上 下
9 / 46

8

しおりを挟む
翌朝、寮から登校するとクラスメイトの注目の的になっていた。
アラン王子とファーストダンスを踊ったからだとわかり、頭を抱えたくなる。私にはセカンドでもアラン王子は、一曲目を踊っていないからファーストダンスになるらしい。


私は引きこもりだったせいで、仲の良い令嬢もいない。早速、アラン王子のグループに取り込まれてしまった。
アーサー、アーロン、アンディの3人は昔アラン王子が私を苦手にしていたことは覚えているが、アラン王子が私と復縁(⁈)したと思っているらしく、何も言わない。
マリナはみんなにチヤホヤされていたところに私が乱入してきたと思っているらしく、みんながいる時は優しい聖女様でいるが、目がないと結構当たりがきつい。
お兄様が一緒にいる時と部屋に戻ってからだけが、のんびりできる時間になってしまったので、今日もランチは、お兄様との約束優先と言ってなんとか抜け出した。

「エイミー、大丈夫か。」
「まだ始まったばかりだし。選択授業が始まれば、会う時間も減るでしょう?それよりアラン殿下の婚約話は聞いた?」
「父上が陛下をシメてる。バカ王子を本当に次期国王にするつもりかって。」
「そうね。私が婚約者だったのがなかった事になっていると言うのか、同一人物とわかっていないのか、どちらにしてもダメダメよね。」

本当に呆れてため息しか出ない。

「いっそのこと、アーノルドと婚約するか?あいつなら、辛うじて私も父上も認められるし、みんなでキャンベルに移り住むのも可能だな。」
「宰相に見捨てられる国ってまずいんじゃない?」
「だが、私はあのバカのお守りにはなりたくないな。操るにもバカ過ぎて、何をやらかすかわからないし。」

今、この国を取り巻く環境は、平和そのものだ。だから、王子が呑気に学生生活を楽しんでいられるし、バカでもなんとかなるだろう。でも、そんな人の臣下は大変だろうなぁ。

「お兄様、私はアラン殿下と婚約するつもりはないから、守ってね。」
「もちろんだ。」

私の楽しくない学園生活は、こうして始まったのだった。

私はアラン王子やその他の皆さんと極力、同じ授業を取らないようにしたら、政治、経済と古代語など将来、官僚や学者になる予定の方ばかりの授業を選ぶことになってしまった。
もちろん、お妃教育や自宅学習と言う引きこもりで基本は全て学んで来たし、お父様やお兄様との会話に困る事はないように努力して来たので、1ヶ月経った今では、周りの男子学生と意見を交換できる授業は楽しいものになったけど。

「エイミー、なぜ同じ授業を取らないのだ。」

午前の授業が終わり、お兄様との待ち合わせ場所に向かう途中、アラン王子に見つかってしまい、腕を取られる。

「アラン殿下。私、急いでおりますので。それに授業は興味のあるものを取るものですから。」

多少、避けましたが。
あなたのおかげで、令嬢内でボッチですし。
バカでも王子。というか他の令嬢には王子サマは、キラキラ憧れの対象。見た目はいいし、権力もある。結婚相手としては、最上の部類だから私はやっかまれている。

「将来のためにしっかり勉強するのが学生の本分ではないですか。」
「そうか。将来、王妃として私の補佐をするために努力してくれているのか。エイミーは。」
「は⁈」

呆れて令嬢にあるまじき声を出した私に気付かず、アラン王子はひとりでうなづいている。
私、こんなに話を聞かないこの人から逃げられるのかしら。ものすごく不安になってきた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

EDGE LIFE

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:20

楽しい幼ちん園

BL / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:133

夢見の館

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

男嫌いのシングルマザーの俺VS絶対俺を番にしたい男

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,765

【BL】死んだ俺と、吸血鬼の嫌い!

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:240

赦(ゆる)されぬ禁じられた恋

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

恋愛サティスファクション

BL / 連載中 24h.ポイント:469pt お気に入り:28

そりは"えちぅど"。

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

BL / 連載中 24h.ポイント:667pt お気に入り:783

処理中です...