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鬱陶しいアラン王子を何とか避けつつ、他の3人や聖女様と会わずに過ごし、何とか夏休みを迎えた。
今年は、少し家で休んだ後、キャンベル王国へお兄様と遊びに行くことにした。
お兄様が卒業してしまうとゆっくりできない事と国外にいた方がバカ王子に絡まれないだろうというお父様の考えで決まった事だ。
キャンベル王宮では、アーノルドが待っていた。
「アーノルド。久しぶりね。すっかり背が高くなって、かっこいい王子様になっちゃったわね。」
「エイミーにふさわしい男にならないとギルフォード公爵やアルヴィン兄上に認めてもらえないからね。」
私より20センチ高いアーノルドは、見上げないと顔を見て話せないから、意識して顔を上げると赤くなったアーノルドと目が合う。
「かわいすぎて、死ぬ。」
「何言っているんだ。アーノルド。私が不埒なことを考えないように殺してあげようか。」
「アルヴィン兄上。ちゃんと約束通り、来年度学園に留学するために準備しているから、そんなこと言わないでください。」
「使える駒は潰さないよ。」
相変わらずお兄様とアーノルドの会話は、どちらが上か分からない。それでも2人が私の為に動いてくれるのが嬉しい。
「アルヴィン兄上、こちらにいる間に私とエイミーの婚約発表したいのですが。」
「父上の了承はもらっている。本当は、アーノルドにもエイミーはやりたくないが、仕方がない。」
「え⁈聞いてないよ。」
「言わなかったからな。エイミーとアーノルドは、学園を卒業したら、結婚する。これは、決定だ。それに伴って、父上は、宰相を辞めてギルフォード公爵家は、キャンベル王国に移住してアーノルドを支えるつもりだ。」
「お兄様…」
いよいよアラン王子のせいで、王家が見放されたらしい。普通、責任感から宰相が他所の国に移住なんて絶対あり得ない。だっておそらく国王以上に国の全てを知っている宰相が、他国に情報を流したら国の存亡の危機だもの。
「表向き、父上は死亡して母上がキャンベル王国に戻る事になり、私達も一緒に移住するという話になるよ。陛下がアラン王子に甘過ぎて話にならないから、エイミーを守るためには、なんだってやるんだよ。もちろん、我が家の矜持としては、キャンベル王国に今まで知り得たことを教えるようなつもりはないし、そこはキャンベル王国も了承した。」
なんだか話が大きくなってしまったらしい。
私はお兄様の小姑をしながら、まったり領地で過ごすつもりだったのに。
「私がちゃんとアラン王子にお断りできないせいね。」
「言ってわかる相手じゃないだろう?エイミーは避けているのに、寄ってくる。陛下に言ってもアラン王子が望むようになったのだから、エイミーも幸せだろうと婚約打診してくる。」
「エイミー、私と婚約するのは嫌か?」
アーノルドが優しく笑う。
「アーノルドなら政略結婚でも嬉しいわよ。」
「それじゃ、この休暇中に私の事を好きになってもらえるようにがんばるよ。」
「アーノルドの事、好きよ。」
「それは、従兄弟とか友人としてだろう。男としてアルヴィン兄上より好きになって欲しい。」
やはりお兄様という壁を乗り越えないと私の恋愛は、始まらないと分かっていたのね。
「お兄様、私、アーノルドと2人きりで過ごしていい?お兄様がいると私たち何も変わらないと思うから。」
「仕方ない。しかし侍女は必ず置くように。」
「それは、もちろん。」
私も覚悟を決めて、アーノルドと向き合うべきなんだろう。
ゲームとは違う展開過ぎてどうなるか分からないけれど、ゲームメンバーと関わらないモブになって、幸せになるにはアーノルドの手を取るのが、一番のような気がするから。
「今日は、疲れているだろうから、ゆっくり休んで。また明日、会いに来る。」
「アーノルド。よろしくお願いします。」
アーノルドが居なくなってからお兄様に確認する。
「みんなでキャンベル王国に移住するってできるの?」
「父上が表舞台から引退すればね。エイミー、忘れているかもしれないけどね。私達はキャンベル王女の母上の子どもで、この国の王位継承権があるんだよ。」
アーノルドには兄弟がいない。国王陛下が王妃様を溺愛されていて、側妃もいない。男子であるお兄様は、アーノルドがいなければ、王になれる存在なんだ。
「まぁ私は表に立つより裏で働く方がいいよ。アーノルドなら楽だし。」
お兄様、裏方で支えるの?
何かニュアンスが違うような気がするのだけれど…
暗躍?裏の王?
今年は、少し家で休んだ後、キャンベル王国へお兄様と遊びに行くことにした。
お兄様が卒業してしまうとゆっくりできない事と国外にいた方がバカ王子に絡まれないだろうというお父様の考えで決まった事だ。
キャンベル王宮では、アーノルドが待っていた。
「アーノルド。久しぶりね。すっかり背が高くなって、かっこいい王子様になっちゃったわね。」
「エイミーにふさわしい男にならないとギルフォード公爵やアルヴィン兄上に認めてもらえないからね。」
私より20センチ高いアーノルドは、見上げないと顔を見て話せないから、意識して顔を上げると赤くなったアーノルドと目が合う。
「かわいすぎて、死ぬ。」
「何言っているんだ。アーノルド。私が不埒なことを考えないように殺してあげようか。」
「アルヴィン兄上。ちゃんと約束通り、来年度学園に留学するために準備しているから、そんなこと言わないでください。」
「使える駒は潰さないよ。」
相変わらずお兄様とアーノルドの会話は、どちらが上か分からない。それでも2人が私の為に動いてくれるのが嬉しい。
「アルヴィン兄上、こちらにいる間に私とエイミーの婚約発表したいのですが。」
「父上の了承はもらっている。本当は、アーノルドにもエイミーはやりたくないが、仕方がない。」
「え⁈聞いてないよ。」
「言わなかったからな。エイミーとアーノルドは、学園を卒業したら、結婚する。これは、決定だ。それに伴って、父上は、宰相を辞めてギルフォード公爵家は、キャンベル王国に移住してアーノルドを支えるつもりだ。」
「お兄様…」
いよいよアラン王子のせいで、王家が見放されたらしい。普通、責任感から宰相が他所の国に移住なんて絶対あり得ない。だっておそらく国王以上に国の全てを知っている宰相が、他国に情報を流したら国の存亡の危機だもの。
「表向き、父上は死亡して母上がキャンベル王国に戻る事になり、私達も一緒に移住するという話になるよ。陛下がアラン王子に甘過ぎて話にならないから、エイミーを守るためには、なんだってやるんだよ。もちろん、我が家の矜持としては、キャンベル王国に今まで知り得たことを教えるようなつもりはないし、そこはキャンベル王国も了承した。」
なんだか話が大きくなってしまったらしい。
私はお兄様の小姑をしながら、まったり領地で過ごすつもりだったのに。
「私がちゃんとアラン王子にお断りできないせいね。」
「言ってわかる相手じゃないだろう?エイミーは避けているのに、寄ってくる。陛下に言ってもアラン王子が望むようになったのだから、エイミーも幸せだろうと婚約打診してくる。」
「エイミー、私と婚約するのは嫌か?」
アーノルドが優しく笑う。
「アーノルドなら政略結婚でも嬉しいわよ。」
「それじゃ、この休暇中に私の事を好きになってもらえるようにがんばるよ。」
「アーノルドの事、好きよ。」
「それは、従兄弟とか友人としてだろう。男としてアルヴィン兄上より好きになって欲しい。」
やはりお兄様という壁を乗り越えないと私の恋愛は、始まらないと分かっていたのね。
「お兄様、私、アーノルドと2人きりで過ごしていい?お兄様がいると私たち何も変わらないと思うから。」
「仕方ない。しかし侍女は必ず置くように。」
「それは、もちろん。」
私も覚悟を決めて、アーノルドと向き合うべきなんだろう。
ゲームとは違う展開過ぎてどうなるか分からないけれど、ゲームメンバーと関わらないモブになって、幸せになるにはアーノルドの手を取るのが、一番のような気がするから。
「今日は、疲れているだろうから、ゆっくり休んで。また明日、会いに来る。」
「アーノルド。よろしくお願いします。」
アーノルドが居なくなってからお兄様に確認する。
「みんなでキャンベル王国に移住するってできるの?」
「父上が表舞台から引退すればね。エイミー、忘れているかもしれないけどね。私達はキャンベル王女の母上の子どもで、この国の王位継承権があるんだよ。」
アーノルドには兄弟がいない。国王陛下が王妃様を溺愛されていて、側妃もいない。男子であるお兄様は、アーノルドがいなければ、王になれる存在なんだ。
「まぁ私は表に立つより裏で働く方がいいよ。アーノルドなら楽だし。」
お兄様、裏方で支えるの?
何かニュアンスが違うような気がするのだけれど…
暗躍?裏の王?
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