上 下
5 / 77
第一章 異世界での生活

5話 いったん落ち着こう

しおりを挟む
「わわっ、そうだ、僕の上着着て、とりあえず」
 
 私がわんわんと泣き出したため、ジェイミが慌てて着ていたカーディガンを私に被せてくれた。

「ふぇぇ、ありがとう……」
 私はそれにくるまると、なんとか腰の少し下まで身体を隠すことができた。

 そのため、そのままレオンの膝から降りて彼の隣へと座る。
 すると、レオンははぁっと脱力し、ジャンは私が彼とは反対の方へ移動したため「そっち行っちゃうのかよぉ……」と残念がっていた。

「ちょっと、みんないったん落ち着こう。とりあえずこの子の話聞かないと」
 と、ジェイミ。

「ま、そだな。お前らいつまで気絶してんだよこのむっつり野郎!」
 
 ジャンがそう言って倒れている二人を蹴飛ばすと、二人は「うーん……」と意識を取り戻した。

 そして、エルフのイケメンが興味津々に私の身体を眺めてくる。
「猫が一瞬で人の姿に……とても興味深いな。それも耳は残したままなのか」

「へ? あ、本当だ……」

 私は袖に手を通して頭を触ってみると、頭に猫耳がついていることが分かった。
 人間の耳の部分には何もなく、これは正真正銘私の耳なんだと感じる。

 犬の耳のついているジェイミのようだ。ってことは……。

 私は彼にもふもふの尻尾がついていることに気付いたため、自分もお尻の辺りを触ってみると、案の定細長くもふもふの尻尾がついていた。

「もー、クロード。一応服着せたけどちゃんとは着てないんだから、そんなジロジロ見ないで。ジャンみたいなスケベだと思われちゃうよ」
 と、ジェイミ。

「む、そうか。それはすまなかったな“シュヴァルツ”よ」
 クロードと呼ばれたエルフのイケメンは素直にスッと引き下がった……が。

「私はシュヴァルツじゃありません!」
 私は不服だった。

「俺もスケベとは侵害だな。俺は自分の気持ちに正直に生きてるだけなんだよ。な、もふ子」
 どうやらジャンも不服のようだ。

「もふ子でもないぃぃぃ!」

「もー、話が進まないからみんな変な名前で呼ばないで!」

 ジェイミが怒ると、私以外の全員が声を揃えてこう一刀両断した。

「お前が名付けろって言ったんだろうが!」

「えへへ……そ、そうだった……はぁ」
 ジェイミはシュンと項垂うなだれた。

 唯一話を進めようとしている彼が脱落し、私たちは全然落ち着くことができなかった。



しおりを挟む

処理中です...