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入学式を3日後に控えた天気の良い日に寮へ入るため、学園に向かう馬車に乗り込んだ。
横には侍女の制服姿のメラニー、前には最上級生になるお兄様が今日も私に甘~い笑顔を見せている。

「私がいない時は、メラニーから離れるな。来年度からは、アーノルドが2年間留学ということでエイミーの護衛につくから。」

お兄様、隣国の王子を護衛ってどう言うことですか?しかも王子に対して上から目線なのは、なぜ?
とりあえず、お兄様に笑顔を返す。

「お兄様がいるから安心だわ。」
「そのために学園生一の権力者、生徒会長になったしな。」

お兄様、生徒会長ってそう言う理由でなるものなんですか?
しかも権力者って…
私はブラコンだけど、常識人なんですが、これでいいのかしら?

「エミルフェシア様は、そこらの令嬢が裸足で逃げるくらい美しくて聡明ですから、アルヴィン様の手が届かない場所は、私が守らせていただきます。」
「メラニー、私そこまで美人じゃないと思うけれど。」
「何をおっしゃっているのですか。栗色の艶のある髪、澄んだ空のような瞳、少しつり目の顔立ちが、お嬢様の賢さを物語っていますし、スタイルも補正しない制服でこれだけ完璧なのですよ。」

お兄様は、ウンウンとうなづいている。恥ずかしい。馬車の中で良かった。

学園の正門から入り、校舎の横を通り過ぎると4棟の寮が見えてきた。男女の一般棟と高位貴族棟。一般棟は作りつけの机とベッドとロッカーがあるだけらしいが、高位貴族棟は、各部屋が居間と寝室と侍女の控室が1人分のスペースになっていた。調度品も各自の好きなものを用意できる。私の部屋は、白い家具をメインにしている。お父様の趣味で、本当はこんな豪勢でなくていいのに。
慣れないベッドで眠るせいなのかこれから始まる学園生活に対する緊張か、なかなか眠れずにガウンを羽織ってテラスに出た。

まだ肌寒い空気に余計、目が覚めてしまう。階下に人の気配がするので、少しテラスから身を乗り出してみると聖女サマが、誰か男子生徒と寮に戻ってきたらしい。
この国では珍しい黒髪ロングストレートだから、間違いないだろう。一緒にいるのは、金髪のくせっ毛だから、アラン王子だろうか?まだ入学前なのに、もう親密そうでゲームより展開が早そうだなぁと思った。
これなら私がいなくても話は進みそうだから、放っておいて欲しいなぁ。

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