箱入りの魔法使い

しゅん

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陥落

澄んだ

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「入った時間は零時、一秒を360秒に...あれ1時だっけ...」

何回死んだだろう、アイロニーの付与魔法を持ってさえハチには敵わないのだ。

別にアイロニーのこの力が弱い訳では無い。
基礎的な能力向上に加え、空気中の魔力を自動で吸い取ってくれる力もある。

長期戦で重宝されるだろう力だ。

しかし今は短期戦、一对一の無限デスマッチ。
それに精神世界は魔力が減らないから意味無し。

「ナンドタチアガッテモムダダ、オレノチカラヲカスコトナドナイ」

「いや何度でも立ち上がるさ、お前は僕の所有物だからだ」

その所有物という言葉がかなり屈辱なのだろう。

ハチを取り巻く嵐は激しさを増した。

「チョウシニノルナヨ、ニンゲンゴトキガ!」

その嵐はハチを巻き込み地面を削る勢いだ。

あまりの強さに体が持ってかれそうになる。

嵐が止んで前を見るとそこには一人の少年がいた。

「えっ...あれっ」

いやその少年を僕は知っている。

けど思い出せない。

頭が痛い。

「君は誰だ」

「これが俺の本当の姿だ、なれるようになったのは最近だがな」

「ハチ...?いやそんなはずは」

その少年は嵐を起こし始めた。

あの魔法はハチの物だ。

あの少年はハチなのだろう。

だが違う、中身はハチでも僕はその外見に見覚えがある。

「思い出せない」

嵐が襲ってくる。

「お前はハチだろうけど違う、その体、その見た目、本当は誰なんだ...?」

こんな時にがあれば...!

その時握った手の中が光った。

「これは...!」

それはこの前の特訓の時にナツさんから貰ったカプセルだ。

確か力はその対象の本心と話せるだったっけ。

さっきからハチも今のハチである少年も全く近づかせてくれない。

「関係ない、こんな嵐、慣れっこだ!」

───

「なんだ、何を企んでる」

避ける訳でもなく、ただ進んでくる。

ズキッ。

「頭痛...この俺が?」

何だ、この姿にした瞬間から体に不調がある。

頭痛は次第に増していった。

「くそっ、くそっ!」

そしてその場に四つん這いになった。

しかし魔法は止めない、止めたら奴が向かってくるからだ。

「関係ない、こんな嵐、慣れっこだ!」

その言葉に聞き覚えがあった。

「これは...記憶か...?俺の忘れていた記憶」

俺は過去に何があったんだ...?



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