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第四章 幸せの形

64話 誰のお父さん?

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 みんなで談笑をしていると、ドワーフ族のおじさんがルシオに連れられてVIPルームへと入ってきた。

「これはこれは皆さんお揃いで。遅くなってしまいました」
 ドワーフ族……身長は1mもないくらいの小人さんで、とても優しそうな顔のおじさんだった。

 ん? ドワーフ族なんて……黒狼の牙には居ないんだけど、誰のお父さん?
 このVIPルームに入ってくるくらいだから、きっと誰かのお父さんで、どこかの国の王様なんだと思うけど……。

 すると、マルクス様の発した一言に黒狼の牙の全員がど肝を抜かれることとなる。
「おー、やっと来ましたか、バルツァー連邦代表。待ってましたよ」
 と、マルクス様。

「え!? ちょっと待って、バルツァー連邦代表って……レオンの国の王様のトップで……」
 私が目を真ん丸にしてそう言いかけると、マルクス様が続きを話してくれた。
「そ、レオンのお父上だ」

「えーっ!?」
 みんなひっくり返る勢いで驚きをあらわにする。
「レオンのお父さんってドワーフだったの!?」
 そんな私の反応を見てか、レオンはバンッと机を叩いて立ち上がり、自分のお父さんをキッと睨みつけた。

「クソ親父てめぇ何しに来たんだよ!? 俺はぜってぇ帰らねぇからな!」
 レオンはそう言うと、VIPルームから出ていってしまった。

「あぁ、レオン君……何しにって、自分の可愛い息子があんな活躍した記事を見たら、会いに来たくなっちゃうでしょっ?」
 バルツァー連邦代表はてへっと笑った。この人めちゃくちゃお茶目さんだ!

「あの、お父様初めまして! レオン連れ戻してきます!」
 私もそう言ってレオンの後を追いかける。

⸺⸺

 私が去った後のVIPルームでは。
「おっ、可愛いお耳っ。うん、初めまして……ありゃ、行っちゃいました……」
「はは、ニコラスさん、その子が例の“嫁”ですよ」
 と、マルクス様。

「なんと! あんな可愛らしい子を……レオンも成長しましたな……」
「ニコラス代表と、お呼びすれば良いですかな」
 と、カーサ国王。
「はい、ぜひとも。皆さん申し遅れました、バルツァー連邦国、連邦代表のニコラス・バルツァーと申します。クラン黒狼の牙のリーダー、レオンハルトの父でございます。先ほどは息子がお騒がせをして申し訳ありません。何故なにゆえ反抗期でして、こうして手を焼いている次第であります……」

 それぞれ自己紹介をし、ニコラス代表はすぐにVIPルームのみんなと打ち解けていた。
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