箱入りの魔法使い

しゅん

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ジュリ

愛だ

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俺、ジャックには家がない。

魔族の子供として生まれたが人間の食べ物を食べすぎたせいで容姿が人間の方に傾いた。

ナツに誘われて、嘘をつかれて、そしてひとつの目標、リッカと本気で戦うこと。

そんなことを考えてると、何も出来ない。

今まではナツに食べ物を分けてもらっていたが、今はゴミ箱を漁る日々。錬金ができるので食料さえ見つかれば料理はプロレベルである。

白米が見つかった時は焼肉屋の換気扇の前で食べることで焼肉屋の気分を無料で味わえる。

そんな俺にご褒美が出た。

実実習の際に見つけた鍵を講師に渡したところ、俺たちは売った時相応の大金と一枚の紙を頂いた。

紙はリッカが持ってるが、金は山分けだ。

俺には有り余るほどの大金、コレさえあれば家は買えるし、食べ物はほとんどが新鮮で安全。

あわよくばおもちゃも買える。

「そういえばあいつは誰だったんだ」

森で大量出血した時、助けてくれたあのフードの男。

ナツでは無い、魔族のような感じもしなかった。

だがなんだろう、知ってる気がする魔力だった。

とりあえずもう終わった事だ、と割り切って今日の予定を立てる。

まずは宿を借りよう。そしてじっくり考えよう。

貧乏性が出たのかかなり格安の宿を選んでしまった。

その宿で一晩を過ごし、朝起きたら鞄に入れて大量の金は鞄ごと無くなっていた。

金を払う時に鞄の中身を見られたか。

このだだっ広い街を探すのはもう無理だ。

ポケットに入れていた雀の涙程の金。

「ううっ...うっ」

悲しい。
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