恋ごよみ

酒田愛子(元・坂田藍子)

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18.理くんとあずみちゃん

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 2年になる頃にしょーたが、同じ学科で仲の良い春日くんと市来くんを誘って、子どもの野外遊び研究会を作った。

 私も参加して、会計や書記的な雑務を担当することにした。
カウンセラーを目指す私にも役立つ遊びからのアプローチもあるだろうし、しょーたと一緒に活動出来るのだから。

 新1年生を勧誘したら、小学校教師志望の橋本菜摘ちゃんと築地友梨ちゃん、そしてなぜか経済学部の宝田理くんの3人が入ってくれた。

 理くんは、宝田産業という大企業の御曹司。しょーたとは、学年が違うものの凰蘭に幼稚園から通っていた者同士と言うこともあり、仲良しだったようだ。

「吉田先輩が、面白そうなサークル作ったって聞いたから。」

「理、お前そのまま凰蘭大に行かなかったのかよ。」

 まずそこから?

「凰蘭じゃもう人脈出来たから、
大学は違う人と知り合っておこうと思ったんだけど、卒業したらできない自分の好きなことをサークルで探そうと調べてたら、吉田先輩みつけて…先輩とならゼッテー面白いと思った。」

 理くんはしょーたのことをすごく気に入ってくれているようで、しょーたも理くんが弟みたいに思っている。

 ただ学部では身バレしているせいで、あまり企業に興味のない教師志望が多いサークル内でしか気が抜けないし、将来的には家を継がなくちゃいけなくて、自由な今を楽しみたいと思ってしまうのは、少しかわいそうだと思っていた。

 そんな理くんが明らかに変わったのは、理くんが3年の春、私たち4年は就活や採用試験で忙しくなり、サークルの代替わりで菜摘ちゃんに次期リーダーと考えていた新入生歓迎会のピクニックだった。

 相良あずみちゃんが新入生歓迎会に参加して、理くんと話をしてから、理くんの様子が変だ。

 私も人の事を言えるほど恋愛のプロじゃないけど、明らかに理くんはあずみちゃんに一目惚れ。

 たぶん理くんの家とか見た目に惹かれて貼り付いてくる女の子じゃないからだろうけど。

 歓迎会の後、しょーたに恋愛相談を始めた姿を見た時には、しょーたじゃ相談相手には物足りないんでは?と心配になる。

「ねぇ理くん。しょーたの私と付き合い始めるまでの態度を真似してたら、付き合うまでに大学卒業になっちゃわないかな?」

「確かに歌音先輩の言う通りですね。」

 真剣な顔で返事する理くんに、しょーたは「このやろっ」とか言いながら、戯れている。
 
「理くんがあずみちゃんと話をたくさんして、お互いいい雰囲気ならどこかのタイミングで告白してね。」

「はい。歌音先輩の方が頼りになります。」

 そんな二人が合宿初日に、みんなな前で

「付き合う事になりました。」

と報告してくれた事は、自分の事のように嬉しかった。

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