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春を待つ頃
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サーディス辺境伯領が、雪に埋もれている間に訪れたオルデック公爵は、カインにとって悲しい知らせを届けた。
かの女性が侯爵夫人だったが、病弱であまり社交界に出る事がなかったので、詳しい友人がいなかったこと、そして直接侯爵に聞いたわけではないが、彼女は1年ほど前に病で亡くなっていたということだった。
雪で王都に戻るのが大変なのと慰める気持ちがあるのかオルデック公爵は、春まで逗留している。
フェリアは、直接オルデック公爵に会うことはないので、仕事に変わりはないが、カインと夜過ごすことが出来ず寂しい日を何日か過ごすことになり、カインがスノーロップの君のことで落ち込んでいると思うのに助けになれないことを歯痒く思っていた。
ある日のことシャルロットに付いて廊下を歩いていると前からカインがやって来た。
「母上、どちらへ行かれますか。」
「寒いからと部屋でじっとしているのも退屈で邸内の散策をしているのよ。そう言えば今年の春待ち祭は、どうするつもり?」
「春待ち祭は、ちゃんと母上のプレゼント用意していますよ。」
春待ち祭は、冬の間外に出れないこの地方らしい祭で、自分の大切なひとを思いながら手作りのプレゼントを作り、サーディス辺境伯邸の門の飾り紋章が雪の中から見えるようになった7日後に領地全体で行われる。
家族や友人にも作ったりするが、雪でなかなか会えない恋人やプレゼントをきっかけに告白する若者が多い。
フェリアもサリーが好きな花を刺繍した枕カバーを作った。
そしてカインにスノーロップの花と家紋を刺繍したハンカチを作っている。せめて気持ちを伝えられなくても、楽しい時間の感謝を受け取って欲しい。
「私じゃなくて、あなたの大事な人よ。いろいろ聞いているわ。本気なら私が手伝うわよ。」
「気持ちを伝えたら母上にはお手伝いいただきます。それまでそっとしておいてください。」
目の前が真っ暗になってそのあと何をしていたか覚えていない。気がついた時には朝になっていて自分の部屋のベッドに寝ていた。
周りをみても誰もいないしちゃんと自分で全てやったようなので、無意識のうちに仕事を片付けて寝たらしい。
控えめなノックのあとサリーが部屋に入ってきた。
「おはよう。フェル大丈夫?昨日様子おかしかったけれど。」
「サリーありがとう。大丈夫だとう。そんなに変だった?」
「ええ。仕事はこなしていたけど、心ここに在らずって感じで、夕食も食べないで寝ちゃうし。どうかしたの?」
「うん。ちょっと失恋したかも。」
「誰よ。フェリアを振るなんて。」
「旦那様...どなたかいらっしゃるみたいで。」
「旦那様⁈ そうだったの。どうりで...」
フェリアが小首を傾げるとサリーはフェリアを抱きしめてくれた。
「春待ち祭のプレゼントは作ったんでしょ。渡して伝えようよ。それでダメなら我が家に嫁に来ればいいよ。トム兄もそう言ってたでしょ。」
サリーのおかげでなんとかいつも通りに過ごせるようになった。
かの女性が侯爵夫人だったが、病弱であまり社交界に出る事がなかったので、詳しい友人がいなかったこと、そして直接侯爵に聞いたわけではないが、彼女は1年ほど前に病で亡くなっていたということだった。
雪で王都に戻るのが大変なのと慰める気持ちがあるのかオルデック公爵は、春まで逗留している。
フェリアは、直接オルデック公爵に会うことはないので、仕事に変わりはないが、カインと夜過ごすことが出来ず寂しい日を何日か過ごすことになり、カインがスノーロップの君のことで落ち込んでいると思うのに助けになれないことを歯痒く思っていた。
ある日のことシャルロットに付いて廊下を歩いていると前からカインがやって来た。
「母上、どちらへ行かれますか。」
「寒いからと部屋でじっとしているのも退屈で邸内の散策をしているのよ。そう言えば今年の春待ち祭は、どうするつもり?」
「春待ち祭は、ちゃんと母上のプレゼント用意していますよ。」
春待ち祭は、冬の間外に出れないこの地方らしい祭で、自分の大切なひとを思いながら手作りのプレゼントを作り、サーディス辺境伯邸の門の飾り紋章が雪の中から見えるようになった7日後に領地全体で行われる。
家族や友人にも作ったりするが、雪でなかなか会えない恋人やプレゼントをきっかけに告白する若者が多い。
フェリアもサリーが好きな花を刺繍した枕カバーを作った。
そしてカインにスノーロップの花と家紋を刺繍したハンカチを作っている。せめて気持ちを伝えられなくても、楽しい時間の感謝を受け取って欲しい。
「私じゃなくて、あなたの大事な人よ。いろいろ聞いているわ。本気なら私が手伝うわよ。」
「気持ちを伝えたら母上にはお手伝いいただきます。それまでそっとしておいてください。」
目の前が真っ暗になってそのあと何をしていたか覚えていない。気がついた時には朝になっていて自分の部屋のベッドに寝ていた。
周りをみても誰もいないしちゃんと自分で全てやったようなので、無意識のうちに仕事を片付けて寝たらしい。
控えめなノックのあとサリーが部屋に入ってきた。
「おはよう。フェル大丈夫?昨日様子おかしかったけれど。」
「サリーありがとう。大丈夫だとう。そんなに変だった?」
「ええ。仕事はこなしていたけど、心ここに在らずって感じで、夕食も食べないで寝ちゃうし。どうかしたの?」
「うん。ちょっと失恋したかも。」
「誰よ。フェリアを振るなんて。」
「旦那様...どなたかいらっしゃるみたいで。」
「旦那様⁈ そうだったの。どうりで...」
フェリアが小首を傾げるとサリーはフェリアを抱きしめてくれた。
「春待ち祭のプレゼントは作ったんでしょ。渡して伝えようよ。それでダメなら我が家に嫁に来ればいいよ。トム兄もそう言ってたでしょ。」
サリーのおかげでなんとかいつも通りに過ごせるようになった。
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