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16.歌音2 side翔太
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昨日、帰りに考えて彼女が、乗車して来た駅に当たりをつけ、いつもより1本早い急行から降りてみた。
あの中学の学区で急行が止まる駅はひとつしかない。今日からは、普通電車に乗るように伝えるだけのつもりだった。
彼女を探してキョロキョロしていると急行を見送り、普通電車を待とうとしているのかベンチに座っているのを見つけ、目の前に立つ。
落ちた影に気付いたのか彼女が見上げた。
「おはよう。」
「吉田くん…お、はよ…どうして?」
「片目じゃ大変だろ?治るまで送り迎えしようと思った。」
「私がこの駅って…」
「いけたにさん」
分かっていたが、昨日の中原が間違えたようにわざと言って反応を楽しんでしまう。
それに名前で呼ぶ、いい理由付けになるだろうと考えてしまうあたり、俺もあさましい。
「いけがや!」
「あ、ごめん。いけがやさん…面倒だな。歌音が竜北中って言ってたから、学区考えると急行止まるの、ここだけだから…」
なし崩しに歌音と呼べる状況に喜んでいた。
「それで怪我の具合は?」
「目は辛うじて外れてたから、パンダみたいな内出血と腫れが引けば大丈夫だった。」
「良かった。」
本当にホッとした。かわいい顔に残る傷なんか付けたら、俺が俺を許せない。
だけどそんな俺の態度が歌音は気に入らないようだ。
「でも、おかげで入学式にでれなかったし、こんな顔だから写真も撮れなくて、遅刻の上に悪目立ちしたのは、ぜーんぶっ吉田くんのせいなんだけど…」
「だから責任とるから。一生そばにいるから…」
「そう言う問題じゃないの!」
俺の告白は、あっさりスルーされた。
歌音の声が大きくなっていたようで、周りの電車待ちの大人たちの注目を浴びてしまう。
「とにかく俺が、歌音の高校生活を充実させてやるから、任せろ。」
歌音と2人で楽しい高校生活を送りたい俺は、必死にアピールしていた。
歌音は、まだ納得していないようだったが、ここからさらに40分遠くから急行でここまで来て、普通に乗り換え、学校まで一緒に行くと言うと断り切れなかったのか、二人で一緒に登校することになった。
「おっす。タケ!」
「翔太、遅い…池谷さんと一緒に来たのか?」
教室に入った途端、幼稚園から一緒のタケに気付かれた。
「歌音のケガが治るまで、ボディーガードなんだ。」
「なぁんだ。翔太に生まれて初めて彼女が出来たと思ったのに。
ん?歌音って、いきなり名前を呼び捨てかよ。」
「仲良くなるには、まず呼び方だろ?」
とにかく、ボディーガード役をしている間になんとか距離をつめていきたいと考えていた。
「池谷さん、俺は竹下由孝。翔太とは幼稚園から一緒なんだ。タケって呼んで。」
「タケくん、よろしく。」
俺は苗字の吉田くんで、タケがタケくんってなんだよ。
そんな事でタケに嫉妬する俺は心が狭いんだろうか。
でもクラスに馴染むためにもタケと仲良くなるのは、大事だ。
あいつは顔が広いし、人懐っこいから…我慢、我慢。
その日の午後ホームルームで、役員決めを話し合う時のこと。
俺は委員に立候補した。
歌音と楽しい思い出を作るためには、積極的な参加は必要だからな。
「俺、文化祭実行委員やります。相棒は、歌音で。」
「嫁との共同作業だな。」
タケが肯定してくれて、歌音が実行委員候補になった。
「私に選択肢はないの?」
「これやれば、クラスのみんなとすぐ仲良くなれるから。」
そう言えば、歌音も自分から手を上げてくれたので、あっさり決まったのだった。
俺と歌音の中途半端な距離感の付き合いはここから始まったんだよな。
あの中学の学区で急行が止まる駅はひとつしかない。今日からは、普通電車に乗るように伝えるだけのつもりだった。
彼女を探してキョロキョロしていると急行を見送り、普通電車を待とうとしているのかベンチに座っているのを見つけ、目の前に立つ。
落ちた影に気付いたのか彼女が見上げた。
「おはよう。」
「吉田くん…お、はよ…どうして?」
「片目じゃ大変だろ?治るまで送り迎えしようと思った。」
「私がこの駅って…」
「いけたにさん」
分かっていたが、昨日の中原が間違えたようにわざと言って反応を楽しんでしまう。
それに名前で呼ぶ、いい理由付けになるだろうと考えてしまうあたり、俺もあさましい。
「いけがや!」
「あ、ごめん。いけがやさん…面倒だな。歌音が竜北中って言ってたから、学区考えると急行止まるの、ここだけだから…」
なし崩しに歌音と呼べる状況に喜んでいた。
「それで怪我の具合は?」
「目は辛うじて外れてたから、パンダみたいな内出血と腫れが引けば大丈夫だった。」
「良かった。」
本当にホッとした。かわいい顔に残る傷なんか付けたら、俺が俺を許せない。
だけどそんな俺の態度が歌音は気に入らないようだ。
「でも、おかげで入学式にでれなかったし、こんな顔だから写真も撮れなくて、遅刻の上に悪目立ちしたのは、ぜーんぶっ吉田くんのせいなんだけど…」
「だから責任とるから。一生そばにいるから…」
「そう言う問題じゃないの!」
俺の告白は、あっさりスルーされた。
歌音の声が大きくなっていたようで、周りの電車待ちの大人たちの注目を浴びてしまう。
「とにかく俺が、歌音の高校生活を充実させてやるから、任せろ。」
歌音と2人で楽しい高校生活を送りたい俺は、必死にアピールしていた。
歌音は、まだ納得していないようだったが、ここからさらに40分遠くから急行でここまで来て、普通に乗り換え、学校まで一緒に行くと言うと断り切れなかったのか、二人で一緒に登校することになった。
「おっす。タケ!」
「翔太、遅い…池谷さんと一緒に来たのか?」
教室に入った途端、幼稚園から一緒のタケに気付かれた。
「歌音のケガが治るまで、ボディーガードなんだ。」
「なぁんだ。翔太に生まれて初めて彼女が出来たと思ったのに。
ん?歌音って、いきなり名前を呼び捨てかよ。」
「仲良くなるには、まず呼び方だろ?」
とにかく、ボディーガード役をしている間になんとか距離をつめていきたいと考えていた。
「池谷さん、俺は竹下由孝。翔太とは幼稚園から一緒なんだ。タケって呼んで。」
「タケくん、よろしく。」
俺は苗字の吉田くんで、タケがタケくんってなんだよ。
そんな事でタケに嫉妬する俺は心が狭いんだろうか。
でもクラスに馴染むためにもタケと仲良くなるのは、大事だ。
あいつは顔が広いし、人懐っこいから…我慢、我慢。
その日の午後ホームルームで、役員決めを話し合う時のこと。
俺は委員に立候補した。
歌音と楽しい思い出を作るためには、積極的な参加は必要だからな。
「俺、文化祭実行委員やります。相棒は、歌音で。」
「嫁との共同作業だな。」
タケが肯定してくれて、歌音が実行委員候補になった。
「私に選択肢はないの?」
「これやれば、クラスのみんなとすぐ仲良くなれるから。」
そう言えば、歌音も自分から手を上げてくれたので、あっさり決まったのだった。
俺と歌音の中途半端な距離感の付き合いはここから始まったんだよな。
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