俺とアーサー王

しゅん

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??日「騎士王のさよなら その4」

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まずい···どうしよう···
こういう状況を危機一髪と言うのだろうか。俺は手ぶらで相手は2人がかりに槍を持っている。
「あの···すんません、助けてください···」
「何を戯れ言を!手を挙げて後ろを向け!」
後ろからグサッとかやめてください、怖いんで。

「──じ!主!」
なんか聞き覚えのある、うるさい声が聞こえる。この声の持ち主をはっ倒すためにここに来たのだ。
「アーサー!」
感動の再会!
「なっ、おいどけお前ら!王の言うことが聞けないのか!」
アーサーは2人の騎士に槍で行く手を阻まれている。
「王に騎士以外の接触を禁止する命がありますので···お下がりを」
こんなに不遇な王を今まで見たことがない。
意思の尊重されない王って見てて楽しいなーっじゃなくて、何とかしないと。
「アーサー···」
俺の言おとしたことがアーサーの言葉によって塞がれる。
「今なら、私の命令で主に危害を加えず、帰らせることができます、主、お願いです···」
何だよ、それ。
「せっかくここまでしてお前を助けに来たのに···ランスロットちゃんも反乱を起こしてまで···もう一度聞くがお前はそれでいいのか?それがお前の本心なんだな?」
アーサーの歯からギリッと音が鳴る。
「ランスロット卿も!主も!私なら何とかします!私が···何とか···」
どんどん弱気な声になるアーサーに俺は言った。
「タイム」
騎士とアーサーご「は?」と言うと、俺はすぐさまスマホを取り出し、マップアプリを見る。
──そして、ある操作をして、スマホを耳に当てる。
「あのー、警察ですか?」
アーサーの目が急に丸くなる。
2人の騎士は俺の言っている意味が分からないのか困惑している。
「今、ヤバいやつらに襲われてるんです。位置情報を送るので、今すぐ来てください」
「おい貴様!何してる!」
槍の騎士が俺の肩をガシッと強めに掴んだ。
「あっ、今肩を掴まれて、尋問されてます!もう苦しいです、早く!」
そしてスマホから声が流れる。
「大丈夫ですか!?分かりました、直ちに隊員を!」
そして電話が切れた。
「おい···私は尋問なぞ···」
「あー!そうやって罪から逃れようとしてんの?騎士が?恥ずかしいー!」
俺は手で口を抑えながら煽る。
「なっ···!貴様ァー!」
あ、やばい、言いすぎた!。
騎士は槍ではなく手で殴りかかってくる。
俺は咄嗟に目をつぶると──!

「待って」

またどこかで聞いたことのある声が。
「君に頼みがあるんだ」
透き通ったイケメンの声。そう、ガウェイン卿である。
そのガウェイン卿が騎士の殴り掛かる手を止めたのだ。
本当のイケメンじゃないすか···
「ここじゃあ、言い難い···こっちに来てくれないかい?」
え?ホラー映画始まったんだけど。

今路地裏にいるのは、俺とガウェイン卿の2人きり。
アーサーはさっきの所で槍の騎士に取り押さえりている。
しかし···
「あの、頼みとは?」
やっぱり、アーサーを連れていくのやめて、とか、···死ねとか···?
やだ、怖すぎ。想像するだけでチビりそう。
俺は静かにガウェイン卿の返事を待つ。
そして返事が返ってくる。

「···君は──」

あれから色々あった。
まず警察が来なかった。
そりゃ、大人だもの、穢れてたって仕方ない。
後はアーサーの自由が宣言された。これでキャメロットに帰ることや、アヴァロンに行く必要が無くなった。というか、何人かを除いてはアヴァロンに行くようだ。
後、1番大切なのが──

「アーサー王!何ですか!その自堕落な姿は!」
──家族が増えた。
みんな知ってるイケメン、ガウェイン卿である。
あの時、ガウェイン卿があんなこと言ったからだ。

『──君は、そんなにアーサー王のことが好きなのかい?』
『一応だけど、アーサー王は会議の途中に君の家まで抜け出す程のナマケモノなので、会議、というか政治は僕が担っているんだ。』
『俄然、君に興味が湧いた』
『アーサー王の惚れたその生活、僕も送ってみたいな』
『···君たちの勝ちだ』

もう1つのちゃぶ台では足りないほどの人数、食事になってしまった。
「はぁー···」
感謝しかないけど···少しうるさくなったなー···。
「美味しそうですね!いただきます!」
ガウェイン卿がそう笑顔で言って、フライングディナーしている。
それに合わせ、俺、アーサー、ランスロットちゃんが手を合わせ、
「「「いただきます」」」
この生活がずっと続きますように、なぜなら──

──あんな事、もう2度としたくないからに決まってる。
そう思いながら、夜飯を口に運んだ。



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