箱入りの魔法使い

しゅん

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陥落

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「彼だけじゃない...僕にとってはみんなイレギュラーさ」

僕はもう取り返しのつかないところまで来てしまった。

僕がこの世界の人々に新たな知識の入口を与えたのは確かだ。

「...一旦帰るか、ハルが待ってる」

そう言って僕は帰路に立った。

「...ありがとう」

何故彼は人にあんなことを言えたのだろう。

───

「タイタリク殿は確かにあなたの弟だ、私たちの無駄な知識欲求により彼をあなたの中に封印するという形になってしまった」

そしてカイブは深々と頭を下げて「誠に申し訳ない」と謝罪をした。

「タイタリクはもう外には出られないの?」

「私どもには不可能です」

もし出来たとしてタイタリクはそう望むだろうか。

「じゃあ...なんで僕を何も言わず外に出したの?」

もうひとつ、カイブに聞きたかったこと。

今更引きずることでもないが、本当のことを知りたいのだ。

「この過酷な外の世界を、まだあなたに見せたくなかった。こんな場所忘れて新たな自分を探して欲しいと願っていました」

それが本当かどうかなんてその時はどうでもよかった。

「会えて嬉しいよ、元気そうでよかった、カイブ」

これを言っておきたかったのだ。

───

「ただいま戻りました」

王都に帰ってきたのはカチナだ。

カチナは黒子を素通りし王の懐へと向かおうとした。

「どこへ行くのですか?」

「王の場所へ」

「私の報告も通さず謁見ですか」

「何か?」

黒子の攻撃をカチナ...いやククルスは止めた。

「あなた...臭いますよ」

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