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126話 チャンスはまだある
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兵士に連れられて城のロビーまで戻ってくると、ちょうど申請を終えたところのアイラたちを姿をとらえた。
『ノエルよ、アイラとジャックに回収してもらうのじゃ』
そんなくろすけの念話が聞こえてくる。
僕は同じく兵士に連れられているくろすけの方を向いてうなずくと、大きな声で「アイラー! ジャックー!」と叫んだ。
すぐにアイラとジャックが僕の方を見る。
「ノエル、くろすけ!」
「何やってんだ? アイツら」
驚いた顔のアイラに、呆れた表情のジャック。ジャックにあんな顔をされるのはちょっと悔しい。
彼らは両親らに何かを話しかけると、こちらへと駆け寄ってきてくれた。
「おや? ノエル君のご両親ですか?」
僕を連れている兵士が問う。
「いやぁ、親ではないんだけど、保護者ではあるかな。ノエル、何かやっちゃったのかい?」
アイラが申し訳なさそうに言った。それに対し、兵士は「いえいえ」と首を横に振る。
「礼拝堂の前で迷子になっていたようなので、保護者様を探しておりました」
「迷子だぁ?」
「ありゃ、そうなのかい。それなら、アタシらが引き取るよ。この子の親とも一緒に来ているからさ」
アイラがそう言うと、兵士はホッと安堵の表情を浮かべた。
「それは良かったです。では、ノエル君、次は迷子にならないように気をつけるんだよ」
「うん……ありがと」
僕、迷子じゃないって言ったのに。なんだか納得のいかない僕だったけど、兵士たちも善意でやってることだし、とりあえずお礼は言っておいた。そして、去っていく兵士たちの背中に「バイバイ」と手を振る。
「で、なぁにいたずらしてたんだ?」
ジャックがニヤニヤしながらそう問いかけてきたので、僕は「ひみつ~」と意地悪く笑って誤魔化した。
「ノエルー?」
「ノエルくーん! いたら返事して~」
「ノエル~」
そこへ、2階からお父さんたちも降りてくる。
僕はジャックに肩車をしてもらってお父さんたちに「パパー!」と呼びかけ、無事に全員が集合した。
アイラたちからは無事に申請が済んだことを聞き、僕たちは国王や王女との謁見はできなかったことを報告した。
◇
用事を済ませた僕たちは王都の酒場で食事をとると、ジャックの両親であるラドクリフ夫妻とはここで別れ、ブライアの町行きの馬車へと乗り込んだ。
――その馬車内にて、念話で反省会をする僕とくろすけ。
『どうしよう、王女様にも王様にも普通に会えなかったんだけど……』
僕は窓から外を眺めながら、内心落ち込む。
『なぁに、初めから全て上手くいくと思ってはおらなんだよ。まだ記念祭の準備は始まったばかり。ジャックなんかは親の手伝いで何度もザイラール城を訪れるはずじゃし、まだまだチャンスはある。そう落ち込むでないわい』
『そっか……うん、そうだよね。そういえばさ、僕が王女に名乗ろうとしたとき、止めたのはなんで?』
『うむ。今回のザイラール城訪問で、今はローベルのやつが全ての実権を握っていることが分かったじゃろう』
『うん。最悪の状況だったね』
『〝グランヴィル〟という名がローベルに届かない方が良いかと思ってのう。決して王女殿下を疑っておるのではない。フィンと言う名の近衛と、駆け付けた兵士ら、どこまでローベルの息がかかっておるか分からん以上、慎重になるべきじゃ』
『あっ、そっか……ローベルにグランヴィルを警戒されちゃうと、パパや僕が出禁になっちゃうかもってことか……』
『うむ。むしろそれで済めば軽い。あやつのことじゃから、あることないこと言って、ジルに関わっておるエミリアを持ち出して国際問題に発展させかねん。今後、グランヴィルの名は容易に出さん方が良いじゃろう』
『あわわ、そっか。ごめん……うかつだった』
『いや、幼いお主にここまでさせねばならぬワシの責任じゃ。気にするでない。それよりも、グランキャットに帰ったら今後の作戦を立てるぞ』
『今後の作戦?』
『うむ。もう正攻法での王女殿下との合流は不可能に近いことが分かったからのう』
『そうだね……よし、次に大人の誰かがお城に行く時までに、なんか良い方法を見つけなくちゃってことだね。僕、まだまだ諦めないぞ!』
『うむ、その意気じゃ』
初めて訪れたチャンスは、ザイラールがローベルに支配されてしまっていたことで失敗してしまった。
でも、まだチャンスは残されている。
それに、王女は――僕の名前は知らなかったみたいだけど、僕にすごく興味を示していた。
それも気になる。
王女が最後に「ノエル様……!」と切なそうに僕の名前を呼んだのが、まだ耳に残ってもいる。
だから僕は、絶対にクリスティーナ王女に会うんだ……!
『ノエルよ、アイラとジャックに回収してもらうのじゃ』
そんなくろすけの念話が聞こえてくる。
僕は同じく兵士に連れられているくろすけの方を向いてうなずくと、大きな声で「アイラー! ジャックー!」と叫んだ。
すぐにアイラとジャックが僕の方を見る。
「ノエル、くろすけ!」
「何やってんだ? アイツら」
驚いた顔のアイラに、呆れた表情のジャック。ジャックにあんな顔をされるのはちょっと悔しい。
彼らは両親らに何かを話しかけると、こちらへと駆け寄ってきてくれた。
「おや? ノエル君のご両親ですか?」
僕を連れている兵士が問う。
「いやぁ、親ではないんだけど、保護者ではあるかな。ノエル、何かやっちゃったのかい?」
アイラが申し訳なさそうに言った。それに対し、兵士は「いえいえ」と首を横に振る。
「礼拝堂の前で迷子になっていたようなので、保護者様を探しておりました」
「迷子だぁ?」
「ありゃ、そうなのかい。それなら、アタシらが引き取るよ。この子の親とも一緒に来ているからさ」
アイラがそう言うと、兵士はホッと安堵の表情を浮かべた。
「それは良かったです。では、ノエル君、次は迷子にならないように気をつけるんだよ」
「うん……ありがと」
僕、迷子じゃないって言ったのに。なんだか納得のいかない僕だったけど、兵士たちも善意でやってることだし、とりあえずお礼は言っておいた。そして、去っていく兵士たちの背中に「バイバイ」と手を振る。
「で、なぁにいたずらしてたんだ?」
ジャックがニヤニヤしながらそう問いかけてきたので、僕は「ひみつ~」と意地悪く笑って誤魔化した。
「ノエルー?」
「ノエルくーん! いたら返事して~」
「ノエル~」
そこへ、2階からお父さんたちも降りてくる。
僕はジャックに肩車をしてもらってお父さんたちに「パパー!」と呼びかけ、無事に全員が集合した。
アイラたちからは無事に申請が済んだことを聞き、僕たちは国王や王女との謁見はできなかったことを報告した。
◇
用事を済ませた僕たちは王都の酒場で食事をとると、ジャックの両親であるラドクリフ夫妻とはここで別れ、ブライアの町行きの馬車へと乗り込んだ。
――その馬車内にて、念話で反省会をする僕とくろすけ。
『どうしよう、王女様にも王様にも普通に会えなかったんだけど……』
僕は窓から外を眺めながら、内心落ち込む。
『なぁに、初めから全て上手くいくと思ってはおらなんだよ。まだ記念祭の準備は始まったばかり。ジャックなんかは親の手伝いで何度もザイラール城を訪れるはずじゃし、まだまだチャンスはある。そう落ち込むでないわい』
『そっか……うん、そうだよね。そういえばさ、僕が王女に名乗ろうとしたとき、止めたのはなんで?』
『うむ。今回のザイラール城訪問で、今はローベルのやつが全ての実権を握っていることが分かったじゃろう』
『うん。最悪の状況だったね』
『〝グランヴィル〟という名がローベルに届かない方が良いかと思ってのう。決して王女殿下を疑っておるのではない。フィンと言う名の近衛と、駆け付けた兵士ら、どこまでローベルの息がかかっておるか分からん以上、慎重になるべきじゃ』
『あっ、そっか……ローベルにグランヴィルを警戒されちゃうと、パパや僕が出禁になっちゃうかもってことか……』
『うむ。むしろそれで済めば軽い。あやつのことじゃから、あることないこと言って、ジルに関わっておるエミリアを持ち出して国際問題に発展させかねん。今後、グランヴィルの名は容易に出さん方が良いじゃろう』
『あわわ、そっか。ごめん……うかつだった』
『いや、幼いお主にここまでさせねばならぬワシの責任じゃ。気にするでない。それよりも、グランキャットに帰ったら今後の作戦を立てるぞ』
『今後の作戦?』
『うむ。もう正攻法での王女殿下との合流は不可能に近いことが分かったからのう』
『そうだね……よし、次に大人の誰かがお城に行く時までに、なんか良い方法を見つけなくちゃってことだね。僕、まだまだ諦めないぞ!』
『うむ、その意気じゃ』
初めて訪れたチャンスは、ザイラールがローベルに支配されてしまっていたことで失敗してしまった。
でも、まだチャンスは残されている。
それに、王女は――僕の名前は知らなかったみたいだけど、僕にすごく興味を示していた。
それも気になる。
王女が最後に「ノエル様……!」と切なそうに僕の名前を呼んだのが、まだ耳に残ってもいる。
だから僕は、絶対にクリスティーナ王女に会うんだ……!
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