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ついに入学式を迎えた。
制服に着替えて、ポニーテールの髪にはお兄様にいただいた白いリボンを付ける。悪役定番の縦ロールにはしません。制服だって、改造しないんだから。
お兄様は生徒会長としての準備があるため、メラニーをお供に会場のホールに向かう。明日からはお供はダメらしいので、隠密になるとメラニーは言っていた。隠密ってメラニーは、くノ一なの?

あと少しで到着という辺りで、立ち止まってキョロキョロしていた男子生徒にぶつかった。

「ごめんなさい。」
「いや、こちらもちゃんと見ていなかった…」

私を見てびっくりしているのは、間違いなくアラン王子。

「き、君は1年か?」
「はい。アラン殿下。」
「そうか… 入学式の後のパーティでエスコートさせてくれないか。」

入学式の後のパーティは、1年生とエスコート役しか出席できない。エスコートはなくても、その場で仲良くなってダンス踊ることもあるが、だいたい中等部持ち上がり組は約束済みで、高位貴族の令嬢は、家族や婚約者がエスコートする。
まさかと思うけれど、私があなたの元婚約者だとわからない⁈

「申し訳ございません。先約がありますので。」
「君は高位貴族だろう。家族じゃないのか。」
「はい、兄が。」
「では、君の兄上に代わってもらおう。私が君のエスコートを…」

やはりアラン王子は、お父様が言うようにバカなんですね。
幼い頃、私がこの人を好きだと思ってまとわりついていたのが、王子様というキラキラフィルターで恋していると錯覚していただけだと今ではわかっている。
お兄様はもちろん、隣国の王子であるアーノルドとは結婚できないと思っていたから、一番キラキラと思っちゃったんだと。

そこへ甘ったるい声が聞こえた。

「アラン様!こんなところにいたの?」
「マリナ…」
「探したのよ。」

まるで当然のようにアラン王子の腕を持つマリナに呆れはするが、出来るだけ関わりたくないので見なかった事にする。

「それでは、私は失礼します。」
「君、名前は?」

アラン王子の声は聞こえない振りをしてホールに向かって歩き出した。

たぶん30分後には、私の名前わかるわよ。心の中でアラン王子に答えてあげた。



「新入生代表、エミルフェシア・ギルフォード。」
「はい。」
「王立学園高等部 第36期 エミルフェシア・ギルフォード、入学を許可する。」
「ありがとうございます。」

中等部からの進学も高等部からの入学も同じ試験を受けている。普通なら内部進学の高位貴族男子が試験1位で新入生代表になるはずだが、今年は私より成績の良い人がいなかったらしく、私が代表だと学園から連絡を受けていたのだ。

アラン王子の席を見るとこちらを見て、顔を赤くして口を手で押さえている。

自分が嫌だと逃げていたくせに気付かず、声をかけた事を恥ずかしいと思っているのなら、これで近寄ってこないだろう。
私はやっとホッとできると思っていた。

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