箱入りの魔法使い

しゅん

文字の大きさ
上 下
111 / 193
ジュリ

風梨

しおりを挟む
「こ、これで俺は最強!」

こんなに綺麗にアイツらから鍵を盗れるなんて思ってもいなかった。

そう、ネロには裏切られた、という設定で見事にリッカ達のチームに紛れられた。

その間のドラコやハリスも見事な演技だった。

ドラコのは完全に事故だが。

「これであの方にも褒めてもらえる!」

───

「この広い山の中のあるひとつのチームを見つけるなんて無理だ。時間があっても気が持たない」

何故だ、何故フミヤのマークを外していたのだろう。

多分あいつの固有魔法は音を消したりするものだろうか。

いやそれ以前に信用しきっていてしまった。

ここに来て全てをひっくり返された。

相手の方が完全に上手なのだ。

「おいリッカ、おい!」

ジャックが僕を抑えるように言ってきた。

「大丈夫だ、いいか俺たちはここで山を下りる。俺とニィナは、だ」

「何を言っているんだ、あと少しだ、手の届くところにゴールがあるのに。ここで諦めるのか!?」

「俺はこれ以上何も言わない。俺たちと一緒に山を下りるか、お前一人で山に残るか決めろ」

なんだ、ここで下りたら何も残せない。
結果も何も付いてこない。

落ち着け、少し感情的になってるのは僕だ。

そう、ナツさんならどうする、ナツさんなら──

「...一緒に山を下りる」

ナツさんなら最後に自分のやりたい事をやる筈だ──。

しおりを挟む

処理中です...