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「ちょっといいかしら?」
授業が終わり、寮に戻ろうとしていた私にマリナが声をかけてきた。いつもなら、くっついているアーロンの姿はなくひとりらしい。
「何か、御用ですか。聖女様。」
「アラン様のことよ。いい加減、開放してあげて。」
「は?」
いけない、いけない。
びっくりして、つい令嬢にあるまじき声を出してしまった。
「アラン様は、婚約者のあなたに気を遣ってあなたのわがままに耐えて辛そうなのよ。親まで使って、圧力かけているそうじゃない。」
だいぶ状況把握に齟齬を生じていませんか?
私の事をわがままと言うなら、婚約を復活させない、ただ一点。
辛そうなのは、自分の主張が公爵家に通らないからで、幼い頃の自分のせいだろうが。
でも、マリナに言ってやる筋合いはないしなぁ。
「あなたには関係ないことじゃなくて。」
面倒になって、つい言い方がきつくなってしまった。
メラニーは、私が言い返せる時は黙って後ろにいてくれる。さすがに何も対応できないのでは、ただのお人形になってしまうから。
マリナは怒りに顔を赤らめている。
「私がアラン様をあなたの魔の手から助けるわ。私は聖女、あなたは悪役令嬢ですもの。」
やはり自分がヒロインと自覚がある、ゲームを知っている転生者か召喚者なのね。
「何を言いたいのか、わからないから失礼するわ。」
平静を装い、マリナの前を去る。かなり緊張していたようで、握り締めた手には爪の跡がついていた。
私を巻き込んでいるのは、アラン王子だし、マリナがアラン王子をつなぎとめる魅力を持ってくれれば、苦労はないのに…
翌日、今度はアーロンを連れてマリナがやって来た。
「エミルフェシア嬢、マリナに聞いた。アラン殿下を自分のものにするためにマリナに酷いことを言ったそうだな。」
「アーロン様、私はあなた方を構うつもりも構われるつもりもありません。聖女様は何か勘違いをされているんです。」
「口を出すなと言うのだな。マリナは傷ついているのに、勘違いと誤魔化して謝らないつもりか?」
人の話を聞けない神官って、どうなんだろう。将来、神官長がこの人じゃ先行き不安だわ。
「とにかく、私はアラン殿下と婚約していないのだから、巻き込まないでいただきたいですわ。」
「そんなばかな…アラン殿下はあなたと結婚するつもりだと。だが、思うようにならないと言っていたぞ。結婚したくないと言う意味じゃないのか。」
「ですから、殿下が婚約を打診して私の父に却下されているのです。思うようにならないとは、そういう事で、私が結婚したくないのです。」
「嘘だわ。エミルフェシアさん…そんな…」
「アラン殿下にお聞きになってみたら、どうですか。」
「何をしている?」
振り返るとそこにはアラン王子がいた。
「エイミー。どうかしたのか?」
「アラン様!エミルフェシアさんが、アラン殿下と婚約していないって嘘をついて、アラン様に迷惑をかけていることや私への暴言を誤魔化しているんです。」
「マリナ、私は迷惑などかけられていない。エイミーとは、近いうちに婚約の正式発表をするつもりだが、まだ公にしていないから、婚約はしていないと言ったんだろう。」
私がいつ婚約を了承したんだろう?陛下だって、お父様がうんと言わなければ、動けないはずなのに…
どこまでもお花畑の王子にどっと疲れが増す。やはり、学年が違うお兄様だとこういう隙間時間には助けを望めないのね。
メラニーも相手がアラン王子だと対応に困っているようで、ますます壁に同化している。
本当に危険ならすぐ助けてくれるだろうけれど、対処できない私が未熟なのよね。
「アラン殿下、私はあなたと婚約する気はございません。聖女様と仲良くされたらどうですか。」
「エイミー、やきもちを妬いてくれるんだね。マリナは側妃にしようと思っていたが、エイミーが嫌ならしないよ。」
「失礼します。」
本当にどこまでも平行線で、ぐったりと疲れたので、夕食の後、そのまま熟睡してしまい、翌朝慌てて、レポートを書くはめになってしまったのだった。
授業が終わり、寮に戻ろうとしていた私にマリナが声をかけてきた。いつもなら、くっついているアーロンの姿はなくひとりらしい。
「何か、御用ですか。聖女様。」
「アラン様のことよ。いい加減、開放してあげて。」
「は?」
いけない、いけない。
びっくりして、つい令嬢にあるまじき声を出してしまった。
「アラン様は、婚約者のあなたに気を遣ってあなたのわがままに耐えて辛そうなのよ。親まで使って、圧力かけているそうじゃない。」
だいぶ状況把握に齟齬を生じていませんか?
私の事をわがままと言うなら、婚約を復活させない、ただ一点。
辛そうなのは、自分の主張が公爵家に通らないからで、幼い頃の自分のせいだろうが。
でも、マリナに言ってやる筋合いはないしなぁ。
「あなたには関係ないことじゃなくて。」
面倒になって、つい言い方がきつくなってしまった。
メラニーは、私が言い返せる時は黙って後ろにいてくれる。さすがに何も対応できないのでは、ただのお人形になってしまうから。
マリナは怒りに顔を赤らめている。
「私がアラン様をあなたの魔の手から助けるわ。私は聖女、あなたは悪役令嬢ですもの。」
やはり自分がヒロインと自覚がある、ゲームを知っている転生者か召喚者なのね。
「何を言いたいのか、わからないから失礼するわ。」
平静を装い、マリナの前を去る。かなり緊張していたようで、握り締めた手には爪の跡がついていた。
私を巻き込んでいるのは、アラン王子だし、マリナがアラン王子をつなぎとめる魅力を持ってくれれば、苦労はないのに…
翌日、今度はアーロンを連れてマリナがやって来た。
「エミルフェシア嬢、マリナに聞いた。アラン殿下を自分のものにするためにマリナに酷いことを言ったそうだな。」
「アーロン様、私はあなた方を構うつもりも構われるつもりもありません。聖女様は何か勘違いをされているんです。」
「口を出すなと言うのだな。マリナは傷ついているのに、勘違いと誤魔化して謝らないつもりか?」
人の話を聞けない神官って、どうなんだろう。将来、神官長がこの人じゃ先行き不安だわ。
「とにかく、私はアラン殿下と婚約していないのだから、巻き込まないでいただきたいですわ。」
「そんなばかな…アラン殿下はあなたと結婚するつもりだと。だが、思うようにならないと言っていたぞ。結婚したくないと言う意味じゃないのか。」
「ですから、殿下が婚約を打診して私の父に却下されているのです。思うようにならないとは、そういう事で、私が結婚したくないのです。」
「嘘だわ。エミルフェシアさん…そんな…」
「アラン殿下にお聞きになってみたら、どうですか。」
「何をしている?」
振り返るとそこにはアラン王子がいた。
「エイミー。どうかしたのか?」
「アラン様!エミルフェシアさんが、アラン殿下と婚約していないって嘘をついて、アラン様に迷惑をかけていることや私への暴言を誤魔化しているんです。」
「マリナ、私は迷惑などかけられていない。エイミーとは、近いうちに婚約の正式発表をするつもりだが、まだ公にしていないから、婚約はしていないと言ったんだろう。」
私がいつ婚約を了承したんだろう?陛下だって、お父様がうんと言わなければ、動けないはずなのに…
どこまでもお花畑の王子にどっと疲れが増す。やはり、学年が違うお兄様だとこういう隙間時間には助けを望めないのね。
メラニーも相手がアラン王子だと対応に困っているようで、ますます壁に同化している。
本当に危険ならすぐ助けてくれるだろうけれど、対処できない私が未熟なのよね。
「アラン殿下、私はあなたと婚約する気はございません。聖女様と仲良くされたらどうですか。」
「エイミー、やきもちを妬いてくれるんだね。マリナは側妃にしようと思っていたが、エイミーが嫌ならしないよ。」
「失礼します。」
本当にどこまでも平行線で、ぐったりと疲れたので、夕食の後、そのまま熟睡してしまい、翌朝慌てて、レポートを書くはめになってしまったのだった。
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