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「だから、そいつをここまで連れてきて、後継者として育てれば、別にラズが羊飼いにならなくても、問題ないだろ?」
この時、ヨールおじいちゃんは、リドのいうその人の話に、すっかり魅了されていた。
だからか、これまでの頑固な態度が、少しだけくずれて、
「ああ、それは、そうじゃが……」と、迷っているように言った。
「いや、でも、やはりダメじゃ。この家を継ぐ者は、この家の者じゃなければならん。絶対に、だ」
やはり、考えを変える気はないのか、ヨールおじいちゃんは、厳しくそう言った。
「もう、ヨールおじいちゃんたら」
ラズが呆れて言った。
「私、この際はっきりいうけど、そんな決まり、もう古いのよ。いいかげん、新しい考えを、受け入れたらどうなの?」
「なんと、実の祖父に向かって、なんたる口の聞き方をするんじゃ、ラズ!」
ヨールおじいちゃんは、怒ったように言った。
「わしは悲しいぞ。それに、わしはそんな子に育てた覚えは、一度だってない」
「でも、ヨールじいさん。ラズの言うとおりだぜ。ラズは、羊飼いの他に、やりたいことがあるんだ。だから、ラズには自分の好きなことをさせて、やりたいやつに、羊飼いをやらせればいいんじゃないか?」
リドがそう提案をした。
それを聞いたヨールおじいちゃんは、悩ましい顔をすると、
「うーん。しかし、そうなると、ラズは一体、どこへ行くというんじゃ?」と言った。
「ラズは、どことは言わず、好きなように、冒険に出ればいい」
リドが言った。
「そんなこと、わしは心配でたまらん。なにせ、赤ん坊の頃から育ててきた、一人しかおらん、大切な孫じゃからな。それに、ラズがいなくなると、わしが寂しくなる」
悲しそうに、ヨールおじいちゃんが言った。
「そんなの、新しいやつが来れば、すぐにヨールじいさんも、寂しくなくなるさ」
なんでもないように、リドが言った。
「それに、ラズはもう、十三才なんだ。たしかこの村では、十三才は、立派な大人と、なにも変わらないんだろう? だったらきっと、なにがあっても、自分の力で、乗り越えていけると思うぜ」
この時、ヨールおじいちゃんは、リドのいうその人の話に、すっかり魅了されていた。
だからか、これまでの頑固な態度が、少しだけくずれて、
「ああ、それは、そうじゃが……」と、迷っているように言った。
「いや、でも、やはりダメじゃ。この家を継ぐ者は、この家の者じゃなければならん。絶対に、だ」
やはり、考えを変える気はないのか、ヨールおじいちゃんは、厳しくそう言った。
「もう、ヨールおじいちゃんたら」
ラズが呆れて言った。
「私、この際はっきりいうけど、そんな決まり、もう古いのよ。いいかげん、新しい考えを、受け入れたらどうなの?」
「なんと、実の祖父に向かって、なんたる口の聞き方をするんじゃ、ラズ!」
ヨールおじいちゃんは、怒ったように言った。
「わしは悲しいぞ。それに、わしはそんな子に育てた覚えは、一度だってない」
「でも、ヨールじいさん。ラズの言うとおりだぜ。ラズは、羊飼いの他に、やりたいことがあるんだ。だから、ラズには自分の好きなことをさせて、やりたいやつに、羊飼いをやらせればいいんじゃないか?」
リドがそう提案をした。
それを聞いたヨールおじいちゃんは、悩ましい顔をすると、
「うーん。しかし、そうなると、ラズは一体、どこへ行くというんじゃ?」と言った。
「ラズは、どことは言わず、好きなように、冒険に出ればいい」
リドが言った。
「そんなこと、わしは心配でたまらん。なにせ、赤ん坊の頃から育ててきた、一人しかおらん、大切な孫じゃからな。それに、ラズがいなくなると、わしが寂しくなる」
悲しそうに、ヨールおじいちゃんが言った。
「そんなの、新しいやつが来れば、すぐにヨールじいさんも、寂しくなくなるさ」
なんでもないように、リドが言った。
「それに、ラズはもう、十三才なんだ。たしかこの村では、十三才は、立派な大人と、なにも変わらないんだろう? だったらきっと、なにがあっても、自分の力で、乗り越えていけると思うぜ」
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