私は悪役令嬢のはずだけどお兄様の小姑役だけ全うしたい。

里中一叶

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私は、3クラスある高位貴族のA組。アラン王子を含め攻略対象たちとマリナが同じクラスだが、
学園は、恵美の記憶の高校より大学に近いもので、クラスはあるものの選択授業なので、明日は、一応クラスで集まるが、あまりクラスメイトと一緒にいることは、ないらしい。
クラス分けの掲示板を確認して、近寄らない・話さない・関わらない の3ないを心がけようと思った。

入学式が終わり、一度寮に戻るとドレスに着替える。
今日は、お兄様がエスコートなのでお兄様のタイとお揃いのマリンブルーのドレスにした。
寮の入口へ迎えに来たお兄様は、にっこり笑う。

「今日も綺麗だね。エイミー、ファーストダンスは私と踊ってくれるかい?」
「もちろん。」

お兄様の腕に手を添えて歩き出そうとした時にアラン王子が現れた。

「おい。私がエスコートする約束だが。」

振り返るお兄様の目つきがきつくなり、周りの気温が一気に10度下がったような気がする。

「エイミー、どういうこと?」

私は入学式前に声をかけられた事を話した。

「ふーん。エイミーは断ったんだよね。」
「お兄様のエスコートが先約だと。」
「アラン王子殿下。そういう事ですので。私達は、お先に失礼します。」
「おい、私は王子だぞ。」
「それが何か?あなたは新入生で、私は最高学年の先輩で、生徒会長ですが?」
「…仕方ない。エスコートは君に譲ってあげよう。そのかわりギルフォード公爵令嬢、ファーストダンスは踊ってくれるね。」
「そちらも私が予約済みです。」
「くっ…で、ではセカンドで。」
「エイミー、どうする?」

あまり無下にしても後がうるさそうなので、とりあえずうなづいた。

「では、セカンドで許可しましょう。」
「なぜ、貴様に言われな…いや、わかった。」

お兄様の凄味にぶつぶつ言って引き下がってくれた。

それでもセカンドダンスは踊らないといけない。どうにかばっくれたいけれど、踊るしかないんだろうな。

パーティ会場は、ごったがえしていたが、お兄様の登場にしーんと静まり返り、ため息があちこちから聞こえる。中等部からの進学組はもちろん高位貴族の新入生もお茶会に参加してお兄様の事は知っているのだろう。漫画なら目がハートになっている女子学生がたくさんいる。
普通なら、私は『誰あの子』となるところだが、入学式で代表になったおかげで、会場にいる新入生は、妹とわかっていて羨ましそうな視線だけで済んで良かった。

「エイミー。踊っていただけますか。」
「喜んで。」

ホールの中央に出て、お兄様とワルツを踊る。引きこもっていたけれど、ちゃんと練習はしていたし、お兄様のリードは安心できる。

曲が終わり、隅へ移動しようとしたら、アラン王子に手を取られた。

「私と踊る約束だ。」

覚えていたのか。忘れてくれてよかったのに。

仕方なく、アラン王子と踊り始める。

「ギルフォード公爵令嬢、私もエイミーと呼んでいいか。君のような美しく聡明な女性に会った事がない。なぜ、今まで社交の場に出て来なかったんだ。」

アラン王子、やはりバカなんですね。私があなたの婚約者だった事は忘却の彼方ですか。

「殿下?」
「私のことはアランと呼んで欲しい。君が入学式の壇上で私を見てくれて嬉しかった。」

あれは、私と気付いて恥ずかしかったのではなかったの⁈

「殿下、あのですね。」
「アランと呼べ。近いうちに宰相にエイミーと婚約する話をしようと思う。楽しみに待っていてくれ。」

アラン王子は、私の意見など聞かずに曲の終了とともに近寄ってきたマリナと踊り始めた。
私は、頭に?が浮かんだまま隅へ移動した。

お父様やお兄様が、アラン王子に何と言うのか怖いような楽しみなような…
入学式から3ないが徹底できないことが悲しいというか頭が痛かった。
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