一瞬の永遠を

朱雀

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汗と涙と消毒液と

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「いたいよぉ…」

零れ落ちる涙を両手で拭う。

「がまん、がまん、」

拙い手が傷口にガーゼを当てる。

薬品の匂いが漂う保健室で

窓から射し込むオレンジ色の光が

影を二つ、映し出していた。










「失礼しまー…す……」

白い扉をスライドさせる。

全体的に白いその部屋には

空のベッドが一つと、薬品が並ぶ棚、綺麗に整頓された机があった。


部活中、派手に転んだ辻は膝を擦りむいていた。

「……誰も、いないのか?」

怪我をした方を少し庇いながら部屋の中へ。

人の気配がない。


「………仕方ないか」

薬品棚をあさり、消毒液やガーゼなどを取り出す。



「……遼太郎?」

不意に聞こえた声に驚き、振り返ると、

扉の近くに立花が立ってこちらを見ていた。



「…潤か、おどかすなよ」

見慣れた顔に安堵の息をこぼす。

手先に視線を戻し、作業を再開すると、

「怪我したの?」

部屋の中に入ってきた立花が辻に問いかけた。

「部活中に、……壮大にコケた」

その答えにベッドに腰掛けながら、立花はクスクスと笑った。

そんな立花を睨む辻の顔は少し赤かった。






「…………いたっ…」

傷口の手当にもたつく辻と。

それを眺める立花。

学校内はほとんどの人が帰ったのだろう。

とても静かだった。






「……あーもー!」

上手くいかない作業と地味な痛みに辻がイラつく。

「……やってあげようか?」

不意な立花の提案が静かな部屋に響いた。








「………マジで痛い…」

痛みに耐える辻と。

「………我慢して、我慢」

器用に傷口の手当をする立花。


「……今回は泣かないんだね」

「はぁ?……」

顔を上げず手当をする立花の唐突な言葉に声を上げる辻。



何かを察したのか辻が笑い始めた。

「…懐かしいな」

「あの時、遼太郎くんすごく泣いてたもんね」

うるせぇっと反論した辻の横顔は楽しそうに笑っていた。

外はすっかりオレンジ色に染まっていて、

窓から射し込むその暖かな光が、

あの頃よりも大きな影を二つ伸ばした。

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