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125話 王女との出会いは
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エミリアとパーシヴァルがお父さんとリオンと国王を交えながら世間話を繰り広げる中、僕はくろすけに念話でこう問いかけた。
『ねぇ、くろすけ。このお城には、確か礼拝堂みたいなところあったよね?』
『む、なるほど。ワシの記憶を見た時に見かけたか』
『うん』
『この国には「ザイル教」という国教があってのう。「女神ミザリエル」を信仰する宗教じゃ。ゆえに、この城にも王都にも、礼拝堂や修道院なるものが存在しておるぞ』
『ザイル教かぁ。さっき、あの兵士さんたちが王女は今も祈っているんじゃないかって言ってたけど、1階の礼拝堂でその女神ミザリエルに祈っているのかな?』
『うむ、そうじゃろうな。元々、女神ミザリエルはザイラール王家を守護しておると信じられておる。ゆえに、ワシがまだ城におる頃も、王女殿下はあの礼拝堂で日々献身的に祈りを捧げておった』
『だったら、今パパたちは話に夢中だし、僕たちだけでその礼拝堂を覗いてみよう。もしかしたらクリスティーナ王女に会えるかも』
『ふむ……そうじゃな。顔を出してみる価値はあるか』
僕とくろすけは顔を見合わせてうなずくと、話に夢中になっている大人たちに背を向けて、1階への階段を駆け下りた。
『そこの通路に入ってすぐが礼拝堂じゃ』
『おっけー!』
賑やかなロビーを抜けてくろすけの言う通路へと入る。
すると、礼拝堂の入り口には他の兵士よりも立派な鎧を身に着けた兵士が立っていた。
扉は開いているようだけど、その人のせいで礼拝堂の中はよく見えなかった。
『あやつの名は「フィン」というそうじゃ。王女の近衛兵とのステータスが出ておる。それに礼拝堂から、懐かしい気配がするわい』
くろすけは観察眼の結果を念話で教えてくれて、目を細めた。
――この礼拝堂の中に、クリスティーナ王女が……!
「坊や、どうしたのかな? 迷子かな?」
礼拝堂の入り口でウロウロしていると、近衛兵のフィンに話しかけられる。
「あのね、えっと、僕、ここでお祈りできる?」
僕はそれとなくフィンに近づき、礼拝堂の中をチラチラと覗き見る。
すると、確かにくろすけの記憶の中で見覚えのある女の子の後ろ姿が礼拝堂の奥にあった。
『間違いないぞ、ノエル! 彼女がクリスティーナ王女殿下じゃ! あの頃と比べると、かなり背が伸びたのう』
「すまないね、坊や、一般の人は王都の修道院に行ってもらえるかな?」
「どうして? 僕、ここでお祈りしたい。あっ、あそこでお祈りしているの、おーじょ様? ご挨拶、できる?」
僕はそう言って強引に礼拝堂の中へと入ろうとするが、さすがにフィンに防がれてしまった。
「そう、王女様がお祈りをしているからね。ここは城の者専用の礼拝堂なのだ。せっかくだけど、坊やは入れないよ」
「いやだ、僕、おーじょ様と一緒にお祈りしたい! おーじょさま~! クリスティーナ王女殿下~!」
ちびっこの特権でなんとか行けないかともがいてみるが、フィンは頑なに通してはくれなかった。
そりゃ、そうか。さすが近衛兵……。
しかし、僕のそんなあがきが届いたのか、僕たちに背を向けて祈りを捧げていたクリスティーナ王女がこちらを振り返った。
「どなたか、わたくしのことを呼びましたか?」
くろすけの記憶よりも少し大人びていたけれど、まだまだあどけない表情の少女とバチっと視線が合う。
彼女はなぜか、僕とくろすけを交互に見ると、目を真ん丸にした。
「黒猫を連れた幼い男の子……! フィン! その子をこちらへ通してください!」
そう言ってクリスティーナ王女がこちらへ駆け寄って来る。
なんだろう、僕のこと、知ってるの……!?
「ええ!? そういう訳にはいきませんよ、クリス様。ローベル様に危ないから一般の者と関わってはならないと、言われているでしょう? おい、誰かいないか!? 迷子のようだ、誰かこの子の親を探してくれ!」
フィンはそう言って廊下に呼びかけると、すぐに数人の兵士が集まってきた。
「そんな、フィン!」
「えーっ、僕、迷子じゃないよ!」
「ぐるにゃ……!」
「ダメです。そう言う決まりなので、ごめんね、坊や」
申し訳なさそうにそう言うフィン。
僕とくろすけは駆け付けた兵士に抱き上げられてしまった。
「わーっ、やめて、離してよ!」
「ぎにゃー!」
そんな僕へ、フィンに通せん坊されているクリスティーナ王女がこう問いかけてきた。
「ねぇ、あなた、お名前は!?」
「僕? ノエルだよ、ノエル・グ――」
――その時、くろすけの念に続きを阻まれる。
『ファーストネームだけでよい! グランヴィルは言わんでよい!』
「!」
「ノエルグ……?」
首を傾げるクリスティーナ王女。
「あっ、えっと、ノエル! 僕、ノエルだよ! おーじょ様!」
「ほら、ノエル君、パパとママを探そうね~」
じたばたする僕を抱えた兵士は、そう言って礼拝堂からロビーの方へと歩いていってしまった。
「ノエル様……!」
そんなクリスティーナ王女の切なそうな声だけが、背後から聞こえてきた。
『ねぇ、くろすけ。このお城には、確か礼拝堂みたいなところあったよね?』
『む、なるほど。ワシの記憶を見た時に見かけたか』
『うん』
『この国には「ザイル教」という国教があってのう。「女神ミザリエル」を信仰する宗教じゃ。ゆえに、この城にも王都にも、礼拝堂や修道院なるものが存在しておるぞ』
『ザイル教かぁ。さっき、あの兵士さんたちが王女は今も祈っているんじゃないかって言ってたけど、1階の礼拝堂でその女神ミザリエルに祈っているのかな?』
『うむ、そうじゃろうな。元々、女神ミザリエルはザイラール王家を守護しておると信じられておる。ゆえに、ワシがまだ城におる頃も、王女殿下はあの礼拝堂で日々献身的に祈りを捧げておった』
『だったら、今パパたちは話に夢中だし、僕たちだけでその礼拝堂を覗いてみよう。もしかしたらクリスティーナ王女に会えるかも』
『ふむ……そうじゃな。顔を出してみる価値はあるか』
僕とくろすけは顔を見合わせてうなずくと、話に夢中になっている大人たちに背を向けて、1階への階段を駆け下りた。
『そこの通路に入ってすぐが礼拝堂じゃ』
『おっけー!』
賑やかなロビーを抜けてくろすけの言う通路へと入る。
すると、礼拝堂の入り口には他の兵士よりも立派な鎧を身に着けた兵士が立っていた。
扉は開いているようだけど、その人のせいで礼拝堂の中はよく見えなかった。
『あやつの名は「フィン」というそうじゃ。王女の近衛兵とのステータスが出ておる。それに礼拝堂から、懐かしい気配がするわい』
くろすけは観察眼の結果を念話で教えてくれて、目を細めた。
――この礼拝堂の中に、クリスティーナ王女が……!
「坊や、どうしたのかな? 迷子かな?」
礼拝堂の入り口でウロウロしていると、近衛兵のフィンに話しかけられる。
「あのね、えっと、僕、ここでお祈りできる?」
僕はそれとなくフィンに近づき、礼拝堂の中をチラチラと覗き見る。
すると、確かにくろすけの記憶の中で見覚えのある女の子の後ろ姿が礼拝堂の奥にあった。
『間違いないぞ、ノエル! 彼女がクリスティーナ王女殿下じゃ! あの頃と比べると、かなり背が伸びたのう』
「すまないね、坊や、一般の人は王都の修道院に行ってもらえるかな?」
「どうして? 僕、ここでお祈りしたい。あっ、あそこでお祈りしているの、おーじょ様? ご挨拶、できる?」
僕はそう言って強引に礼拝堂の中へと入ろうとするが、さすがにフィンに防がれてしまった。
「そう、王女様がお祈りをしているからね。ここは城の者専用の礼拝堂なのだ。せっかくだけど、坊やは入れないよ」
「いやだ、僕、おーじょ様と一緒にお祈りしたい! おーじょさま~! クリスティーナ王女殿下~!」
ちびっこの特権でなんとか行けないかともがいてみるが、フィンは頑なに通してはくれなかった。
そりゃ、そうか。さすが近衛兵……。
しかし、僕のそんなあがきが届いたのか、僕たちに背を向けて祈りを捧げていたクリスティーナ王女がこちらを振り返った。
「どなたか、わたくしのことを呼びましたか?」
くろすけの記憶よりも少し大人びていたけれど、まだまだあどけない表情の少女とバチっと視線が合う。
彼女はなぜか、僕とくろすけを交互に見ると、目を真ん丸にした。
「黒猫を連れた幼い男の子……! フィン! その子をこちらへ通してください!」
そう言ってクリスティーナ王女がこちらへ駆け寄って来る。
なんだろう、僕のこと、知ってるの……!?
「ええ!? そういう訳にはいきませんよ、クリス様。ローベル様に危ないから一般の者と関わってはならないと、言われているでしょう? おい、誰かいないか!? 迷子のようだ、誰かこの子の親を探してくれ!」
フィンはそう言って廊下に呼びかけると、すぐに数人の兵士が集まってきた。
「そんな、フィン!」
「えーっ、僕、迷子じゃないよ!」
「ぐるにゃ……!」
「ダメです。そう言う決まりなので、ごめんね、坊や」
申し訳なさそうにそう言うフィン。
僕とくろすけは駆け付けた兵士に抱き上げられてしまった。
「わーっ、やめて、離してよ!」
「ぎにゃー!」
そんな僕へ、フィンに通せん坊されているクリスティーナ王女がこう問いかけてきた。
「ねぇ、あなた、お名前は!?」
「僕? ノエルだよ、ノエル・グ――」
――その時、くろすけの念に続きを阻まれる。
『ファーストネームだけでよい! グランヴィルは言わんでよい!』
「!」
「ノエルグ……?」
首を傾げるクリスティーナ王女。
「あっ、えっと、ノエル! 僕、ノエルだよ! おーじょ様!」
「ほら、ノエル君、パパとママを探そうね~」
じたばたする僕を抱えた兵士は、そう言って礼拝堂からロビーの方へと歩いていってしまった。
「ノエル様……!」
そんなクリスティーナ王女の切なそうな声だけが、背後から聞こえてきた。
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