混沌の赤い薔薇

第一章 異物殲滅部隊

１．抗う者たち

　ビルは荒廃し、雑草が生い茂る。高速道路には一台も車は走っておらず中折れし、崩れている。街を徘徊するドローン兵はあの日を境に人を襲うようになり治安は地の底まで落ちた。
　この国家での生存者は激減し、悪魔に囚われ自我を失った人間が暴れる始末。すべての元凶は供給拠点ターミナルの地下深くから現れた薔薇寄生虫ローズパラサイトが原因だ。瞬く間に都市の電力は奪われ、屋上に巨大な花を咲かせた。その花から幾万もの胞子が地上に降り注ぎ人々や機械に根を張った。憑りつかれたものは暴走し、無作為に人々を襲い瞬く間に無法地帯と化し人類は消滅したかに思えた。
　そんな荒廃した土地で悪魔に抗う特殊部隊がいた。背中にFEU(Foreign body Eradication Unit、異物殲滅部隊）の赤字を掲げる部隊がいた。彼らは機械獣を従え、特殊な武器を持っている。
　荒廃地帯はAからHまでの8区画に分けられ、危険度は最低ランクのGランクから超危険領域のSSSランクまで多岐に渡る。
　Cランク任務に当たっていた私は1人無線機とネコ型ドローン機械獣を従え補給路の確保に向かっていた。私の名前はアンナ＝ビビアン。まだ、駆け出しのFEUメンバーだ。とある上級任務を見事達成したことが功を奏し、今回1人で依頼にあたっている。場所は地下街に物資を届けるための航路を確保すること、そしてレーダー感知によると生存者が奥にいるらしい。罠の可能性もあるが指令に従うのが私たちの義務、放棄することは出来ない。
　危険を感じたら速攻逃げればいい。改造したジェットターボ式マウンテンバイクで一気に目的地まで飛ばしていった。赤いヘルメットの間から長い金色のツインテールが風に舞う。
「アンナさん、目的地には着きそうですか？」
オペレーターのカイン＝ルフランから連絡が入った。
「ええ、あと5分ほどで地下坑道の入口に到着するわ。それにしても連絡なんて何かあった？」
　任務中の連絡は予期せぬ事態が発生したときに来ることが多い。つまりあまり良くないことが発生した可能性が高い。そう思うとついついため息が出た。