14 / 46
13
しおりを挟む
2週間のほとんどをアーノルドと過ごし、推しのお兄様と恋愛は違うと頭で理解できた頃、王宮主催のパーティーに私とお兄様も出席することになった。
内々に進めてきた私とアーノルドの婚約発表を兼ねているということで、アーノルドの用意してくれたドレスで出席することにした。
白いドレスに光沢のあるチュールをつけているので、光が当たるたびに違う色に見える。
アーノルドの白い軍服の正装と並ぶとウェディングドレスのようだ。
大広間の入口で入場の順番を待っているとアーノルドがこちらを覗き込む。
「父上と母上の次に入場するから。緊張してる?」
「ちょっと…」
「じゃあ、おまじない。」
そう言って、首の付け根辺りにちゅっとキスをされた。
「あ、アーノルド‼︎」
「行くよ。」
私は顔を赤くしたまま、アーノルドのエスコートで会場いりしたのだった。
招待客の中には、私たち兄妹が滞在していることを知っている者もいるだろうが、私だけアーノルドのエスコートで入場してくることは、普通ないので、ざわめいている。
国王陛下が話し始めた。
「静かに!我が子アーノルドとグレンスティッド王国、ギルフォード公爵令嬢エミルフェシアとの婚約が正式に決まったことを報告する。」
「他国の令嬢と?」
「どういう事だ?」
口々に話しだし、会場は大騒ぎだ。事前に聞いていなかった貴族たちは慌て、令嬢たちは茫然としていた。
友好国同士や戦後処理で二国間協議の結果、婚約からの結婚はあるが相手国からの打診がないことは珍しい。
「まさか、ギルフォードって。」
誰かの声に陛下が答えた。
「そうだ。姉上の娘だ。」
その一言で、なぜか納得された空気に変わる。お母様のこの国での人気の高さがうかがわれる。
私、お母様というハードルに挑まないといけないのかしら?
「私が希望し、成った婚約だ。エミルフェシアにも相応の対応を頼む。」
アーノルドの言葉の後に深く礼をする。
「エミルフェシアでございます。皆さま、よろしくお願いいたします。」
幼い頃からのお妃教育が、まさか他国で役に立つとは思いませんでした。
ファーストダンスは、2人きりでアーノルドと。
2曲目もそのまま踊り続ける。
なかなか手を離そうとしないアーノルドから、3曲目にお兄様が横取りするように手を取られた。
「かわいい妹と少しくらい踊らせろ。」
「お兄様ったら。」
相変わらずのお兄様と楽しく踊って、席に戻る。
アーノルドは、令嬢たちに取り囲まれて、困ったような顔をしていたが誰とも踊らず、私の横の席に戻ってきた。
お兄様は?と見ると、こちらも令嬢に取り囲まれている。色気ダダ漏れで、皆さん目がハートですね。
「アルヴィン兄上が、キャンベルに来ると知ったら、あの令嬢たちからアプローチが凄いだろうね。」
「でも、私のお眼鏡に叶う方でないと、認めませんわ。」
「本当に兄妹仲が良いというか、妬けるよ。」
「アーノルドは、お兄様と違って特別なんだから。」
絶対、いま顔が赤いと自覚する。
「かわいいこと言ってくれるね。嬉しいな。」
「アーノルドったら…とにかく私はお兄様の小姑を目指していたのだから、そこは譲れないと言うか…」
「私がやきもち妬かない程度にしてね。」
「…はい。」
会場の隅で甘々な雰囲気になってしまった。
「ところで留学するのは、春からで大丈夫?行くなら一緒に行くよ。」
「でもアーノルドだってお仕事あるし、そんな長期留学する必要ある?」
「ところでエイミーは、学園を卒業したい?」
「今までは当たり前と思っていたけれど、キャンベルに来るならこっちで勉強してもいいのかな。」
「じゃあ、夏休み明けから留学して、春にアルヴィン兄上の卒業時にみんなでこっちに移るってのは、どうかな?」
「私はいいけど…アーノルドの留学目的が…」
「私は本来なら留学するつもりなかったよ。エイミーを守るために兄上と約束して準備してただけだから。」
そうよね。キャンベル王国の学校を成績優秀でスキップ卒業して、陛下の補佐をすでに始めているアーノルドが、わざわざ他国の学園に留学するのっておかしいもの。
「陛下の許可をとらないといけないわね。」
「そっちは、大丈夫。エイミーが最優先なのは、わかっているから。」
「陛下に私が尻に敷いているように思われなきゃいいけど。」
「どちらかといえば、私がエイミーにべた惚れだって思っているよ。」
絶対、また顔が赤いと思う。
なんか悔しくて横を向いてごまかした。
内々に進めてきた私とアーノルドの婚約発表を兼ねているということで、アーノルドの用意してくれたドレスで出席することにした。
白いドレスに光沢のあるチュールをつけているので、光が当たるたびに違う色に見える。
アーノルドの白い軍服の正装と並ぶとウェディングドレスのようだ。
大広間の入口で入場の順番を待っているとアーノルドがこちらを覗き込む。
「父上と母上の次に入場するから。緊張してる?」
「ちょっと…」
「じゃあ、おまじない。」
そう言って、首の付け根辺りにちゅっとキスをされた。
「あ、アーノルド‼︎」
「行くよ。」
私は顔を赤くしたまま、アーノルドのエスコートで会場いりしたのだった。
招待客の中には、私たち兄妹が滞在していることを知っている者もいるだろうが、私だけアーノルドのエスコートで入場してくることは、普通ないので、ざわめいている。
国王陛下が話し始めた。
「静かに!我が子アーノルドとグレンスティッド王国、ギルフォード公爵令嬢エミルフェシアとの婚約が正式に決まったことを報告する。」
「他国の令嬢と?」
「どういう事だ?」
口々に話しだし、会場は大騒ぎだ。事前に聞いていなかった貴族たちは慌て、令嬢たちは茫然としていた。
友好国同士や戦後処理で二国間協議の結果、婚約からの結婚はあるが相手国からの打診がないことは珍しい。
「まさか、ギルフォードって。」
誰かの声に陛下が答えた。
「そうだ。姉上の娘だ。」
その一言で、なぜか納得された空気に変わる。お母様のこの国での人気の高さがうかがわれる。
私、お母様というハードルに挑まないといけないのかしら?
「私が希望し、成った婚約だ。エミルフェシアにも相応の対応を頼む。」
アーノルドの言葉の後に深く礼をする。
「エミルフェシアでございます。皆さま、よろしくお願いいたします。」
幼い頃からのお妃教育が、まさか他国で役に立つとは思いませんでした。
ファーストダンスは、2人きりでアーノルドと。
2曲目もそのまま踊り続ける。
なかなか手を離そうとしないアーノルドから、3曲目にお兄様が横取りするように手を取られた。
「かわいい妹と少しくらい踊らせろ。」
「お兄様ったら。」
相変わらずのお兄様と楽しく踊って、席に戻る。
アーノルドは、令嬢たちに取り囲まれて、困ったような顔をしていたが誰とも踊らず、私の横の席に戻ってきた。
お兄様は?と見ると、こちらも令嬢に取り囲まれている。色気ダダ漏れで、皆さん目がハートですね。
「アルヴィン兄上が、キャンベルに来ると知ったら、あの令嬢たちからアプローチが凄いだろうね。」
「でも、私のお眼鏡に叶う方でないと、認めませんわ。」
「本当に兄妹仲が良いというか、妬けるよ。」
「アーノルドは、お兄様と違って特別なんだから。」
絶対、いま顔が赤いと自覚する。
「かわいいこと言ってくれるね。嬉しいな。」
「アーノルドったら…とにかく私はお兄様の小姑を目指していたのだから、そこは譲れないと言うか…」
「私がやきもち妬かない程度にしてね。」
「…はい。」
会場の隅で甘々な雰囲気になってしまった。
「ところで留学するのは、春からで大丈夫?行くなら一緒に行くよ。」
「でもアーノルドだってお仕事あるし、そんな長期留学する必要ある?」
「ところでエイミーは、学園を卒業したい?」
「今までは当たり前と思っていたけれど、キャンベルに来るならこっちで勉強してもいいのかな。」
「じゃあ、夏休み明けから留学して、春にアルヴィン兄上の卒業時にみんなでこっちに移るってのは、どうかな?」
「私はいいけど…アーノルドの留学目的が…」
「私は本来なら留学するつもりなかったよ。エイミーを守るために兄上と約束して準備してただけだから。」
そうよね。キャンベル王国の学校を成績優秀でスキップ卒業して、陛下の補佐をすでに始めているアーノルドが、わざわざ他国の学園に留学するのっておかしいもの。
「陛下の許可をとらないといけないわね。」
「そっちは、大丈夫。エイミーが最優先なのは、わかっているから。」
「陛下に私が尻に敷いているように思われなきゃいいけど。」
「どちらかといえば、私がエイミーにべた惚れだって思っているよ。」
絶対、また顔が赤いと思う。
なんか悔しくて横を向いてごまかした。
23
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)
浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。
運命のまま彼女は命を落とす。
だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる