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第二章 乱召喚と恋する白魔道士

36話 頼りになる彼

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 レオンと歩く時はそんなにたくさん会話がある訳じゃないけど、なぜか全然苦にならなくて、彼の隣は居心地が良い。

 前まで隣に並ぶと恥ずかしくて気まずくて、そんな感じだったのに、今ではもう普通に並んで歩けるようになった。

 そして、問題の路地の側を通りかかる。
「どんなに時間をずらしても、いつもあの通りから同じ人が出てくるんだよ」
「ん」
 レオンはそう短く返事をし、そちらを見向きもしない。あれレオン、興味ない? さっきまであんなに心配してくれてたのに。

 そう思っていると、やはり今日も少し遅くなったはずなのに、いつものように同じ人が路地裏から現れた。
 そして人混みに紛れながら私たちの斜め後ろあたりにピタリと張り付く。

「こいつだな?」
 レオンがコソッと耳打ちしてくる。
「え? レオンどこに目、ついてるの!?」
 私はトーンを抑えてそう返す。すると、彼はふっと吹き出した。
「目は顔にしかついてねぇ」
 当たり前のことを答えてくる。

「嘘だよぉ……」
 だって全然見向きもしなかったのに、斜め後ろに張り付かれた瞬間そう言ってくるんだもん。

「フードを深くかぶって顔を隠してるあたり、お前の勘違いではなさそうだな」
「やっぱり後ろにも目、ついてるでしょ……?」

「お前なぁ、俺の目とストーカー野郎とどっちが重要なんだよ」
「俺の目……」
 私が申し訳なさそうにそう返すと、レオンは再び吹き出し「そうかよ」と言って微笑んでいた。

 そのまま訓練所へと到着し、レオンにお礼を言って建物の中へと入り、彼と別れた。
 また、終わる頃迎えに来てくれるって。きゃー、幸せー!

⸺⸺

 アロイス先生の教え方はすごく上手で、私は今日初めて白魔法を唱えて見事に発動することが出来た。
 後はこれをスムーズに発動できるようになって、今は初級魔法だけど、中級、上級と発動できるようになれば卒業だ。
 2回目くらいの訓練から既に他の先輩生徒の人たちと一緒に訓練をしており、今日も50人くらいで整列をして、アロイス先生の最後のお話を聞いていた。

「それでは本日の訓練はこれで終了となります。皆さんお疲れ様でした」
「ありがとうございました!」
 みんなで一斉に礼をする。すると、このタイミングでカランコロンとベルを鳴らしながらレオンが訓練所へと入ってきた。

 レオン、タイミング良すぎでは? ってか、外で待ってるんじゃなくて、中まで入ってくるんだ……。
 そう思っていると、受付のお姉さんの制止も無視して、レオンが私の方へと歩いてくる。

「おや、あなたは……」
 と、アロイス先生。他の生徒も一斉にレオンに注目する。
「すみません、私のお迎えなんですけど……」
 私は小さな声でアロイス先生へそう断りを入れる。

「さくらさんの、そうでしたか……こんにちは」
 アロイス先生がそうレオンに話しかけると、彼はチラッと先生に視線を送り軽く会釈をして、私とアロイス先生の前を素通りしていった。

 あれ!? 素通りされましたけど!?

 レオンは一番端に並んでいた男性生徒の胸ぐらをグッと掴み、そのまま床に乱暴に叩きつけ馬乗りになった。
「ぐはっ! ひぃぃっ!」

「レオン!? 何してるの!?」
「あわわわ……」
 私もアロイス先生も慌てて止めに入ろうとし、他の生徒も驚いてみんな後ずさる。

 すると、レオンは今までに聞いたこともないくらいに低い声でこう唸った。
「てめぇだな。さくらのストーカーは」
「ひぃぃぃっ……ごめんなさい……」

「えっ!?」
 周りが一気に騒がしくなる中、私は目をパチクリとさせて唖然としていた。

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