箱入りの魔法使い

しゅん

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ジュリ

生き地獄

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「これで、俺も大金持ち...!」

「おいフミヤ、こっちだ」

鍵に夢中になって合流地点を少し通り過ぎていたようだ。

そんな俺を呼び止めたのはネロだ。

ネロもグループの中だと普通の立場なのだが、俺から言わせれば本当にいい先輩という事だ。

「鍵はあるか?」

俺はしまっていた鍵をネロに渡して合流地点へと急いだ。

───

ハッと気づいたようにニィナが口を開いた。

「そういえば今まで戦ったヤツらって全員、出処が一緒な孤児なんだよね」

恩返しか、それとももっと他の理由か。

「それか、もしかしたら孤児の責任者、マザーかもな」

───

あの方、つまりはこのグループを指揮っている者。

マザーならぬファザーだ。

俺たちを大切に育ててくれた唯一の父。

コンクルードさんだ。

「フミヤとネロか、よく戻ってきた。そして例の物は?」

もちろんコンクルードさんは外部の人でバレたら全員退学、なんて有り得るだろう。

だから大学やイベントでは名を伏せている。

ネロははい、と鍵をコンクルードさんに渡した。

それを手に取ってじっくりと見たコンクルードさんはワナワナと震えた。

「これは本物じゃない!土と石で作られた偽物だ!」

───

「リッカ、お前が俺たちを信じてくれて良かったよ。鍵なら俺が持っている」

「なっ!?」

そこには無くなっていたはずの純金の光を放つ鍵があった。

「俺とニィナでお前を試した。まだ、人の心があったんだな」

そういうことだったのか。

僕は途端に辛くなった。

僕は何をしようとしていたんだ。最後にもこいつらを裏切ろうと...。

「まだ最終日まで二日ある。それまで耐えるぞ」

ここからがラストスパートだ。

「ああ!」
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