捨てられ第二王子は、神に愛される!

水魔沙希

文字の大きさ
2 / 12

2.

しおりを挟む
気がついたら、ベッドの上で寝ていた。


・・・ここは、どこだろう。



寝ぼけた頭に入ってくる情報は僕を混乱させる。少し・・・落ち着いたところで、辺りを見渡すとなんて事もない自室の光景を映していた。


ーそうだ。ここは、僕の自室。ここで、生活を送っていたんだ。何故、そんな事も忘れていたのだろう。物心がついた頃から過ごしていた部屋。5階建ての塔になっている建物。散々この建物に住んでいたんだ。ただ単に寝ぼけただけだろう。まぁ、確かに、塔自体の姿はあまり見た事がなかった。いつもはテレポートして街に赴くからね。


うん。それで、僕はギルドでクエストを受けて、自分の食い扶持を稼いでいたんだよね。成長した姿に変化して、魔物討伐に薬草集めなどなど。そして、週末には街の教会に行って、歌をうたう。それで、人々を救ってきた。僕は治癒能力を発揮するには歌わなくてはならないんだ。だから、傷だらけの人々が集まる教会に赴いていた。


最初は疎ましく思われていたが、だんだんと馴染んでいった。今ではすっかり頼りにされている。


☆☆☆☆


『あらら。自我が戻ったと思ったら、随分と都合の良いように解釈してくれるのな。おはよう!グレイシア!』


・・・?これは一体どういう事だろう?頭の中に声が響く。でも、その声は僕自身のものであった。僕、二重人格だったかな?


『まぁ、似たようなものかな!』


自分の質問に答えるもう一人の僕は、ははっと笑う。そうなんだ。僕は二重人格者と。そう言えば、グレイシアと名乗った事は・・・教会に赴く時しか名乗らないな。ギルドでは『シア』という名前で登録しているから。


あれ・・・?僕、誰かから名前を与えられた事があったっけ・・・?


『それは、親からも与えられなかったな!!だから、俺が勝手に名乗った。何しろ、ここは城の離れにある嘆きの塔と呼ばれる幽霊屋敷だからな!』


「え・・・?何で、そんなところに僕は住んでんの!?」


僕は思わず、叫んでしまった。しかし、もう一人の僕は冷静に状況を説明してくれる。



「それは、勿論。俺達はこのシュテルツ王国の第二王子だからな!城内に住んでいるのは当たり前じゃない?」
「ええええぇぇぇぇぇ!!!!??」


『えいっ!口塞ぎの術!!・・・いくら、塔自体にシールドを張っているとはいえ、あまり大声は感心しませんよ?』


驚いた声を出していた口が強制的に閉じられる。ええええぇぇぇぇぇ!!?僕、王子なの?そんな事、一度も感じた事がなかったよ!!


『そりゃあ、俺、第二王子だと思って日々生活していないからな。ここだって、双子の王子を嫌う国王から用意された檻みたいなもんだ。名前だって与えてくれないさ。・・・でも、俺がいるから。グレイシアに不快な思いはさせないよ!』



・・・へ、へぇー?そうなんだ。ってまるで君が今まで生活してきたみたいな言い方だなぁ。


『実際のところ、そうだし。グレイシアはたった今自我を目覚めたところ。もっと、詳しく言えば、今日の朝からだね!でも、記憶は残っているよ。俺が行動していた時の事。でも、解釈は俺とは違うみたいだけどね。』


ええええぇぇぇぇぇ!!?


『グレイシアはよく驚くね。教会に赴く理由は決して、人々を救いに行っていた訳じゃない。ただ、人々から称賛されたかっただけだしね!ただの自己満足だよ。変にキャラ変してたしな。』



なんと、もう一人の僕は目立ちたがりな性格の人物らしい。というか、僕という人格が生まれた理由は何だろう?二重人格って何らかの理由で、何かを忌避したい時発生するもの・・・だよね?



『グレイシアはよくそこまで考えが及ぶよね。普通の5歳児には思えないんだけど。・・・まぁ、そこは隠しておくところかな。ごめんね?でも、本来の人格って言うの?それは、グレイシアなんだよなー。俺はアポロンって言う人格という事を言っておこう。まぁ、自我が目覚めるまでは俺が仮住まいしてたって感じ?でも、俺はグレイシアが目覚めた後でも、死ぬまではいるつもりなんだけどね。』



うん。よく分からないや。ここは深く詮索しない方が良いようだ。まぁ、僕を助けてくれた存在という事なのだろう。そして、これからも助けてくれる存在なのだろう。



『うん。その解釈でいいよ!俺はグレイシアと仲良くなりたい。これからよろしくね。』


これからもきっと長い付き合いになる事だろう。こちらこそよろしくお願いします!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さくら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

処理中です...