月光の乙女と漆黒の覇王

里中一叶

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夏の夜の夢

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アナスタシアがグレゴリーに会ってまもなく、グレゴリーは強制労働刑で鉱山に送られたと皇帝陛下から聞かされた。民を苦しめた王が、民以上にきつい生活を送る事で反省してくれたらいいのだが。

皇帝陛下は、アナスタシアと昼間お茶をしたり散歩はするが、あれきり夜の御渡りが途絶えている。
アナスタシアは、エドの事があるので、御渡りがなくて助かるが陛下が、どうして来なくなったのかは分からなかった。


帝都エルドは、クレア王国より南にある為、夏はかなり暑くなる。
初めての暑さにだいぶまいってしまったアナスタシアが昼間は寝て過ごし、夕方から活動するようになると昼間も陛下に会う事が少なくなり、何日も顔を見ないのが当たり前になっていた。

その日も夜になり、庭を飛び交う蛍を眺めながら、ひとり東屋で過ごしていると後ろに気配を感じた。

「アナスタシア、久しぶり。」
「陛下?」

振り返るとエドが立っていた。

「エド様⁈ いままでどうしていたの。迎えに来ると言って、あれきり会えなかったから、もう会えないかと…」
「ごめん。色々とやる事があって来れなかった。でもお前が待っていてくれたみたいでうれしい。」

東屋のベンチに二人で座り、蛍を眺めながら取り止めのない話をしていると楽しかった。

「いま、アナスタシアを正式に妻にするために準備している。良かったら、これを受け取って欲しい。」

エドが取り出した箱には、アナスタシアの瞳のような濃い青の石がついた指輪が入っていた。

「はめていただけますか?」

エドはアナスタシアの左手薬指にそっとはめてくれた。

「気に入った?」
「うれしいです。」

エドにもたれかかるように座るとアナスタシアの髪を撫でながら、そっと頬にキスを落とされる。
アナスタシアにとって、とても幸せな時間だった。
名残は惜しいが、あまり長い時間だとリリー達や巡回兵に見つかりかねない。仕方なく身体を離すとエドは、

「また来るよ。」

そう言って暗闇に紛れるように帰ってしまった。ひとり残ったアナスタシアは、しばらく蛍を眺めているのだった。
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