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2週間のほとんどをアーノルドと過ごし、推しのお兄様と恋愛は違うと頭で理解できた頃、王宮主催のパーティーに私とお兄様も出席することになった。
内々に進めてきた私とアーノルドの婚約発表を兼ねているということで、アーノルドの用意してくれたドレスで出席することにした。

白いドレスに光沢のあるチュールをつけているので、光が当たるたびに違う色に見える。
アーノルドの白い軍服の正装と並ぶとウェディングドレスのようだ。

大広間の入口で入場の順番を待っているとアーノルドがこちらを覗き込む。

「父上と母上の次に入場するから。緊張してる?」
「ちょっと…」
「じゃあ、おまじない。」

そう言って、首の付け根辺りにちゅっとキスをされた。

「あ、アーノルド‼︎」
「行くよ。」

私は顔を赤くしたまま、アーノルドのエスコートで会場いりしたのだった。

招待客の中には、私たち兄妹が滞在していることを知っている者もいるだろうが、私だけアーノルドのエスコートで入場してくることは、普通ないので、ざわめいている。

国王陛下が話し始めた。

「静かに!我が子アーノルドとグレンスティッド王国、ギルフォード公爵令嬢エミルフェシアとの婚約が正式に決まったことを報告する。」

「他国の令嬢と?」
「どういう事だ?」

口々に話しだし、会場は大騒ぎだ。事前に聞いていなかった貴族たちは慌て、令嬢たちは茫然としていた。
友好国同士や戦後処理で二国間協議の結果、婚約からの結婚はあるが相手国からの打診がないことは珍しい。

「まさか、ギルフォードって。」

誰かの声に陛下が答えた。

「そうだ。姉上の娘だ。」

その一言で、なぜか納得された空気に変わる。お母様のこの国での人気の高さがうかがわれる。
私、お母様というハードルに挑まないといけないのかしら?

「私が希望し、成った婚約だ。エミルフェシアにも相応の対応を頼む。」

アーノルドの言葉の後に深く礼をする。

「エミルフェシアでございます。皆さま、よろしくお願いいたします。」

幼い頃からのお妃教育が、まさか他国で役に立つとは思いませんでした。

ファーストダンスは、2人きりでアーノルドと。
2曲目もそのまま踊り続ける。
なかなか手を離そうとしないアーノルドから、3曲目にお兄様が横取りするように手を取られた。

「かわいい妹と少しくらい踊らせろ。」
「お兄様ったら。」

相変わらずのお兄様と楽しく踊って、席に戻る。

アーノルドは、令嬢たちに取り囲まれて、困ったような顔をしていたが誰とも踊らず、私の横の席に戻ってきた。
お兄様は?と見ると、こちらも令嬢に取り囲まれている。色気ダダ漏れで、皆さん目がハートですね。

「アルヴィン兄上が、キャンベルに来ると知ったら、あの令嬢たちからアプローチが凄いだろうね。」
「でも、私のお眼鏡に叶う方でないと、認めませんわ。」
「本当に兄妹仲が良いというか、妬けるよ。」
「アーノルドは、お兄様と違って特別なんだから。」

絶対、いま顔が赤いと自覚する。

「かわいいこと言ってくれるね。嬉しいな。」
「アーノルドったら…とにかく私はお兄様の小姑を目指していたのだから、そこは譲れないと言うか…」
「私がやきもち妬かない程度にしてね。」
「…はい。」

会場の隅で甘々な雰囲気になってしまった。

「ところで留学するのは、春からで大丈夫?行くなら一緒に行くよ。」
「でもアーノルドだってお仕事あるし、そんな長期留学する必要ある?」
「ところでエイミーは、学園を卒業したい?」
「今までは当たり前と思っていたけれど、キャンベルに来るならこっちで勉強してもいいのかな。」
「じゃあ、夏休み明けから留学して、春にアルヴィン兄上の卒業時にみんなでこっちに移るってのは、どうかな?」
「私はいいけど…アーノルドの留学目的が…」
「私は本来なら留学するつもりなかったよ。エイミーを守るために兄上と約束して準備してただけだから。」

そうよね。キャンベル王国の学校を成績優秀でスキップ卒業して、陛下の補佐をすでに始めているアーノルドが、わざわざ他国の学園に留学するのっておかしいもの。

「陛下の許可をとらないといけないわね。」
「そっちは、大丈夫。エイミーが最優先なのは、わかっているから。」
「陛下に私が尻に敷いているように思われなきゃいいけど。」
「どちらかといえば、私がエイミーにべた惚れだって思っているよ。」

絶対、また顔が赤いと思う。
なんか悔しくて横を向いてごまかした。
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