【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか

文字の大きさ
15 / 69
第一章 鬼の国へ

15話 極楽の湯

⸺⸺アカツキ城⸺⸺

 僕たちはそのまま、日本の昔のお城とそっくりの外観のお城へと招待された。
 みんな服がびっしょびしょになってしまったので、一旦お城の温泉で疲れを癒やすことに。

⸺⸺男湯⸺⸺

 グレン、シノノメ、フウガと共に湯に浸かる。まさかこの世界で温泉に入れる日が来るとは。
 鹿威ししおどしが時折カコーンと鳴る風流な空間で、シノノメが口を開いた。
「フィル殿。自己紹介が遅れた、私は暁東雲あかつきしののめ、この国を治める将軍家の長男だ」
「あっ、僕はエリージュ王国のガーネット領主の息子、フィル・ガーネットです。将軍家の長男って事は……若様ってこと?」
 お湯に浸かりながらペコリと自己紹介。
「はい、みんな若様って呼んでますよ!」
 そう答えてくれたのは、フウガだ。
「フウガさんは、えっと……」
「そんな“さん”なんて、やめて下さい。あの、俺も……良かったら姫様みたいに愛称を……!」
 フウガはそう言ってキラキラ光線を飛ばしてくる。なんか元気で従順なわんこに懐かれた気分だ。
「ふうちゃ?」
「ありがたき幸せ!」
 フウガはそのままブクブクと温泉に沈んでいった。第一印象はクールな忍者だったのに、話してみると少年心を忘れないピュアで明るい青年だ。

 シノノメは小さくため息をついて、補足のために再び口を開いてくれた。
露草風牙つゆくさふうがだ。雷花らいかは双子の妹で、2人はスズの私兵だ。まだ20歳にも満たないが、露草家に代々伝わる忍者の戦闘術で立派にスズランを支えてくれている」
「わぁ、忍者、かっこいい……」
 僕がそう呟くと、フウガのブクブクが更に激しくなった。「生きてて良かった」的な言葉が水中から聞こえてくる。

「それでフィル殿。君らはどうしてこのアカツキの都に?」
 と、シノノメ。
「あのね、ぐれちゃの刀がボロボロになっちゃったから、新しい刀を手に入れるためと、後は、騎士団の仲間探しだよ」
「刀がボロボロに……? グレン貴様、おめおめアサ爺に殺されに帰ってきたのか」
「いや、そこなんだよ。なんとかこの国の英雄フィル様を盾にしてしのげねぇかって思ってる」
 グレンはそう言って頭を掻く。
「貴様、とんでもなく最低な事を言っている自覚はあるのか……?」
「そーだぞ、フィル様に謝れグレ兄!」
 ザバンッと唐突にお湯から噴き出てくるフウガ。
「わりぃ、んなこたぁ分かってる。マジで頼むわフィル。この通りだ」
 グレンは顔の前でパンと両手を合わせてそう言った。
「うん、僕いいよ、それで。ぐれちゃの刀を打ってくれた刀匠さんが、ちょっと気難しいお爺ちゃんって事でしょ? ぐれちゃはガーネット領の村を一緒に守ってくれたし、今回刀を手に入れたいのだって僕の騎士団の戦力になってくれるためだから。僕に出来ることならするよ、僕からそのアサ爺って人に事情を説明すればいいんでしょ?」
 僕は素直に自分の気持ちを伝えた。
「フィル~! 心の友よ~!」
「フィル殿……こんなに幼いのになんと出来たお方か……。ところで、その騎士団と言うのは?」

 僕はシノノメとフウガにエリージュ王国の騎士団の説明をした。各領内で1つまで作れること。基本的にエリージュ王国は領内の治安は領内で守ること。
 お父様が僕の生まれる前に大怪我をして、当時の騎士団は解散。それからはずっと隣のシルバ領に防衛費を払って魔物の討伐をしてもらってるけど、最近は魔物も活性化してきた事もあり、その討伐が追いついていないこと。
 などなど、僕が騎士団を立ち上げようと思った理由と、そのための条件も語った。

⸺⸺

「ふむ。それで自領を守るために5歳の子が立ち上がるとは……。しかし、フィル殿のあの実力なら軍の長として申し分ないし、グレンがついていこうと決めたのにも頷ける。よし、この国の英雄の困り事だ。我が軍の中で誰かフィル殿の騎士団へ移籍してくれる者がいないか聞いてみよう」
 と、シノノメ。
「えっ、良いの!? やったー、これで騎士団が結成出来るよ! ありがとう若様!」
「本当は私が行ってやりたいのだが、なんせ将来国を治めねばならぬ立場だ、すまないな……」
「うん、大丈夫だよ。十分助かるよ」

 話もまとまりお湯から上がろうとしたところ、フウガが「俺も……ついて行きたかったなぁ……」と呟いた。
「おい、貴様、スズに仕えている身でありながら……!」
 と、即シノノメに怒られ「わ、分かってます! だから、行くとは言ってませんて!」と慌てて言い訳をしていた。
「ふうちゃ、そうやって言ってくれてありがとね」
「うぅ……フィル様~……」

 しかし、みんなで男湯の脱衣所から廊下に出た瞬間、さっきの話し合いが全部ひっくり返る出来事が起きた。
「フィル~、レベッカから聞いたぞ! 何でも騎士団というものを新しく結成したいのじゃが、人数が足りぬのじゃろ?」
 と、待ち構えていたスズランに両肩を掴まれる。
「うん、そうなんだ。でもね、若様が……」
「その騎士団、わらわと“フウライ”の3人も参加させてもらうぞ!」

「……えっ!?」
 驚く男衆。しかし、フウガだけは「いやっほーぅ! 流石姫様!」と飛び跳ねて喜んでいた。

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

追放された悪役令嬢(実は元・最強暗殺者)ですが、辺境の谷を開拓したら大陸一の楽園になったので、今更戻ってこいと言われてもお断りです

黒崎隼人
ファンタジー
元・凄腕暗殺者の私、悪役令嬢イザベラに転生しました。待つのは断罪からの破滅エンド?……上等じゃない。むしろ面倒な王宮から解放される大チャンス! 婚約破棄の慰謝料に、誰もが見捨てた極寒の辺境『忘れられた谷』をせしめて、いざ悠々自適なスローライフへ! 前世の暗殺スキルと現代知識をフル活用し、不毛の地を理想郷へと大改革。特製ポーションに絶品保存食、魔獣素材の最強武具――気づけば、谷は大陸屈指の豊かさを誇る独立領に大変貌!? そんな私の元に現れたのは、後悔と執着に濡れた元婚約者の王太子、私を密かに慕っていた騎士団長、そして「君ごとこの領地をいただく」と宣言する冷徹なはずの溺愛皇帝陛下!? いえ、求めているのは平穏な毎日なので、求婚も国の再建依頼も全部お断りします。これは、面倒事を華麗に排除して、最高の楽園を築き上げる、元・暗殺者な悪役令嬢の物語。静かで徹底的な「ざまぁ」を添えて、お見せしましょう。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。