俺とアーサー王

しゅん

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14日目「騎士王と旅行 その1」

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「主、見てください」
そう言って、アーサーは俺に紙切れを見せてきた。
「あ?江ノ島旅行券?···おい、何また勝手に応募してんだ、しかも当たってるし」
何故コイツはポンポン応募するのだろう。そしてなぜか当選する。それが少し癪に障る。
「行かないからな、我慢しろ、っておい何荷造りもう終えてんの?」
俺の向く方向にはアーサー、ランスロットちゃん、ガウェイン卿がまるでハワイに行くかの如く格好で並んでいた。

「「「オエエエエエッ!」」」
大胆に綺麗な海にストライクしているアーサー、ランスロットちゃん、ガウェイン卿の3人。
「な、何ですかコレは···なんて力ッ!オロロロロ!」
「アーサー王、喋らない方がオロロロロ!」
「わっ、私はもうだいじょオロロロロ!」
なんか三文漫才を見ている感じだ。もちろん俺は酔い止めを飲んだのでノーダメージだ。
飛んでいるカモメを見ながら1人耽る。
「···何してんだろ、俺」

「着いたー!」
「い、生きてる···」
着いたのは、正直言ってボロいがデカい旅館。俗に言う幽霊屋敷である。
「やっぱ帰りたい」
「主、ここまで来て帰るのですか」
否定的な俺の意見に反対してくるガウェイン卿。

中に入り、チェックインをする。
「あーごめんねぇ、今日は団体様も来てるから、少し騒がしくなるかもだねぇ」
眼鏡をかけた老婆がそんな事を言ってくる。
「騒がれたら屋根抜けたりして俺ら死ぬやん」
「主、女将さんの前でそんなことを言うのですか」
俺とアーサーのやり取りを女将がニコニコしながら見ていた。

「小さい部屋だな、おい」
俺の率直な感想にランスロットちゃんが引く。
「主はそういう所が欠けとるよなぁ」
「んじゃ、俺はご飯まで寝るから、適当に起こしてくれ」
「では僕はこの旅館を回ってみましょうか」
「私は菓子が食いたい!」
「私は主の介護を」
そうやって、各々することを決める。
「おいアーサー、そういう言い方すると俺がジジイみたいじゃねぇか」

「──るじ、主!」
はっと俺は目を覚ます。起こしたのはアーサーだった。もうご飯の時間なのか。
「もうご飯か」
そう言ってダルそうに体を起こそうとした時、ランスロットちゃんがもう寝てるのが見えた。
「あ、ご飯はもう食いました、主」
「え?」
机の上を見ると2人分の食事が。
コイツ、我慢できずに食ったのか。まぁ寝てた俺が悪いんだが。
そして食事の近くに座り込むと···
「おいアーサー、俺のやつちょっと食っただろ」
魚の刺身の量が異様に少ない。
「それより、大変な事が」
「おいコラ、話逸らすな」

「ガウェイン卿が出たっきり帰っきてません」
「俺の刺身返せ」
声が重なった。

「え?ガウェイン卿が帰ってきてない?」
俺がアーサーに下の売店で買ってきてもらった刺身を食いながら聞いた。
「えぇ、というかさっきから言ってるのですが」
「俺は過去の事は思い返さないやつだ、で探したの?」
「はい、ですがどこにも···」
俺が最後の刺身を口に入れると。
「大丈夫だよ、寝る時間までには帰ってくるよ、もし帰りの便に来なかったら置いてくしな」
アーサーがゴミの様な目で見てくる。
···だって、俺悪くなくない?

結局、ガウェイン卿は寝る時間になっても帰ってこなかった。残ったガウェイン卿の分のご飯は俺とアーサーで分けて食べた。

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