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郁男と京都

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郁男は、勉強が苦手だった。


たいして兄姉たちはとても頭が良かった。
郁男が産まれた同じ年に死んでしまったひろ兄も、当時にしては珍しく、英語で日記を書くほど優秀だったそうだ。

家は、より屋と言う糸をよる仕事をしており、織屋(機織り工場)と違って、小さな下じょく(下請け)だった。そのため収入も小さく、とにかく貧乏で、いくら勉強ができても兄姉は良い学校に通えなかった。

郁男が中学校を卒業するころ、母親は郁男を浅草の靴屋に丁稚奉公に行かせようとした。
しかし、頭も良くバリバリ働いていた強い兄姉たちは、郁男に「高校に行きなさい」と言ってくれた。

勉強があまり出来なかったので、職業工業高校しか入れなかった。
それでも、本をよく読んだり、詩を読んだり作ったり、はたまた健脚を活かして駅伝の選手をしたり、充実した学生生活だった。

「気持ちが高々に自分が思えていたなまいきな学生でした。」郁男はそう言っていた。


就職するにあたり、郁男は高校からの推薦で、京都の会社の面接を受けた。傘やショール等を作り全国に商品を卸す会社だった。八王子の生産者とも取り引きをしており、八王子の織物を営む家の子供を探していたのだろうか。
字が下手だったので、字が上手な次兄に履歴書を書いてもらう。
そして郁男は専務に気に入られ、京都に行くことになった。




郁男の手記より

~~~~~~~~~

どのような格好で京都へ向かったかは、覚えておりません。たぶん八王子駅から東京駅に行き、夜行列車で一人で行ったと思います。

京都での家は細い路を入った2階建て。その家には小さな子供がいるお母さんがいて、そこの2階で寝起きが始まりました。布団は八王子の実家から送ってもらいました。

食事は毎日会社の食堂で、大勢で朝昼晩食べていたように思います。

商品の傘を繕うこと、マフラー等を整えること、品物の検分に納品。京都から神戸・大阪・岐阜・名古屋・博多等に出張しました。

仕事はそんなにツライ仕事ではなく、会社の先輩も親切で、やさしい人ばかりでした。
もう何年か約40年を上まわる今日になっても、やさしい会社のことは懐かしいです。

正月休みと夏休みは八王子に帰り、父母や兄姉たちも会えました。
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