ダルマさんが消えた

猫町氷柱

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 頬月唯が消えた。とある都市伝説を試した日に……
彼女は心霊現象の検証を生業にした実況者だった。そしてその好奇心に惹かれいつしかチャンネル登録し毎日見るようになっていた。
 最新投稿は『ダルマさんが消えた』で終わっている。それを境に完全に音沙汰なく投稿されることはなくなった。そしてしばらく掲載されていた動画も内容が過激だったのかすぐさまバンされ消えてしまった。
 ただ、その動画は何とも言えない恐怖心が駆り立てられ、その只ならぬ怖さが背筋に刺さったのを覚えている。何かが映ったわけではないけれど思わずPCを閉じヘッドホンを投げ出してしまったのだ。こんなこと今までの配信では感じたことがなかったのに画面を越えて私の背後に何か得体のしれない者が仁王立ちし頭上から睨んでいるような錯覚に陥ったのを覚えている。
 あれは何だったのか……実際その翌日から唯が消え、それを見た私も消えるんじゃないかと全身に悪寒を感じた。でもそれが一体何なのか突き止めたいという好奇心もまたしかり捨てられない。
 そしてまさに今、私はこの都市伝説を試そうと心を落ち着けている。頬月唯の例の動画が消される前に内容を書き留めておいて良かったと心の底から感じた。ネット上で検索しても都市伝説であったから。もしかして独自の都市伝説だったのだろうかと少し落胆した。もし、そうだとしたらネタが切れ唯、注目を集めるためだけに流したデマ配信ということになるのだから。
 だが、実際配信者の唯は失踪した。それが意味するのはすくなからず彼女の身に何かが起きたのは間違いない。そしてその真相はやってみれば分かるはずだ。私は真っ暗にした部屋の中でメモ用紙を広げ再度手順に目を通した。

1. 深夜0時以降に必ず自室で行うこと(玄関前では効果なし)
2. 長めの蝋燭に火を点け振り返った際に見える位置に配置する
3. ダルマさんが転んだの掛け声を発し背後を振り返る(変化なければ複数回)
4. 3の際、蝋燭の火が靡いたらダルマさん鬼交代という
5. 蝋燭の火が消えたらダルマさんが降臨した合図、その後は玄関を目指して歩む 
※決して背後を振り返らないこと。背後から聞こえる声に合わせダルマさんが転んだを行う
6. 玄関からでたらダルマさんお帰りくださいと3度唱え終了

 これが以上のルールとなる。誰も得をしないように思われるがホラー好きなら怖いモノみたさに試すのかなと思う。実際、私もこれから試すのだ。不思議と恐怖心はない、唯が見た怪奇の世界に浸れると思うとゾクゾクして身体の武者震いが止まらない。
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