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14話 こんなはずでは-エメリーヌ視点-
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⸺⸺ディザリエ城、王太子の部屋の前⸺⸺
わたくしは、王太子の妻となるために、彼に受け入れられて愛されるために、彼が要らないと言った者を喜んで捨てて来た。
それなのに、それがないと結婚は出来ないですって?
お父様はきっとデタラメを言っているのですわ。
その真相を確かめるために、わたくしは王太子の部屋の前までやって来た。ノックをしようと扉に近付くと、中から微かに会話が聞こえてくる。
これは、国王陛下と王太子殿下の会話。何か重要な話をしているよう。息を潜めて耳を澄まし、その会話を盗み聞きした。
⸺⸺
妖精族!? しかもあの子はその王の娘!?
ヒトはわたくしら“人間族”だけではない事は島の外との交易で明らかになっている。その中でも妖精族は警戒心が強く、あまり周囲と関わろうとしないと聞く。悪魔と恐れられていた正体が、まさか妖精族だったとは……。
しかし、わたくしはその子をあの森に置き去りにした。きっと今頃迷いに迷ってしまい、見つけるのは困難。でもこれは、わたくしのせいではない。そう、全ては王太子殿下の望んだ事。
あの子がいなければ同盟は結べないかもしれない。ですが、それはわたくしには関係のない事。わたくしはこの国の将来の王妃になれればそれでいい。
わたくしは、勢い良く扉を開いた。
「ランドルフ様!」
「エメリーヌ!? いきなり入ってきて無礼ではないか」
不機嫌そうな表情を浮かべる王太子。一方で隣りに居た国王は顔が真っ青になっていた。
「貴様まさか、今の話を聞いていたのか……!?」
「失礼を承知で聞かせていただきました。おかげであの子の重要性は分かりました。ですが、わたくしはランドルフ様の申し付け通り、あの子を魔の森へ捨てて来ました」
「「何っ!?」」
今度は王太子が冷や汗をダラダラと流している。
「ランドルフ貴様! エメリーヌにそんな事を命じたのか!」
国王が王太子の胸倉をグッと掴むと、王太子はブルブルと首を横に振った。
「そ、そんな事僕が言うはずないでしょう!?」
そんな……! この男、しらを切るつもりなの!?
「しらばっくれないで頂戴! あなたが、フィオナが他の男とセックスして出来た子なんか見たくない、お前なんとかしてこいよ……って、そう言ったのでしょう!? そうすれば妹の事は忘れてわたくしの事を愛してくださるって、そう言ったではありませんか!」
「ぼっ、僕はそんな事言ってない! 父上! 信じて下さい! 可愛い我が子とこの悪女、どちらを信じるというのですか!?」
「どちらも信用出来んわ! 魔の森に捨ててきたというのなら、すぐに探しに行ってこい! 見つからなければお前とランドルフの婚約は破棄する!」
「そ……そんな……!」
こんなはずではなかった。わたくしの勝ち組は確定していたはずなのに。
しかしさっきの話が本当なら、あの森も魔物はこちらを攻撃してくる事はないし、奥まで行き過ぎなければ迷う事はない。まだチャンスはある。あの子を無事に連れて帰れば、わたくしの王妃は確定するし、なんならあの子を人質に取ってしまえば国王はわたくしの言う事を何でも聞く。
「分かりました。あの子を探してきます」
わたくしは、王太子の部屋を後にした。城門の辺りで壊れたボウガンを引きずり、ボロボロの服装で泣きじゃくっている貧相な殿方とすれ違ったけど、彼は一体何なのかしら。みっともない。わたくしが王妃になったらあんなのは“汚い罪”で死刑ですわ。
私は馬に跨ると、再び魔の森を目指した。
わたくしは、王太子の妻となるために、彼に受け入れられて愛されるために、彼が要らないと言った者を喜んで捨てて来た。
それなのに、それがないと結婚は出来ないですって?
お父様はきっとデタラメを言っているのですわ。
その真相を確かめるために、わたくしは王太子の部屋の前までやって来た。ノックをしようと扉に近付くと、中から微かに会話が聞こえてくる。
これは、国王陛下と王太子殿下の会話。何か重要な話をしているよう。息を潜めて耳を澄まし、その会話を盗み聞きした。
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妖精族!? しかもあの子はその王の娘!?
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しかし、わたくしはその子をあの森に置き去りにした。きっと今頃迷いに迷ってしまい、見つけるのは困難。でもこれは、わたくしのせいではない。そう、全ては王太子殿下の望んだ事。
あの子がいなければ同盟は結べないかもしれない。ですが、それはわたくしには関係のない事。わたくしはこの国の将来の王妃になれればそれでいい。
わたくしは、勢い良く扉を開いた。
「ランドルフ様!」
「エメリーヌ!? いきなり入ってきて無礼ではないか」
不機嫌そうな表情を浮かべる王太子。一方で隣りに居た国王は顔が真っ青になっていた。
「貴様まさか、今の話を聞いていたのか……!?」
「失礼を承知で聞かせていただきました。おかげであの子の重要性は分かりました。ですが、わたくしはランドルフ様の申し付け通り、あの子を魔の森へ捨てて来ました」
「「何っ!?」」
今度は王太子が冷や汗をダラダラと流している。
「ランドルフ貴様! エメリーヌにそんな事を命じたのか!」
国王が王太子の胸倉をグッと掴むと、王太子はブルブルと首を横に振った。
「そ、そんな事僕が言うはずないでしょう!?」
そんな……! この男、しらを切るつもりなの!?
「しらばっくれないで頂戴! あなたが、フィオナが他の男とセックスして出来た子なんか見たくない、お前なんとかしてこいよ……って、そう言ったのでしょう!? そうすれば妹の事は忘れてわたくしの事を愛してくださるって、そう言ったではありませんか!」
「ぼっ、僕はそんな事言ってない! 父上! 信じて下さい! 可愛い我が子とこの悪女、どちらを信じるというのですか!?」
「どちらも信用出来んわ! 魔の森に捨ててきたというのなら、すぐに探しに行ってこい! 見つからなければお前とランドルフの婚約は破棄する!」
「そ……そんな……!」
こんなはずではなかった。わたくしの勝ち組は確定していたはずなのに。
しかしさっきの話が本当なら、あの森も魔物はこちらを攻撃してくる事はないし、奥まで行き過ぎなければ迷う事はない。まだチャンスはある。あの子を無事に連れて帰れば、わたくしの王妃は確定するし、なんならあの子を人質に取ってしまえば国王はわたくしの言う事を何でも聞く。
「分かりました。あの子を探してきます」
わたくしは、王太子の部屋を後にした。城門の辺りで壊れたボウガンを引きずり、ボロボロの服装で泣きじゃくっている貧相な殿方とすれ違ったけど、彼は一体何なのかしら。みっともない。わたくしが王妃になったらあんなのは“汚い罪”で死刑ですわ。
私は馬に跨ると、再び魔の森を目指した。
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