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第二章 乱召喚と恋する白魔道士

40話 白魔道士

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⸺⸺魔導訓練所⸺⸺

「ではさくらさん、卒業課題の上級単体白魔法をお願いします」
「はい、アロイス先生!」

 私は1歩前に出て“魔法感知人形”と向かい合い、魔法杖を地面に突き立てる。その瞬間私の足元に白い光の魔法陣が描かれる。

⸺⸺上級単体白魔法⸺⸺

「セラフィア!」
 強い光が魔法感知人形を包み込み、人形は全体が緑色に変化した。

「さくらさんお見事です。文句なしの合格ですよ」
 アロイス先生はそう言って拍手を送ってくれた。
「やったぁ! ありがとうございます!」

 私はプロの白魔道士の資格を得て、白魔法を使うのに必要な“白の腕輪”を先生から卒業記念にもらった。

 魔法杖は訓練所から借りている物だったため、卒業したことを黒狼のみんなへ報告すると、翌日は全員クラン活動をお休みして、魔法杖を買いに連れてってくれた。
 すごい高価な物だったけど、クランサポートに必要なものだとして経費で落としてもらえてしまった。

 しかもクラン活動費をよく見てみると、私の訓練所の授業料までいつの間にか経費落としになっており、レオンがこっそり支払い方法を変更してくれていたことも分かった。

⸺⸺

 訓練所も卒業したし、私は正式に白魔道士として魔物のハントやクエストにも同行するようにもなった。
 全員と同行して、それぞれの活動スタイルが明らかとなる。

 レオン、ジェイミ、ジャン、クロードはほとんど魔物のハントで実績を積んでいる“戦闘タイプ”だ。
 たまにクエストを受けたと思っても、絶対に魔物討伐系、若しくは賊を懲らしめる系の戦闘クエストで、この4人はオフの日以外はひたすら戦闘をしている。戦闘狂だ。

 一方でリュカとルシオはたまに戦闘もするけど、ほとんどが非戦闘クエストであり、2人とも「戦うのは得意じゃない」と、言っていた。
 ルシオは料理系、リュカは芸術系にセンスが飛び抜けており、クエストもそういう依頼をこなしている。

 みんなそれぞれが自分に合ったスタイルで伸び伸びとクラン活動をしており、毎日が楽しくてこんな時がずっと続けばいいと私は思っている。
 しかし、みんなレオンやクロードの様にそれぞれお家に何か事情を抱えてこのブライリアント王国へ逃げてきている。
 私はこれからそのお家騒動へ順番に巻き込まれていくことになるが、この時の私はそんなこと全く想像も出来なかった。

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