巻き込まれ幼女召喚〜無人島を拠点に自由気ままな異世界ライフ〜

るあか@12/10書籍刊行

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第一章 私たちだけの島

2話 ここはどこ、私は幼女

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⸺⸺名も無き島⸺⸺

あるじ、起きてくださいですにゃ。主~!』
「んー……」
 ほっぺを執拗しつようにポムポムポムポムと猫パンチされて、私はようやく意識を取り戻した。

『やっと起きましたにゃ、我が主』
「あっ、ルキちゃんが起こしてくれたんだ……ありがと、って……森?」
 キョロキョロと辺りを見回すと、木やつたがボサボサと生い茂っているだけの森が広がっていた。

 よっこらせと起き上がり、服についた土をパンパンと払う。
 あれ、何か違和感が……手が小さい? 服の丈も短い……?
「あれ!? 私、小さくない!?」
 心なしか声のトーンも幼い気がする……。
『んにゃ。主、あっちに綺麗な泉がありましたにゃ。主のお姿が映ると思いますにゃ』
「そうなの? ありがとうルキちゃん。ってか、ユノで良いよ。主なんてそんな柄じゃないし」
『主がそう言うなら……ユノと呼びますにゃ』
 私はうんと頷くと、ルキちゃんに案内されて泉へと向かった。

⸺⸺泉に映った私は、幼稚園児くらいの見た目になっていた。

「ぬおー!? 何これ、ピチピチのベビーフェイスじゃない! やだ、私、可愛い……あっ! もしかして……」
 私はある事を思い出し、ゆっくりとルキちゃんの方へ顔を向ける。
「あの女神様、最後ヤバイこと言ってたよね?」
『んにゃ。スキルの配置を間違えて、僕たちの転送位置もズレてしまったと言ってましたにゃ』
「つまり、設定とかもごちゃごちゃになっちゃっていたとしたら……私、5歳ってこと?」
 野崎さん、5歳からスタートしたいって言ってたし。
『おそらくそうですにゃ』
「なんかこのピチピチフェイスを体験したら、野崎さんが5歳が良いって希望した理由も分かる気がする……」

 呑気に泉を覗き込んで自分の可愛さに見惚れていると、背後から異様に禍々まがまがしい気配を感じ、勢い良く振り返った。

「グルルル……!」
 よだれをダラダラと垂らし、目が赤黒く光った巨大な黒い狼。
「ぎゃぁぁぁぁーっ!」
 まさか、魔物!?
 あっ、これ私終わったじゃん……。
 さよなら、私の短かった第二の人生。社長に嫁いで寿退社とか嘘ついたからバチが当たったんだ……。

 諦めかけたその時だった。ルキちゃんが私の前にバンッと躍り出て、ぶるぶると身体を震わせる。すると、ルキちゃんから神々こうごうしい光がピカーッと発せられ、その光が巨大な狼を丸々飲み込んでいった。

「くぅ~ん……」
 光が消えるとそこにいた狼は毛が真っ白に染まり、赤黒く光っていた目は透き通ったエメラルドグリーンへと変わり、尻尾をブンブンと振りながら嬉しそうに伏せをしていた。

「えっ、ルキちゃん何した!?」
『この魔物の“邪気”を浄化しましたにゃ。これでこの魔物が凶暴になることはもうないですにゃ』
 平然と答えるルキちゃん。
「邪気を……浄化……? そんなスキル、さっき出てきたっけ?」
『恐らくですが……“勇者の光”かと……自分の中に聖なる魔力を感じますにゃ』
「えーっ!? それ一番間違えちゃ駄目なやつじゃない!? 野崎さん、大丈夫かな……。聖なる魔力って……ルキちゃん、聖獣になったのかな……」
『この魔物もその意味では僕と同じ魔力が宿ったため、聖獣になったのですにゃ』
「そっか……じゃぁ、とりあえず魔物を見つけたら浄化、よろしくね」
 バトルなんて物騒だから極力したくないし。
『はいですにゃ。きっとこうすれば魔物も寄って来ませんにゃ』
 ルキちゃんは自身を中心に足元に光の陣を出現させた。
「まさか、結界的な……?」
『多分、ですにゃ』
 ルキちゃんすごくない? もう勇者の力色々使いこなしてるし……。

「よし、じゃぁまずここがどこなのか確かめよう。近くに村とかがあるかもしれないし」
『はいですにゃ』
「がう、がう」
 私とルキちゃんがトボトボと歩き出すと、白狼も尻尾を振りながら付いてきた。まぁ、もう暴れたりもしないだろうからいいか……。

⸺⸺

 私たちはしばらく歩き続けた。しかし、行けども行けども森の風景が終わらない。それに、5歳の身体だからか疲れて足がクタクタになってしまった。
「あーん、疲れたぁ……お腹も空いてきたし……」
 その場にしゃがみ込む。
『ユノ、ちょっと休憩しますかにゃ?』
「うん、そうだね……あっ、そうだ」
 私はくるっと振り返り、狼を見上げた。
「くぅ~ん、はっ、はっ、はっ♪」
 尻尾をぶんぶんと振って、なんだか嬉しそうだ。邪気とか言うのから解放されて気分が良いんだろうか。
「あなた、背中に乗せてくれない?」
「わぉ~ん♪」
 狼はサッと伏せをした。乗っても良いって事だね。
「ありがとう、お邪魔します!」
 もふもふな背中をよいしょ、うんしょっとよじ登り、背中にボフッと埋まる。うーん、幸せ。
『僕も失礼しますにゃ』
 ルキちゃんも乗ったところで狼は立ち上がり、私が「真っ直ぐ進めー!」と言うと勢い良く走り出した。

「わぁーっ、すごい、はやーい♪」
『快適ですにゃ~』
 年甲斐としがいもなくルキちゃんとはしゃぐ私。あっ、でも私、今5歳だから別に良いんだ。

 ぐんぐん進む狼。森を抜けると砂浜が広がり、その先には広大な大海原が広がっていた。
「あれ、行き止まり……? ここが端っこかぁ」
 ここに来るまでの間、村とか人の気配も一切なかった。
 もしかしてここ⸺⸺無人島?
 そんな考えが、私の脳裏によぎった。
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