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第一章 デスストーリーは突然に……
第2話
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——でも、どうやら俺の物語はそこで終わらなかったらしい。
気づくと、俺は乳白色の光の中にいた——真っ裸で、しかも両腕もなく……。
たぶん両腕はあのエリゴスって黒光り野郎に斬られちまってなくなったんだろう。不思議なことに血は流れてなかった。
——ついでに服まではぎ取られた? まさかあの野郎、俺を殺ったあとにあんなことやこんなことを……。
で、目の前には白いドレスのような服を来たとびっきりの美女がいた。
瞬間的に俺はこのイケてる女が女神様だと思った。
だってこんなグッとくる美女、俺の住んでいたところにはいなかったもの。
ぜひともお近づきになりたいね。
だから真っ裸でも気にしない。
俺は隠さないほうのタイプだ。
なんて考えてたら、ふと女神は口を開いた。
「——ケイン・フォスター。残念なことにあなたは命を落としました」
なんだよこいつ、人形みてぇ——それが女神様に対する俺の第一印象。つまり圏外。
俺はもうちょい表情豊かな女が好みなんだ。
「ここは下界と天界の狭間。申し遅れましたが私は神託の神メディナ。我ら神と人の子とを繋ぐ者です」
「やっぱりそうか! そうじゃないかって思ったー! で、あんたは女神様なわけだ? で、なに? これから俺はあの世って場所に行くのか?」
「いいえ。再び地上に戻します」
「は? 地上に戻す? おいおい、まさか生き返らせてくれるのか? 女神様、あんたスタイル抜群なのに太っ腹だなぁ。ついでにすげぇスキルを授けてくれるとか?」
「おいっ! 無礼だぞ貴様っ!」
と、そこで女神の後ろに控えていた聖騎士風のイケメンが俺の前に出てきた。
「メディア様の御前であるぞっ! 頭を下げろっ!」
やけに金ぴかの鎧と高そうな剣。
ナルシストな上にプライドの高いタイプだな、こいつ。
「あんただれ? 見たところ女神様を守護する騎士様ってところ? だったらこんなところにいないでさー、魔王やっつけに行ってきてよ? 世界が滅ぼされかけてんだよ? こんな安全そうな場所で死んじゃった元英雄志望のザコ剣士に怒鳴ってる暇があったら自分も戦いに参加したらいいんじゃね?」
「貴様……」
「あっれー? 怒ったのー? つーかカルシウム足りてないんじゃないかな騎士くーん?」
「貴様……! ——メディア様、こやつは絶対に違います! どうかお考え直しください!」
「いいえ、彼こそ【適正者】です。ロシュール、下がりなさい」
「しかし……」
えっと……【適正者】? なんの話だ?
とりあえず聖騎士の名前がロシュールってことだけわかったな。
「ケイン・フォスターよ。貴方は【適正者】として選ばれました」
「だからなにその【適正者】って? わかるように説明してくれよ!」
途端にロシュールと呼ばれた騎士はあっという間に剣を抜き、俺の喉元に剣を向けた。
「貴様、そのおしゃべりな口を閉じろ。さもなくば腕だけでなくその首、落とすぞ?」
「お口を閉じれるように努力するよ、うん……」
「ロシュール、下がりなさい」
「……は!」
ロシュールはおとなしく剣を引いた。
キレるとなにするかわからんな——こいつ、反抗期か?
「で、俺のことどうする気? 俺はまた英雄目指しちゃったらいいの?」
「いいえ。残念ですが適正者である貴方の役割は英雄になることではありません。英雄を育てることです。英雄を育む適正を持つ者として、貴方は再び下界へと下り、その使命を果たすのです」
「は? 英雄を育てる? おいおい、俺を兵士訓練場の堅物親父とすげ替えるつもりか? やだよ! だってあのオッさん飲んだくれで口臭いし!」
「貴方は今の貴方のままで下界に下ろします」
「マジかよっ! 腕なしで下界に放り出されちまうのかよっ! これじゃあケツも拭けねぇじゃねぇか!」
「貴様は首も落とされたいのかっ⁉︎」
「違うって! ごめんって! ——って、女神様! これじゃあ下界に下りてもなんにもできねぇよっ!」
「落ち着きなさいケイン・フォスター。貴方の元の穢れた腕では英雄を育てることはできません。——ですから、これから代わりの腕を授けるのです」
「は? 代わりの腕?」
そう言うと、俺のなくなった両腕の先が光輝き始めた。
やがて光は収束していき、形をなし、元通りの俺の腕に再生した。
俺はニギニギと手の感触を確かめたが、やっぱり俺の腕みたいだった。
「その腕は我ら神からの贈り物です。【光の御手】と呼ばれるスキルを付与しています」
「なにそれカッチョいい! で、どんなスキルなんだ?」
「その腕は触れたものを何でも神器に変えることができます」
「つまり、剣なら何でも聖剣にできちゃうってこと?」
「その通りです」
「槍は?」
「聖槍に」
「じゃあ便器は? 聖便器?」
「おいっ! 下品だぞ!」
背後からロシュールに怒鳴られた。
「確認だよ確認! 触れたものが何でも神器になっちゃったら不便だろ? ウ●コするときどうすんだっ?」
……いや待てよ。
消臭効果とか便所掃除をしなくて済むのかもな? 試してみる価値はあるか……。
「安心してください。貴方の意思で神器にするかどうか選択できます。それともう一つ、丈夫な身体を授けましょう」
今度は俺の身体全体が光り輝いた。
雰囲気的に劇的に身体が軽くなったり、なんかこうパワーアップするのかな、と思ったら、全然普通だった。普通すぎて、むしろ普通で、こりゃ普通だなぁーって思った。
つまり実感なし。
が、またロシュールが素敵な剣さばきで俺の身体をズタズタに切り裂く。もう楽しくてしょうがないって感じで……。
ところが、切ったそばから俺の身体はモコモコと再生していく。
正直グロくてキショいが、俺の身体は数秒後には傷一つなく元の身体に戻った。化け物みたいで若干引く……。
「二つ目のスキルは【自動蘇生】です。そのスキルは自動的に発動し、どんな怪我や病気からも貴方を救うでしょう」
「へぇー、そいつはすげぇ! つーかさ、この【光の御手】と【自動蘇生】があれば魔王も倒せるんじゃないの?」
「それらのスキルはあくまで十五年間という制限付きです。十五年を過ぎれば貴方のそのスキルは天界へと戻されます」
「十五年もあれば魔王を倒すことなんて余裕だと思うけど?」
「いいえ。その力があったとしても貴方の役目はあくまで英雄を育てることです」
「……あっそ。——で、なんで十五年なわけ?」
「その前に、貴方にもう一つ授けるものがあります」
「ほほう。今日は大盤振る舞いだねー。スキルの在庫処分デー?」
「スキルではありません。ですが、我ら神々、そして人類の希望です——」
女神様はそう言うと、何もない空間に光る球体を出した。
キラキラ光る球体はふわふわと浮きながら俺の手元へとやってくる。
そして俺は絶句した。
ここにきて初めて言葉に詰まっちまったんだ。
だって、俺の両手に抱えられたものは、ずっしりとしていて、熱を帯びた——そりゃもう可愛らしい生まれたての赤ん坊だったから……。
「ちょ、これ……」
「その赤子を貴方が十五歳まで育てるのです」
「ちょっと何言ってんのかわからない。は? 俺が、赤ん坊を育てる? は⁉︎」
「その赤子は英雄の資質を持った神の子。十五歳まで成長したとき、その子に神託が下ります。それまでは、貴方が養い、外敵から守り、立派な英雄に育て上げるのです」
「ちょ、ちょ、ちょーっとタンマ! 十五年もっ⁉︎ だったらやっぱり俺じゃなくて他に適正者がいんだろっ⁉︎ ほら、けっこう序盤で死んだルイーゼなんかがオススメだぞ! あいつ、子供好きだったし!」
「ルイーゼ・クルーダは死んでません。貴方の死後、瀕死の状態で転移魔法を発動させ、王都へと戻りました」
「えー! ずっるぅー! じゃああいつ生きてんの⁉︎ じゃあグラッツ——はダメか。あいつちょっとロリコンっぽいし……。じゃあパーティーでいちゃこらしていたアルフレッドとクルルはどうなんだよ⁉︎ 魔王倒したら結婚するって言ってたぞあいつら! 夫婦で下界に戻しちゃって子育てさせてよ!」
「あの二人も生きていて王都に——というよりもあの場で死んだのは貴方だけです」
「なんで俺だけっ⁉︎ つーかなんだよチクショー! みんな生きてんの⁉︎ 俺だけこんな理不尽なもん押しつけられて帰れってか⁉︎ そりゃねぇよ女神様!」
「ケイン・フォスターよ——」
そこで無表情な女神様は初めて不快感を露わにした。
「——いい加減にしろ。天罰下すぞ?」
「……ゴメンナサイ」
女神にメンチ切られた主人公はさすがに俺だけじゃないよね?
ううっ、思い出しただけでマジでこぇえええーーー……。
でもま、こうしてしぶしぶ条件を飲んだ俺は、再びこのクソッタレな世界に舞い戻ってきたってわけ。
——どう? けっこうシュールな話だろ? なんつーか詐欺だよな?
いきなり二つもすげぇスキルを与えられたと思ったら、それでも英雄にはなれないわ、赤ん坊を育てろだとか意味わかんねぇぜ……。
つーか先に赤ん坊を育てろって言って欲しかったぜ。
女神というより悪魔と取引した気分になったわ。
人間不信ならぬ神不信?
ま、最初っから俺は無神論者だけどな。
で、気づいたらこの辺境の町ロックスの教会の前で俺と赤ん坊が寝ていたってワケ。
確認のため、教会で便所を借りたときに【光の御手】を発動したら協会の便所が消し飛んだ。そのあと、なぜか教会から出禁を食らったんだけど……。
女神からもらった神聖な力だろ? 出禁とか酷くね?
まったくシングルファザーには肩身の狭い世界だぜ。
で、けっきょく俺は赤ん坊と一緒にこのロックスで暮らすことなった。
十五年後、娘が英雄になるために旅立つまで——
気づくと、俺は乳白色の光の中にいた——真っ裸で、しかも両腕もなく……。
たぶん両腕はあのエリゴスって黒光り野郎に斬られちまってなくなったんだろう。不思議なことに血は流れてなかった。
——ついでに服まではぎ取られた? まさかあの野郎、俺を殺ったあとにあんなことやこんなことを……。
で、目の前には白いドレスのような服を来たとびっきりの美女がいた。
瞬間的に俺はこのイケてる女が女神様だと思った。
だってこんなグッとくる美女、俺の住んでいたところにはいなかったもの。
ぜひともお近づきになりたいね。
だから真っ裸でも気にしない。
俺は隠さないほうのタイプだ。
なんて考えてたら、ふと女神は口を開いた。
「——ケイン・フォスター。残念なことにあなたは命を落としました」
なんだよこいつ、人形みてぇ——それが女神様に対する俺の第一印象。つまり圏外。
俺はもうちょい表情豊かな女が好みなんだ。
「ここは下界と天界の狭間。申し遅れましたが私は神託の神メディナ。我ら神と人の子とを繋ぐ者です」
「やっぱりそうか! そうじゃないかって思ったー! で、あんたは女神様なわけだ? で、なに? これから俺はあの世って場所に行くのか?」
「いいえ。再び地上に戻します」
「は? 地上に戻す? おいおい、まさか生き返らせてくれるのか? 女神様、あんたスタイル抜群なのに太っ腹だなぁ。ついでにすげぇスキルを授けてくれるとか?」
「おいっ! 無礼だぞ貴様っ!」
と、そこで女神の後ろに控えていた聖騎士風のイケメンが俺の前に出てきた。
「メディア様の御前であるぞっ! 頭を下げろっ!」
やけに金ぴかの鎧と高そうな剣。
ナルシストな上にプライドの高いタイプだな、こいつ。
「あんただれ? 見たところ女神様を守護する騎士様ってところ? だったらこんなところにいないでさー、魔王やっつけに行ってきてよ? 世界が滅ぼされかけてんだよ? こんな安全そうな場所で死んじゃった元英雄志望のザコ剣士に怒鳴ってる暇があったら自分も戦いに参加したらいいんじゃね?」
「貴様……」
「あっれー? 怒ったのー? つーかカルシウム足りてないんじゃないかな騎士くーん?」
「貴様……! ——メディア様、こやつは絶対に違います! どうかお考え直しください!」
「いいえ、彼こそ【適正者】です。ロシュール、下がりなさい」
「しかし……」
えっと……【適正者】? なんの話だ?
とりあえず聖騎士の名前がロシュールってことだけわかったな。
「ケイン・フォスターよ。貴方は【適正者】として選ばれました」
「だからなにその【適正者】って? わかるように説明してくれよ!」
途端にロシュールと呼ばれた騎士はあっという間に剣を抜き、俺の喉元に剣を向けた。
「貴様、そのおしゃべりな口を閉じろ。さもなくば腕だけでなくその首、落とすぞ?」
「お口を閉じれるように努力するよ、うん……」
「ロシュール、下がりなさい」
「……は!」
ロシュールはおとなしく剣を引いた。
キレるとなにするかわからんな——こいつ、反抗期か?
「で、俺のことどうする気? 俺はまた英雄目指しちゃったらいいの?」
「いいえ。残念ですが適正者である貴方の役割は英雄になることではありません。英雄を育てることです。英雄を育む適正を持つ者として、貴方は再び下界へと下り、その使命を果たすのです」
「は? 英雄を育てる? おいおい、俺を兵士訓練場の堅物親父とすげ替えるつもりか? やだよ! だってあのオッさん飲んだくれで口臭いし!」
「貴方は今の貴方のままで下界に下ろします」
「マジかよっ! 腕なしで下界に放り出されちまうのかよっ! これじゃあケツも拭けねぇじゃねぇか!」
「貴様は首も落とされたいのかっ⁉︎」
「違うって! ごめんって! ——って、女神様! これじゃあ下界に下りてもなんにもできねぇよっ!」
「落ち着きなさいケイン・フォスター。貴方の元の穢れた腕では英雄を育てることはできません。——ですから、これから代わりの腕を授けるのです」
「は? 代わりの腕?」
そう言うと、俺のなくなった両腕の先が光輝き始めた。
やがて光は収束していき、形をなし、元通りの俺の腕に再生した。
俺はニギニギと手の感触を確かめたが、やっぱり俺の腕みたいだった。
「その腕は我ら神からの贈り物です。【光の御手】と呼ばれるスキルを付与しています」
「なにそれカッチョいい! で、どんなスキルなんだ?」
「その腕は触れたものを何でも神器に変えることができます」
「つまり、剣なら何でも聖剣にできちゃうってこと?」
「その通りです」
「槍は?」
「聖槍に」
「じゃあ便器は? 聖便器?」
「おいっ! 下品だぞ!」
背後からロシュールに怒鳴られた。
「確認だよ確認! 触れたものが何でも神器になっちゃったら不便だろ? ウ●コするときどうすんだっ?」
……いや待てよ。
消臭効果とか便所掃除をしなくて済むのかもな? 試してみる価値はあるか……。
「安心してください。貴方の意思で神器にするかどうか選択できます。それともう一つ、丈夫な身体を授けましょう」
今度は俺の身体全体が光り輝いた。
雰囲気的に劇的に身体が軽くなったり、なんかこうパワーアップするのかな、と思ったら、全然普通だった。普通すぎて、むしろ普通で、こりゃ普通だなぁーって思った。
つまり実感なし。
が、またロシュールが素敵な剣さばきで俺の身体をズタズタに切り裂く。もう楽しくてしょうがないって感じで……。
ところが、切ったそばから俺の身体はモコモコと再生していく。
正直グロくてキショいが、俺の身体は数秒後には傷一つなく元の身体に戻った。化け物みたいで若干引く……。
「二つ目のスキルは【自動蘇生】です。そのスキルは自動的に発動し、どんな怪我や病気からも貴方を救うでしょう」
「へぇー、そいつはすげぇ! つーかさ、この【光の御手】と【自動蘇生】があれば魔王も倒せるんじゃないの?」
「それらのスキルはあくまで十五年間という制限付きです。十五年を過ぎれば貴方のそのスキルは天界へと戻されます」
「十五年もあれば魔王を倒すことなんて余裕だと思うけど?」
「いいえ。その力があったとしても貴方の役目はあくまで英雄を育てることです」
「……あっそ。——で、なんで十五年なわけ?」
「その前に、貴方にもう一つ授けるものがあります」
「ほほう。今日は大盤振る舞いだねー。スキルの在庫処分デー?」
「スキルではありません。ですが、我ら神々、そして人類の希望です——」
女神様はそう言うと、何もない空間に光る球体を出した。
キラキラ光る球体はふわふわと浮きながら俺の手元へとやってくる。
そして俺は絶句した。
ここにきて初めて言葉に詰まっちまったんだ。
だって、俺の両手に抱えられたものは、ずっしりとしていて、熱を帯びた——そりゃもう可愛らしい生まれたての赤ん坊だったから……。
「ちょ、これ……」
「その赤子を貴方が十五歳まで育てるのです」
「ちょっと何言ってんのかわからない。は? 俺が、赤ん坊を育てる? は⁉︎」
「その赤子は英雄の資質を持った神の子。十五歳まで成長したとき、その子に神託が下ります。それまでは、貴方が養い、外敵から守り、立派な英雄に育て上げるのです」
「ちょ、ちょ、ちょーっとタンマ! 十五年もっ⁉︎ だったらやっぱり俺じゃなくて他に適正者がいんだろっ⁉︎ ほら、けっこう序盤で死んだルイーゼなんかがオススメだぞ! あいつ、子供好きだったし!」
「ルイーゼ・クルーダは死んでません。貴方の死後、瀕死の状態で転移魔法を発動させ、王都へと戻りました」
「えー! ずっるぅー! じゃああいつ生きてんの⁉︎ じゃあグラッツ——はダメか。あいつちょっとロリコンっぽいし……。じゃあパーティーでいちゃこらしていたアルフレッドとクルルはどうなんだよ⁉︎ 魔王倒したら結婚するって言ってたぞあいつら! 夫婦で下界に戻しちゃって子育てさせてよ!」
「あの二人も生きていて王都に——というよりもあの場で死んだのは貴方だけです」
「なんで俺だけっ⁉︎ つーかなんだよチクショー! みんな生きてんの⁉︎ 俺だけこんな理不尽なもん押しつけられて帰れってか⁉︎ そりゃねぇよ女神様!」
「ケイン・フォスターよ——」
そこで無表情な女神様は初めて不快感を露わにした。
「——いい加減にしろ。天罰下すぞ?」
「……ゴメンナサイ」
女神にメンチ切られた主人公はさすがに俺だけじゃないよね?
ううっ、思い出しただけでマジでこぇえええーーー……。
でもま、こうしてしぶしぶ条件を飲んだ俺は、再びこのクソッタレな世界に舞い戻ってきたってわけ。
——どう? けっこうシュールな話だろ? なんつーか詐欺だよな?
いきなり二つもすげぇスキルを与えられたと思ったら、それでも英雄にはなれないわ、赤ん坊を育てろだとか意味わかんねぇぜ……。
つーか先に赤ん坊を育てろって言って欲しかったぜ。
女神というより悪魔と取引した気分になったわ。
人間不信ならぬ神不信?
ま、最初っから俺は無神論者だけどな。
で、気づいたらこの辺境の町ロックスの教会の前で俺と赤ん坊が寝ていたってワケ。
確認のため、教会で便所を借りたときに【光の御手】を発動したら協会の便所が消し飛んだ。そのあと、なぜか教会から出禁を食らったんだけど……。
女神からもらった神聖な力だろ? 出禁とか酷くね?
まったくシングルファザーには肩身の狭い世界だぜ。
で、けっきょく俺は赤ん坊と一緒にこのロックスで暮らすことなった。
十五年後、娘が英雄になるために旅立つまで——
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