえ積めば何とかなる。
「なぁアーサー、頼みがあるんだが──」

そして三者面談当日がやってくる。



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