雪の国の花

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長い冬

 サーディス辺境伯領を外界から閉ざすほどの冬がやって来た。雪が建物の一階を埋めてしまい、買い物もできない為、保存している材料を工夫した料理を作ったり、暖かい暖炉のそばで読書や手芸をして過ごす毎日だ。

「洗濯だけは辛いわね。」

サリーと同じタイミングで洗濯当番になり、一緒に作業をしながらおしゃべりをする。  

「そういえば、あれからトム兄に会ってる？」

「お休みの日に2回ほど買い物に商店に行った時に会ったけれど、そのくらいよ。」

「最初、いい雰囲気だと思ってたんだけど、ダメだった？」

「トムさんが悪いのではないの。わたしがトムさんと一緒にいて安心はできるんだけど、ときめかないって言うのか...贅沢よね。」

「フェル、好きな人がいるの？」

「ええ。実らないとは思うけれど想うことはいいかなって...」

「残念。トム兄は失恋かぁ。それで誰なの。」

サリーの問いに答えていいのか？迷っていたところにレリアがやって来た。

「ここにいたのね。サリー 旦那様のところにお客様がみえるので準備の手伝いに来て欲しいのだけれど。」

「はい。でも洗濯が途中で。」

「わたしが一緒にやっておくわ。早く行かないと。」

「ありがとう。フェル、また話そうね。」

サリーがレリアといなくなり、ひとりで大量の洗濯ものと格闘しているとつい考えてしまう。

カインとの楽しい花園での日々は、雪が降ってからは、夜仕事が片付いてからカインの書斎での2人きりのおしゃべりに移っている。

カインはボーテに行った事がなく、フェリアの幼い頃の話や好きだったボーテ特産の果物の話を興味深げに聞いてくれる。

多分、屋敷の何人かは、気づいていると思うのだが、その時間はカインが人払いをしていて、2人でフェリアの入れたお茶を飲みながらの楽しい時間になっている。

ただカインがフェリアをちょうど良い話し相手と思っているのか、それ以上なのかはわからない。
たまに話してくれるスノーロップに似ている女性に焼きもちを感じるフェリアだった。