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第三章 和の食材と常夏の島
50話 きのこ大好きこぐま君
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⸺⸺こぐま農園⸺⸺
トキさんに付いて行き、辿り着いたのは『こぐま農園』という看板の立っている田んぼだった。
田んぼの奥には小さな木造の小屋と家畜のいる小屋があり、更にその奥には畑が広がっていた。
「すごい! お店のお料理って、全部自家製の食材を使っているんですか?」
私が興奮気味にそう尋ねると、トキさんは「んだ」と頷いた。
「鮎だけは近くの川に釣りに行っとるだけどねぇ」
「それでも、すごいです! あの、ちょっと気になってるんですけど……なんで“こぐま”なんですか?」
トキさんは「あっはっは」と笑ってこう続けた。
「あの小屋行ってみたら分かるべ」
「……なるほど?」
私たちはトキさんの後を追い、小さな木造の小屋へとやって来た。
「こぐまちゃん、入るべよ~」
「がう、がう♪」
その小屋の中に居たのは、ぬいぐるみと見間違えそうなほど、もふもふでコロンとした熊の赤ちゃんだった。
きのこの付いた丸太に囲まれて、大きな瓶を抱き締めている。
そしてなぜかきのこに味噌を付けてちゅぱちゅぱとしゃぶっていた。斬新な光景だ。
「え~っ! 熊の赤ちゃん!? か、可愛い……!」
『ユノ、あやつは“マッシュベビィベア”と言う魔物じゃ』
と、長老。
「魔物!? あんな可愛い赤ちゃんが魔物なの!?」
「おんや、よく分かっただね」
と、トキさん。
「あれ、でも、待って……魔物だったら、邪気に支配されているんじゃ……」
「あの黒い煙みたいなやつか? この子たちはきのこが好きなもんでな、森で根気よくきのこで餌付けをすれば黒い煙がなくなって懐いてくれるようになるだよ。ウチだけじゃねぇべ。大豆の加工品を売っとる店でも同じように捕まえて飼っとるだよ」
「なんと……」
恐るべしウズメ村の住人……。自力で邪気を浄化してしまうとは……。
「ほんでこの子はな、多少時間はかかるけどきのこを育ててくれて、その横で大豆も発酵してくれるもんで、味噌や醤油なんかはこの子の手作りだべさ。他にも鰹節を作るのも助けてくれてなぁ、アメノカク諸島では“一家に一熊”なんて言葉があるくらいだべさ。この辺じゃ、北の森に野生のこぐまちゃんがたぁくさんいるべよ」
「お利口さん過ぎる……」
「がう、がう♪」
こぐまちゃんは嬉しそうに手足をじたばたしていた。
「ほんで、稲と大豆だったなぁ。どんくらい持っていくかね、今から収穫してくるだよ」
「ありがとうございます! えっと……」
チラッとラフちゃんを見ると、ラフちゃんは『3つずつくらいあればすぐにたくさん増やせると思います』とフォローをしてくれた。
「3つずつください」
「3つ!? そんなんでええだか!?」
トキさんは目をぱちくりとさせて唖然とした。
「はい、このこぐまちゃんみたいに、ラフちゃんは植物を育てるのが上手なんです。だから3つずつで良いって言ってます」
「そうだべか! ラフちゃんもお利口さんだべな。そう言う事ならすぐに取ってくるべ」
『ウチも手伝います!』
「あっ、ラフちゃんに収穫の仕方を教えてあげてください!」
私が慌ててそう付け足すと、トキさんは「そうだべな。んだば付いておいで」と、手招きをしてくれた。
「キュゥ♪」
ラフちゃんは上機嫌でトキさんと田んぼの方へと向かっていった。
『ユノ、僕は今のうちに北の森へこぐまちゃんをスカウトして来ますにゃ』
と、ルキちゃん。
「えっ、本当!?」
『ウルと行ってきたらすぐですにゃ。ユノは名前考えておいてくださいにゃ♪』
『ルキちゃん、北の森に冒険だね♪』
ウルは小屋から出ると、ボンッと巨大化してルキちゃんを背中に埋めて北へと走り去っていった。
「あらま、なんだか立派になっちゃって……。ねぇ、長老、ラフちゃんもこのこぐまちゃんもスキルを持っているの?」
私はこれを機に気になっていた質問を長老へと投げかけた。
「ほっほー……」
『ラフちゃんは“植物愛”というスキルを持っておるが、このこぐまちゃんは何も持ってはおらんのう。恐らく、マッシュベビィベア自体にそういう習性があるのじゃろう。ワシの推測じゃが、ルキちゃんが浄化してきた個体をユノが名付けることで、更にその習性が強まりスキルになるのではないじゃろうか』
「なるほど、ラフちゃんの“ドライアド”って言う魔物も元々植物を育てるのが得意だったけど、浄化して名付けたことで“植物愛”って言うスキルにパワーアップしたってことか……。ってことは、その長老の推測が正しければ、ルキちゃんが浄化して連れてくる子熊も、トキさんがさっき言ってた“多少時間はかかる”って言う問題が解決されてそうだね……」
『ワシもユノと同じ考えじゃ。答え合わせを楽しみにするとしよう』
「うん♪」
⸺⸺
しばらくこぐまちゃんを愛でていると、先にトキさんとラフちゃんが戻って来た。
トキさんはラフちゃんに稲と大豆の育て方も丁寧にレクチャーして、更に豆腐の作り方も教えてくれたらしい。ラフちゃんは稲と大豆の束の他に何枚ものメモを握り締めていた。トキさんの優しさに感謝だ。
その後、ルキちゃんとウルも帰還。こぐまちゃんとほぼ同じ容姿の子熊が巨大ウルに乗っかって「がう、がう♪」と上機嫌にきのこをかじっていた。
トキさんが大きなウルの姿と、子熊をあっという間に手名付けて来てしまった事にびっくり仰天していたため、軽く事情を説明。
トキさんは「諸島の外はヒトも動物もすごいんだべな……」と感心していた。
多分、私たちがイレギュラーなだけで、本当は自力で魔物を浄化して手懐けちゃうここの人たちの方が外の人たちよりすごいんじゃないかとは思うけど……。
「よし、名付けだね。きのこが好きみたいだから、“マシュー”だよ♪」
マシューの身体がほわっと光ると、マシューはがうがう言いながら『ましゅたん、きのこのこのこ、たくさん食べうもんね♪』と嬉しそうにもぞもぞしていた。
その見た目通り赤ちゃんっぽい性格と、自分のことを“ましゅたん”と呼んでしまう可愛さから、私たちも“マシュー”ではなく“ましゅたん”と呼ぶことにした。
『ふむ、ましゅたんはやはり“発酵”というスキルを得たようじゃ』
と、長老。
「おぉ、んじゃ、予想通りだったって事だね。どんなふうにパワーアップしてるか楽しみだなぁ♪」
⸺⸺
とてもたくさんの収穫があったところでウズメ村の人たちに別れを告げて、ウルユ島へと帰還するのであった。
トキさんに付いて行き、辿り着いたのは『こぐま農園』という看板の立っている田んぼだった。
田んぼの奥には小さな木造の小屋と家畜のいる小屋があり、更にその奥には畑が広がっていた。
「すごい! お店のお料理って、全部自家製の食材を使っているんですか?」
私が興奮気味にそう尋ねると、トキさんは「んだ」と頷いた。
「鮎だけは近くの川に釣りに行っとるだけどねぇ」
「それでも、すごいです! あの、ちょっと気になってるんですけど……なんで“こぐま”なんですか?」
トキさんは「あっはっは」と笑ってこう続けた。
「あの小屋行ってみたら分かるべ」
「……なるほど?」
私たちはトキさんの後を追い、小さな木造の小屋へとやって来た。
「こぐまちゃん、入るべよ~」
「がう、がう♪」
その小屋の中に居たのは、ぬいぐるみと見間違えそうなほど、もふもふでコロンとした熊の赤ちゃんだった。
きのこの付いた丸太に囲まれて、大きな瓶を抱き締めている。
そしてなぜかきのこに味噌を付けてちゅぱちゅぱとしゃぶっていた。斬新な光景だ。
「え~っ! 熊の赤ちゃん!? か、可愛い……!」
『ユノ、あやつは“マッシュベビィベア”と言う魔物じゃ』
と、長老。
「魔物!? あんな可愛い赤ちゃんが魔物なの!?」
「おんや、よく分かっただね」
と、トキさん。
「あれ、でも、待って……魔物だったら、邪気に支配されているんじゃ……」
「あの黒い煙みたいなやつか? この子たちはきのこが好きなもんでな、森で根気よくきのこで餌付けをすれば黒い煙がなくなって懐いてくれるようになるだよ。ウチだけじゃねぇべ。大豆の加工品を売っとる店でも同じように捕まえて飼っとるだよ」
「なんと……」
恐るべしウズメ村の住人……。自力で邪気を浄化してしまうとは……。
「ほんでこの子はな、多少時間はかかるけどきのこを育ててくれて、その横で大豆も発酵してくれるもんで、味噌や醤油なんかはこの子の手作りだべさ。他にも鰹節を作るのも助けてくれてなぁ、アメノカク諸島では“一家に一熊”なんて言葉があるくらいだべさ。この辺じゃ、北の森に野生のこぐまちゃんがたぁくさんいるべよ」
「お利口さん過ぎる……」
「がう、がう♪」
こぐまちゃんは嬉しそうに手足をじたばたしていた。
「ほんで、稲と大豆だったなぁ。どんくらい持っていくかね、今から収穫してくるだよ」
「ありがとうございます! えっと……」
チラッとラフちゃんを見ると、ラフちゃんは『3つずつくらいあればすぐにたくさん増やせると思います』とフォローをしてくれた。
「3つずつください」
「3つ!? そんなんでええだか!?」
トキさんは目をぱちくりとさせて唖然とした。
「はい、このこぐまちゃんみたいに、ラフちゃんは植物を育てるのが上手なんです。だから3つずつで良いって言ってます」
「そうだべか! ラフちゃんもお利口さんだべな。そう言う事ならすぐに取ってくるべ」
『ウチも手伝います!』
「あっ、ラフちゃんに収穫の仕方を教えてあげてください!」
私が慌ててそう付け足すと、トキさんは「そうだべな。んだば付いておいで」と、手招きをしてくれた。
「キュゥ♪」
ラフちゃんは上機嫌でトキさんと田んぼの方へと向かっていった。
『ユノ、僕は今のうちに北の森へこぐまちゃんをスカウトして来ますにゃ』
と、ルキちゃん。
「えっ、本当!?」
『ウルと行ってきたらすぐですにゃ。ユノは名前考えておいてくださいにゃ♪』
『ルキちゃん、北の森に冒険だね♪』
ウルは小屋から出ると、ボンッと巨大化してルキちゃんを背中に埋めて北へと走り去っていった。
「あらま、なんだか立派になっちゃって……。ねぇ、長老、ラフちゃんもこのこぐまちゃんもスキルを持っているの?」
私はこれを機に気になっていた質問を長老へと投げかけた。
「ほっほー……」
『ラフちゃんは“植物愛”というスキルを持っておるが、このこぐまちゃんは何も持ってはおらんのう。恐らく、マッシュベビィベア自体にそういう習性があるのじゃろう。ワシの推測じゃが、ルキちゃんが浄化してきた個体をユノが名付けることで、更にその習性が強まりスキルになるのではないじゃろうか』
「なるほど、ラフちゃんの“ドライアド”って言う魔物も元々植物を育てるのが得意だったけど、浄化して名付けたことで“植物愛”って言うスキルにパワーアップしたってことか……。ってことは、その長老の推測が正しければ、ルキちゃんが浄化して連れてくる子熊も、トキさんがさっき言ってた“多少時間はかかる”って言う問題が解決されてそうだね……」
『ワシもユノと同じ考えじゃ。答え合わせを楽しみにするとしよう』
「うん♪」
⸺⸺
しばらくこぐまちゃんを愛でていると、先にトキさんとラフちゃんが戻って来た。
トキさんはラフちゃんに稲と大豆の育て方も丁寧にレクチャーして、更に豆腐の作り方も教えてくれたらしい。ラフちゃんは稲と大豆の束の他に何枚ものメモを握り締めていた。トキさんの優しさに感謝だ。
その後、ルキちゃんとウルも帰還。こぐまちゃんとほぼ同じ容姿の子熊が巨大ウルに乗っかって「がう、がう♪」と上機嫌にきのこをかじっていた。
トキさんが大きなウルの姿と、子熊をあっという間に手名付けて来てしまった事にびっくり仰天していたため、軽く事情を説明。
トキさんは「諸島の外はヒトも動物もすごいんだべな……」と感心していた。
多分、私たちがイレギュラーなだけで、本当は自力で魔物を浄化して手懐けちゃうここの人たちの方が外の人たちよりすごいんじゃないかとは思うけど……。
「よし、名付けだね。きのこが好きみたいだから、“マシュー”だよ♪」
マシューの身体がほわっと光ると、マシューはがうがう言いながら『ましゅたん、きのこのこのこ、たくさん食べうもんね♪』と嬉しそうにもぞもぞしていた。
その見た目通り赤ちゃんっぽい性格と、自分のことを“ましゅたん”と呼んでしまう可愛さから、私たちも“マシュー”ではなく“ましゅたん”と呼ぶことにした。
『ふむ、ましゅたんはやはり“発酵”というスキルを得たようじゃ』
と、長老。
「おぉ、んじゃ、予想通りだったって事だね。どんなふうにパワーアップしてるか楽しみだなぁ♪」
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